ミモレットに関してであったが、このチーズをPPC(加熱圧搾)に分類していることがあるという。ミモレット・ヴィエイユ(熟成の長いチーズ)は*LR(ラベル・ルージュ)という認証を取っている。CDC(Cahier des charges:カイエ・デ・シャージュ=仕様書)は、まだ完成していないようだが、下書きを読むとDélactosage(デラクトザージュ:カイエをお湯で洗うこと)を行なっているので、PPNC(非加熱圧搾)に分類される。
INAOの分類も、PPNCになっている。
(*LR:ラベル・ルージュ;一般に販売されている商品よりも、その品質や製造が優れているものに与えられる国際的認証)
ということは、ミモレットは、製造上の分類では、PPNCであり、PPCではないことになる。また、筆者は、このチーズの6週間熟成というのを販売していたことがあるが、まるでゴム鞠。表皮もツルツルで、包丁ですぐに切れるほどの柔らかさ。これが、熟成するとciron(コナダニ)がつき、表面がボロボロになる。水分も飛んで、生地が硬くなるのである。
また、ゴーダも熟成状態によって、硬さが変わる。
しかし、ゴーダの場合、日本では製造方法がよく知られているため、PPCに分類する人はいない。
このように、チーズの分類は、まちまちである。
筆者は、以前にもチーズの分類として、製造方法による分類を提唱したが、今回は、どうしてこの分類が合理的なのかをもう少し詳しく説明しよう。
まず、チーズの分類方法はいろいろあることを見ていこう。
FAOという国際的組織がある。
英語で "Food and Agriculture Organization of the United Nations" という。
フランス語では、"Organisation des Nation Unies pour l'alimentation et l'agriculture" という。
日本では、「国際連合食糧農業機関」と言っている。
そのFAOでも、チーズの分類をしているが、以下のようになる。
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二つとも、脂肪分を取り除いたチーズ中の水分を表す。
MGES は、Pourcentage de la matière grasse dans l'extrait sec(フランス語)、英語では、FDB:Percentage fat on a dry basisという。
これは、完全に脱水したチーズ中の脂肪分を表す。
あるチーズを例にとって見てみよう。
ここに、チーズ中の水分TEFDが57、脂肪分MGESが53で、ロックフォールと同じ方法で熟成させたチーズがあるとすると、以下のように分類される。
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TEFD:57、MGES:53の青カビチーズの場合 |
いい分類方法なのだが、難点は、TEFDとMGESがわからないと分類できないところである。
それでは、次に、製造方法による分類方法を見てみよう。
ヨーロッパ型のチーズの特徴は、乳酸菌と凝乳酵素を併用するところにある。
東洋型のチーズは、乳酸菌だけを使うものも多いが、ヨーロッパ型は、ほとんどのチーズが乳酸菌と凝乳酵素を併用している。
ま、例外として、カッテージ(イギリス)、マスカルポーネ(イタリア)などが、乳酸菌か酸のみを利用しているのだが。
そして、凝乳酵素の量によって、
- ラクティック・ドミノン(乳酸菌優位法)
- ミックス
- プレジュール・ドミノン(凝乳酵素優位法)
乳酸菌の量はあまり関係なく、種類が違うのみである。
そして、これが製造方法による分類方法になるのである。
まず、1.のラクティック・ドミノン。
これは、山羊チーズを作る時によく用いられる方法である。
凝乳酵素の量は少なく、凝固に時間をかける。
そして、このチーズの特徴は、フレッシュでも熟成させても食べられるということである。山羊のチーズは、ほとんどがここに入る。
フロマージュ・ブランも、ここに入るが、他に熟成させるタイプもある。
例えば、エポワス。このチーズは、ラクティック・ドミノン製法で作り、ウォッシュしたものである。また、自然の表皮である、サン・マルスランなどもここに入る。
2.のミックスには、柔らかいタイプのチーズがほとんど入る。
例えば、Pâte filéeであるモッツァレラ、カマンベールなどの白カビ、ロックフォールのような青カビ、マンステールのようなウォッシュタイプは、すべてここに入る。
これに分類されるチーズの出来たては、ボソボソしていて美味しくない。
熟成させて、初めて美味しくなるのが特徴である。
例外は、モッツァレラ。
これは、出来立てが美味しい。
製法がミックスでも、Pâte Filéeは熟成させなくても美味しいのである。
3.のプレジュール・ドミノンは、3つのタイプに分けることができる。
- Pâte pressée non cuite(非加熱圧搾)
- Pâte pressée demi-cuite(半加熱圧搾)
- Pâte pressée cuite(加熱圧搾)
PP demi-cuite(半加熱圧搾)は、40〜50℃に加熱する。
PPC(加熱圧搾)は、50℃以上で加熱する。
cuiteとは、「火を通す、煮る」という意味である。
また、これらのチーズは、加熱することと、圧搾することが特徴である。
PPNCは、ゴーダなどに代表される、やや柔らかいチーズである。
チーズによっては、Délactosage(デラクトザージュ:ラクトースを取り除くという意味。英語では、ウォッシングという。カイエをお湯で洗う工程)を行うのも特徴だが、AOPのチーズでは、禁止しているものもある。
PP demi-cuiteには、アボンドンス、アッペンゼルなどが入る。
両方とも、加熱温度は、45〜48℃くらいである。
PPCは、コンテやエメンタール、グリュイエール、パルミジャーノ・レッジャーノが代表的である。
表にしてみると、こうなる。
白カビだの、青カビだのが乳酸菌優位法とミックスにまたがっているので、ややこしいかもしれないが、製造方法が違うのがわかるので、良いと思う。
例外のカッテージ、マスカルポーネは、凝乳酵素を使っていないので、ラクティック・ドミノンと分けて、ラクティック(酸凝固)という項目を作ればいい。
よく使われている分類方法は、フレッシュ、白カビ、青カビ、ウォッシュ、非加熱圧搾、加熱圧搾、シェーヴルとなっていて、熟成状態と製造状態が混ざっている。
同じウォッシュといっても、マンステールとエポワスでは、作り方が違う。
山羊チーズだけを分けたのは、ラクティック・ドミノンだからだろうか。
この分類方法は、合理的だと思うが、製造方法を知らないとできないというネックがある。しかし、製造方法は、重要だと筆者は思うので、この分類方法を提案するのである。