2018年2月2日金曜日

寒造りのチーズ

2018年が始まった。
すでに1ヶ月も経過してしまったが、今年もよろしくお願いいたします。

前回が、昨年の8月だったので、かなり間が空いてしまった。
申し訳ない。
筆者としても、1ヶ月に1回は書きたい。
努力します・・・

さて、去年の年末のイベントと今年の新年会で、面白い発見をした。
二つともチーズ関係のイベント、新年会ではない。
年末のイベントは、江戸東京野菜と日本酒の会。
新年会は、北関東の農業生産者さんの会。

年末のイベントでは、東村山の豊島屋酒造の見学をした。
蔵の中を見せてもらって、いろいろな説明を受けたのだが、気になったのが麹を培養しているところ。
案内をしてくれた酒造の方と麹の培養の話をしていたら、乳酸菌の話になった。

豊島屋酒造にて。

麹。

日本酒作りにも乳酸菌を使うことは知っていたが、詳しいことまでは知らなかった。
あとで調べたところによると、乳酸菌は、チーズを作るときと同じように、pHを下げるために使われる。pHを下げ、雑菌の繁殖を抑えるためである。
現在では、速醸酒母といって、乳酸を加える方法が一般的だそうだが、乳酸菌を使う生酛酒母の方法もまだまだ健在。

以前、生酛チーズという項目でブログを書いたことがあるが、それである。
生酛は、低温に保ち、雑菌を抑える。
その間に、有用な微生物が増えて行くのだが、その一つが乳酸菌である。

どんな乳酸菌かというと、Leuconostoc mesenteroidesとLactobacillus sakeiである。
Leuconostoc の方は、柔らかいチーズ製造でも重要な乳酸菌。
ヘテロ発酵だが、芳香を生産するので、フロマージュ・ブランなどには欠かせない。
こいつは、中温菌なのだが、低温に保つ生酛の中でも増えるらしい。
面白い!

もう一つの乳酸菌、Lactobacillus sakei は、低温で増殖する乳酸菌である。
フランスなどでは、肉やソーセージの保存料として使われるらしい。
熟成肉に使えるのかもしれない(?)。
日本だと、日本酒の他に、漬物に使えるようである。
そして、やはり保存に向いているようだ。

Lactobacillus sakei
http://www.inra.fr/Entreprises-Monde-agricole/Offres-de-technologie/Toutes-les-actualites/OT_Lactobacillus-sakeiより

生酛酒母だけではなく、漬物、味噌、醤油などにも乳酸菌が利用されている。
日本にも、乳酸菌は溢れているのだ。
ただ、外国のものとは、少し違うのではないだろうか。

だから、筆者は、この日本の乳酸菌をチーズにも応用できないかと思っている。
というのは、うちの工房では、自前の乳酸菌を使っているので、生酛の製法を応用できないかと思うのである。

筆者のチーズは、和の風味をもっている。
酒粕のような、漬物のような、味噌、醤油に通じるような風味である。
チーズ関係者の方は、筆者のチーズのことを
「食べたことない味」と評価する。

フロマージュ・ドーメ(Fromage d'Omé)

しかし、日本でチーズを作れば、日本の発酵食品である。
日本の味があって、良いではないか!と思うのである。
そして、筆者のチーズは、日本酒との相性が良い。
外国のチーズだと、相性の良いものもあるが、違和感を感じることもある。

チーズとワインを合わせるときによく言われることが、同じ地方のものなら、だいたいは合うのだということ。
それを考えたら、日本のチーズは、日本酒と合うということになりますな。

今年で工房を開いて4年目である。
1年目、2年目は、夏場、乳酸菌に泣かされた。
冬場は問題ないのだが、夏場は乳酸菌に振り回される。

昨年は、なんとかなったが、まだ安心はできない。
生酛の製造方法で、何かヒントがありそうなのだが、
まだどのようにしたらよいのか、模索中である。

北関東の野菜の生産者さんとの新年会で、漬物屋さんが似たようなことを言っていた。
やはり、夏場は漬物の味が今ひとつだそうだ。
漬物や日本酒のように、日本のチーズが、日本の発酵食品になると良いなと思う。

というわけで、次回は、やっと乳酸菌に突入できそうである。
やりたい事(このブログを含む)はたくさんあるのだが、いかんせん、しなければならないことの方が増えすぎて、なかなかやりたいことができなくなっている状態。

でも、続けて行きますからね!