2016年6月5日日曜日

コンテフェルミエは、なぜ不可能なのか?

以前は、コンテ・フェルミエなどというチーズを売っているところがあったが、現在では、見かけなくなった。誠に良いことである。日本人やアメリカ人は、農家製=良いもの、と考えるきらいがあって、農家製のチーズや食品が受けるようである。

農家製がすべて良いわけではないし、工場製がすべて悪いわけでもあるまい。
しかし、人々は、なぜか「農家製」という響きに惹かれるようである。
農家製=手作り、なのだろう。

コンテに関して言えば、CDCに「コンテ・フェルミエは、可能ではない」と書いてある。

2015年版のカイエ デ シャージュ、

Cahier des charges de l'appellation d'origine « Comté»
Bulletin officiel du Ministère de l'agriculture, de l'agroalimentaire et de la forêt n° 11 -2015

の「第5章 コンテの製造方法 2.6 原乳の混合」という部分に「可能ではない」と記載してあるのだ。
以下は原文。赤字で書いたところがそうである。


"5.2.6 Mélange de laits : Par respect pour les usages locaux, loyaux et constants, le Comté ne peut être fabriqué qu’à partir d’un mélange des laits de plusieurs exploitations et de plusieurs troupeaux nourris, gérés et traits de manière indépendante, de fait la fabrication de Comté fermier n'est pas possible. "

なぜ不可能なのか?

Comté は、いろいろな原乳を混ぜ合わせることによってしか製造できないから、農家製は不可能である、というのだが、他にもいろいろな原因があるのではないか?
と思ったので、ちょっと考えてみることにした。

では、はじめに「農家製」という規定を調べてみよう。

DECRET
Décret n°2007-628 du 27 avril 2007 relatif aux fromages et spécialités fromagères 


という、「チーズ工房で作るチーズと、そのスペシャル品に対する法令」の第9条に、農家製チーズの規定があるので、原文を載せておこう。

Article 9-1 (différé) 
· Créé par Décret n°2013-1010 du 12 novembre 2013 - art. 9 

La dénomination “ fromage fermier “ ou tout autre qualificatif laissant entendre une origine fermière est réservée à un fromage fabriqué selon les techniques traditionnelles par un producteur agricole ne traitant que les laits de sa propre exploitation sur le lieu même de celle-ci. Lorsque l’affinage a lieu en dehors de l’exploitation, l’étiquetage comporte les mentions prévues au 5° du A de l’article 12. 

これによると、「農家製」の表記ができるのは、「一つのチーズの生産者の農場で原乳を取り、その同じ農場で、伝統的製法で作ったチーズ」なのである。また、熟成のみ他の場所で行われた場合にもつけることができる。

この条件を満たせば、Comtéも「農家製」と名をつけることができるはずだ。
では、なぜ不可能なのだろうか?

まず、Comté の製造面から考えてみよう。

Comtéを一つ作るのに、450〜500Lの原乳が必要である。
CDC de Comté を見ると、2008年版には、アトリエには、最高5000L入るキューヴが2〜5個必要とあったが、どうやら2015年版にはその記載はない。
ポリニーの学校のアトリエには、500Lのキューヴが4個あった。
個数が書いてないということは、一つでもいいということになる。

次に、モンベリアルド牛の1日の搾乳量は、2014年で1日約22L。
ということは、500Lの原乳を得るには、乳を出す22頭のモンベリアルド牛がいればいいということになる。ただ、いつも乳を出す牛が22頭となるともう少し数が必要になる。

製造という面からでは、不可能ではない。

次に、作った場合、どうなるかということを考えてみよう。

CDC de Comté によると、Comté を作るための原乳を得る牛の餌や、その他の規則はやたらに厳しい。
例えば、発酵飼料は禁止。ビール粕を与えるものだめ。他の牛の群れとは隔離すること、などなど・・・

また、熟成は、3段階に分かれるため、第二段階以降は熟成士に預けることになる。
一回に一つしか作らないとすると、あまりメリットがなさそうである。
個数を多く作ろうとすると牛の数も増やさなければならない。
放牧もしなければならないので、場所の確保が大変だ。
工房の規模も大きくなるし、人もたくさん雇わなければならなくなる。

今回の2015年版のCDC には、Comté が最大で12個できるキューヴまで許可されている。
ということは、12X500=6000L のキューヴを設置することが可能だ。
筆者のポリニーの同級生たちは、一日に25個くらい作ると言っていた。
そのくらい作らないとメリットがないのだろう。

2015年版のCDC には、「いつの時代も変わらない、地元の習慣を尊重して」と、書いてある。
こんな風に、原乳を混ぜて作ることをComté は選んだのだ。

CDC の最後に表が載っているのだが、そちらにははっきりと

Le mélange de laits de plusieurs exploitations pour la mise en fabrication d’un fromage est obligatoire. Le Comté fermier est interdit. 

Comté fermierは、禁止である」
と記載してある。

Comté はある意味、製造も熟成も機械化が進んでいる。
キューヴは、コンピューター制御。
熟成のお手入れは、ロボットがする。
昔ながらの職人が作るというイメージではない。

人手不足(外国人労働者が増えている)や、職人の職業病の増加(椎間板ヘルニアが多い)などで、機械化を推進してきたが、人間が目で見て、手で確認するところもちゃんと残っている。
乳酸菌やプレジュールは人が投入するし、カイエの大きさや、煮え具合は、職人が確認する。

Comté というチーズは、機械化と農家の製法が程よく混合した製法でできている。
伝統的に原乳を持ち寄って作ったチーズであるという誇りを持って、農家製Comté はないと断言したのである。

Comté のキューヴ

プレスする

Comté en blanc(白いコンテ)



2016年4月8日金曜日

チーズの製造方法:基本編 乳糖

2月からブログを書こうとしていたのだが、Bloggerがうまく動かず困っていた。
知人のPCに詳しい人に教えてもらって、やっとなんとか書けるようになったのである。
お待たせして、申し訳ない。

さて、ちょうど去年の今頃に、乳脂肪について書いている。
乳成分で残っているのは、糖分と水分だけだ。
今回は、乳糖について説明しよう。

乳糖というと、Sérum(ホエー)に出てしまうから、チーズにとって、あまり重要だと思われていないようだ。
ところがどっこい、かなり重要な成分である。

チーズ製造で重要な働きをする乳酸菌は、乳糖を消費して乳酸を作る。
その乳酸は、微生物の餌になる。
そして、微生物が乳酸を分解するといろいろな物質ができ、それがチーズの風味となるのである。

また、乳酸を消費する微生物は、タンパク質分解酵素や脂肪分解酵素も持っているので、熟成にも関与する。
だから、乳糖は、微生物の餌になり、風味を形成し、間接的に、熟成にも関与するということになるだろう。

では、乳糖とは、どんなものだろうか?

糖類は、単糖類、二糖類、多糖類に分類されるが、乳糖は、「二糖類」という糖である。

グルコース(ブドウ糖)とガラクトースが結合したもので、大きな特徴は、分解しにくいということ。
なぜ分解しにくいのかというと、乳という赤ん坊の食料が微生物に汚染されては困るからだと言われている。

もし、乳糖ではなく乳中の糖分がブドウ糖だったら、それをめがけていろいろな微生物がやってくる。
中には、好ましくないものもいるだろう。
それを防ぐために、わざわざ分解しにくい糖分を含んでいるようなのだ。

では、乳糖はどんな形をしているかというと、下図のように、

化学式は、C12H22O11である。
https://ja.wikipedia.org/wiki/ラクトース より

二つの糖が合体している。

そして、ラクターゼ(乳糖分解酵素)で加水分解すると、下の図のようになる。

乳糖分解酵素によって、ガラクトースとグルコースに分解する。
http://topics.foodpeptide.com/?eid=1283371 より    
ガラクトースを分解する微生物もいるが、ほとんどの微生物は、グルコースを糧とする。

グルコースを分解し、乳酸を作るのに、微生物は、「解糖系:エムデン-マイヤーホフ経路」を使う。

解糖系の図式。fromagerie:T.I.Qより

この経路は、嫌気性であり、酸素があると、ピルビン酸から「クエン酸回路:TCA回路」へ移動し、乳酸はできない。
ただし、エネルギーは、クエン酸回路の方が多くできる。

クエン酸回路の図を貼っておこう。

ピルビン酸のところで回路が分かれている。

http://blog.livedoor.jp/megikaya/archives/2015-01.html より

まず、ブドウ糖は、解糖系によってピルビン酸にまで分解される。
その後、無酸素状態なら、乳酸を作る経路へと向かう。
酸素のある状態なら乳酸を作らず、エネルギーを多く作るクエン酸回路へと移動する。
乳酸菌は、嫌気性菌であり、好気性菌であるという、少し変わった菌なのである。

このへんは、ややこしいので、乳酸菌のことを書くときにもう少し説明しよう。
今回は、チーズ中の水分についても書くつもりだったが、かなり長くなりそうなので、またの機会にしよう。
https://ja.wikipeda.org/wik

2016年1月11日月曜日

生酛チーズ

あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。

チーズのお供え

昨年の目標は、とにかく生乳の一年のサイクルを確認し、ドーメ、その他のチーズの完成と、新しいチーズを生み出すこと、だった。
なんとか、一年のサイクルを確認し、新しいチーズを作ることもできた。
まずまずである。
長かったようで、短かった一年だった。

ドーメは、筆者が初めに目指したような、柔らかいチーズになっている。
エポワスのようではなく、スーマントランやアフィディリスのような感じ。
ほとんど完成に近いのだが、もう少し工夫が必要かもしれない。
現在は、焼酎だけでなく、日本酒で拭いた物も作っている。
比べてみると、微妙に味が違うのも面白い。

その日本酒だが、小澤酒造の「元禄」という、生酛系のお酒を使っている。
このお酒は、元禄時代の製法を取り入れているので、米をあまり磨かない。
だから、ほんのり色づき、味わいも力強い。

左が元禄、右が武州伝説(焼酎)

ところで、「生酛」とは、なんだろう?

日本酒は、乳酸菌の力を借りて、雑菌を抑えながら酵母を増やす方法をとる。
いろいろなやり方があるそうだが、現在の主流は、速醸法で、市販の乳酸菌を使う。
しかし、生酛は、昔ながらの方法で、自然の乳酸菌の力を借りて、酵母を増やす。
その自然の乳酸菌を作るのに手間と時間がかかる上に、職人の腕も必要となる。

筆者は、もともと日本酒が大好きで、ショップにいた頃は、お酒のこともよく知らずに、チーズと日本酒を合わせて遊んでいた。昨年の暮れに、やっと日本酒の利き酒講座に出席する機会があって、お酒の知識を少しばかり手に入れた。また、生酛を作っている方とお話をする機会もあって、乳酸菌を作る苦労話も聞いた。

そこで、はたと気がついた。
発酵食品は、お酒もチーズも同じ。
うちのチーズは、乳酸菌を手作りしているから、まるで生酛ですな。
去年の最大の発見は、「うちのチーズは、生酛チーズ」だということかもしれない。

元禄も生酛。
うちのチーズも生酛。
だから、元禄で拭いたチーズは、まろやかになり、少し甘いのだろう。

現在のドーメ。やわやわトロトロ!

今年は、日本酒とチーズの会も考え中。
昔、遊んだことが生きてきそうである。
面白くなってきたぞ!と浮かれているのが困ったものである。

しかし、お酒とチーズの相性は、もう少し後で語ることにしよう。

今回のブログ後半は、16日から始まるチーズ塾について、少し説明(少し宣伝)。
全13回で、1月〜6月の期間。
長丁場になるが、チーズ製造を知りたい人には、良いですぞ!

第一回 「乳成分総論と水」 
     2016年1月16日(土)13:30〜17:00
    
第二回 「タンパク質とミネラル」
     2016年1月23日(土)13:30〜17:00
    
第三回 「乳脂肪と乳糖」      
     2016年2月6日(土)13:30〜17:00
    
第四回 「乳酸菌」
     2016年2月20日(土)13:30〜17:00
    
第五回 「凝乳酵素」     
     2016年2月27日(土)13:30〜17:00

第六回 「チーズ製造総論」     
     2016年3月12日(土)13:30〜17:00

第七回 「製造各論:ラクティック・ドミノン」     
     2016年3月19日(土)13:30〜17:00

第八回 「製造各論:ミックス」     
     2016年4月2日(土)13:30〜17:00

第九回 「製造各論:非加熱圧搾(PPNC)」     
     2016年5月14日(土)13:30〜17:00

第十回 「製造各論:加熱圧搾(PPC)」     
     2016年5月28日(土)13:30〜17:00

第十一回 「熟成」     
     2016年6月11日(土)13:30〜17:00

第十二回 「チーズの欠陥」     
     2016年6月18日(土)13:30〜17:00

第十三回 「チーズと疾病」     
     2016年6月25日(土)13:00〜17:00

3月20日(日)、21日(月)でラクティック・ドミノンの製造実習を行う予定。

かなり詳しい製造講座になりそうである。
なるべく月に2回くらいにしようと思ったが、2月が3回になってしまったな。

13回全部と実習をまとめて申し込むと15万円、単発だと一回¥12,000である。
(実習は、3日分で¥37,800)
まだ二人くらいなら入れるので、興味のある方はどうぞ。

現在テキスト執筆中だが、チーズの世界が面白くてワクワクする。
チーズの不思議な世界へ、いざゆかん!



2015年10月1日木曜日

酔っ払いチーズ(Fromage ivre)

このブログを書き始めたのは、2013年9月17日。
2年と半月経った。
こんなマニアックなブログを、たくさんの方が見てくれて、本当に嬉しい。
ヨタヨタしながら、なんとか続けてこられたのは、みなさんのおかげだと思っている。

Merci beaucoup !!!

今年は、ほとんど記事の書けない状態が続いている。
サボったわけではなく(言い訳?)、工房を開設してから、超多忙になり、なかなか手がつけられない。
書きたいことは、たくさんあるが、下調べに時間がかかって公開が遅れがちである。

10月になれば、一山片付くので、もう少し書けそうだ。

そして、10月は、工房を始動してから一年になる。
感無量。
日頃の感謝を込めて、10月18日(日)に工房で記念パーティーを行う予定。
Facebook Pageで公開しているので、興味のある方はどうぞ。

さて、本題。

ひょんなことから、東京ワイナリーさんと知り合いになって、彼女が作ったワインの葡萄の搾りかすを分けてもらうことになった。
その搾りかすに、チーズを漬けてみることにして、ただいま試作中なのだ。

うちのドーメタイプを一週間ブルーベリーワインの搾りかすにつけたところ。
少し紫になっている。

こちらは、山葡萄の搾りかすにつけたところ。
同様に、一週間だが、やや色が薄い。

搾りかす漬けチーズがあることは知っていたし、ある程度の情報はあったが、どんなチーズかな?と調べてみたら、面白かったので、ブログに載せてみることにした。

イタリアのチーズに、ウブリアーコ(Ubriaco)というのがある。
酔っ払いチーズと言っている人もいる。
ちなみに、フランス語だと、Formaggio Ubriacoは Fromage ivre となる。
「ivre」は、「酔っ払い」である。
ウブリアーコ(Ubriaco)
http://saporiericette.blogosfere.it/post/509660/il-formaggio-ubriaco-del-piave-come-si-fa-e-origine

ヴェネト州の産物の資料によると、結構種類があるので、紹介しよう。
  • ウブリアーコ アル アマローネ(Ubriaco all'Amarone)
  • ウブリアーコ アル プロセッコ(Ubriaco al Prosecco)
  • ウブリアーコ "ブリロ"(Ubriaco "Brillo")
  • ウブリアーコ "ブリスコラ アル バルベーラ"(Ubriaco "Briscola al Barbera")
  • ウブリアーコ ロッソ トレヴィジアーノ(Ubriaco Rosso Trevigiano)
というのがあるらしい。
筆者はイタリア語は読めないので、発音は違うかもしれない。

✮ ウブリアーコ アル アマローネ

 ヴァルポリッチェッラのアマローネのマール(ワインの搾りかす)に漬けたもの。
 モンテ ヴェロネーゼ(DOPチーズ)を漬けることもある。
 風味は強く、チーズ特有の匂いがあり、ピリッとした味がすることもある。
 牛乳製、脱脂しているので 40% MG、無殺菌乳、殺菌乳製がある。
 5〜9 Kg。

 日本では、わりと手に入るチーズ。
 筆者が知っているのは、真ん中に紫色の線が入っていて、ウブリアーコ・クラシコ
 と区別していた。
 香りも味も良く、美味しいチーズだったが、値段が高いのが難点!

UBRIACO® D'AMORE - FORMAGGIO AFFINATO AL VINO AMARONE DOCG
ウブリアーコ アル アマローネ
http://www.lacasearia.com/it/prodotti/i-formaggi-di-cantina

✮ ウブリアーコ アル プロセッコ

 プロセッコのマールに漬けたもの。
 味は、他のウブリアーコより繊細でやさしい。
 牛乳製、40% MG、殺菌乳、無殺菌乳製あり。
 3〜5 Kg。

 プロセッコは白葡萄なので、チーズの表皮は黄色っぽい。
 これも、日本で手に入りやすい。
 説明の通り、繊細で優しいチーズ。
 ワインのプロセッコとの相性が抜群!

UBRIACOSECCO- FORMAGGIO AFFINATO AL VINO PROSECCO DOCG
ウブリアーコ アル プロセッコ
http://www.lacasearia.com/pages/prodotti/i-formaggi-di-cantina)

✮ ウブリアーコ "ブリロ"

 チーズをワインで洗ったもの。
 マールに漬けたものではない。
 フレッシュで食べるためのもの。
 全乳、殺菌乳、無殺菌乳製あり。
 500g。

 このチーズは、扱ったことがないので、よく知らないが、写真を見ると綺麗な紫色だ。

Ubriacato Brillo rosso
ウブリアーコ ブリロ

http://www.guffantiformaggi.com/formaggi/ubriaco-brillo-bianco-e-rosso/)
✮ ウブリアーコ "ブリスコラ アル バルベーラ"

 バルベーラのマールに漬けたもの。
 ヤギ乳製と牛乳製があり、味が強い。
 ヤギ乳、または牛乳の全乳製で、殺菌乳、無殺菌乳製がある。
 800 g。

 チーズの説明を見ると、牛乳と山羊乳の混乳のようである。

Ubriaco "Briscola al Barbera"
Latte misto vaccino-caprino e mosto di Barbera per un sapore più intenso.
ウブリアーコ "ブリスコラ アル バルベーラ"

http://www.salumeriatorio.it/paginehtm/formaggi/formaggi.htm)

✮ ウブリアーコ ロッソ トラヴィジアーノ

 一番有名なウブリアーコ。
 メルローのマールに漬けたもので、独特の味がある。
 チーズプラトーには欠かせないチーズである。
 牛乳製、脱脂して 40% MG、殺菌乳、無殺菌乳製がある。
 5〜9 Kg。

 こういう色のついたチーズをプラトーに入れると綺麗だ。

ウブリアーコ ロッソ
http://www.guffantiformaggi.com/formaggi/ubriaco-rosso-trevigiano/)

http://www.italienpasta.com/VENETO%20-%20VENETIE%20FROMAGES.php より抜粋)


筆者が販売していたのは、このうちアマローネ、プロセッコ、クラシコ(メルローとラボーゾのマールに漬けたもの。ロッソに当たるのか?)だったが、他にもいろいろあるものですな。

これらのチーズの誕生伝説として有名なのが、第一次世界大戦中に、オーストリアの兵士たちにチーズを取られないように、生ゴミだった葡萄の搾りかすの中にチーズを隠したという話である。
後に、よい味になることを発見した人々は、戦争後に新しいチーズとして作り出したと言うのだ。
(イタリアのチーズは、戦争中に独自の発達をしたものがいくつかあるのが面白い。)
赤ブドウに漬けると、綺麗な紫色に、白ブドウにつけると少し黄色がかった表皮になる。

一方、フランスにも同じようにマールに漬けたチーズがある。
フロマージュ・オ・マール・ドゥ・レザン(Fromage au marc de raisin)、あるいは、トム・オ・マール(Tomme au marc)がそれだ。

フロマージュ・オ・マール・ドゥ・レザン(Fromage au marc de raisin)
http://www.produits-laitiers.com/produit-laitier/fromage-au-marc-de-raisin)

フロマージュ・オ・マール・ドゥ・レザンは、サン・マルスラン(Saint Marcellin)タイプをワインの搾りかすにつけたものだが、表皮は軽く色づくくらい。
トム・オ・マールは、PPNC(非加熱圧搾タイプ)をマールに漬けたものである。
トム・オ・マール(Tomme au marc)
http://www.produits-laitiers.com/produit-laitier/tomme-au-marc-et-tommette

二種類とも、マールをチーズにまぶしている。
ウブリアーコの表皮が綺麗に染まっているのと少し違う感じである。

筆者が目指しているのは、大きさが Saint Félicien(サン・フェリシアン)くらいで、表皮が紫色になったもの。
ウブリアーコは、ラボーゾやメルロー、アマローネなどの搾りかすに漬けたものだから、色が濃くなるのだろうか?

フランスのフロマージュ・オ・マール・ドゥ・レザンは、漬け込む時間が1ヶ月ほどのようだが、イタリアのウブリアーコは7ヶ月という話である。
チーズの種類が違うので、漬け込む時間も違うのだろう。
7ヶ月もラクティック・ドミノンタイプのチーズを漬けたら、ブヨブヨになっちゃいそうだな。

現在、約一週間が経過。
まだまだ白く、紫に染まっていない。
やや表面が柔らかくなっているようなので、このタイプは、やはり一ヶ月くらいが限度と踏んでいる。

ちょうど、一周年記念パーティーの頃、食べごろかな。
ということで、よほどの失敗がない限り、パーティーに出すつもりだ。
数があまりないのだが・・・

2015年7月12日日曜日

チーズの穴は、なぜできるのか?

l'Emmental suisse フランス製よりもフリュイテ(Fruité)だと言われている。

5月に、「チーズの穴はなぜできるのか」という記事をフェイスブックページで取り上げた。その記事は、Le Républicain Lorrain の配信だったが、本家のスイス Agroscope のものを見つけたので、取り上げてみよう。

Agroscope のURLは、
http://www.agroscope.admin.ch/aktuell/00198/05299/05494/index.html?lang=fr&msg-id=57378

大体の内容は、日本のYahooを読んでもわかるのだが、細かいことが、やや説明不足だと感じる。
現在は、他にもいろいろな記事が日本語で出ているが、干し草が原因だとしか書いていない。そこで、Agroscopeの原文を少し見てみよう。

まず、研究したのは、Agroscope(スイスの農業、食物と環境に対する研究機関)とl'Empa(スイス連邦材料試験研究所)の研究チームである。

スイスのチーズには、穴があいているが、なぜ、チーズ職人たちは、うまく穴を開けることができるのだろう?どのようにして、理想的な形にすることができるのだろう?
この謎が、最近の研究で明らかになったと言っている。

実は、この研究、1917年まで遡ることができる。
1917年に、アメリカ人の研究者、ウイリアム・クラーク氏が、すでにエメンタールの穴について、研究発表をしているのだ。
ただ、彼は、その時代の知識で、この難問を説明しようとしたのである。

当時の知識では、微生物が作り出す二酸化炭素によって、穴が形成されるという推測しか成り立たなかった。
今回の研究が、画期的と言われる理由は、推測ではなく、実際にチーズの穴を作るのに貢献している物質を見つけたことにあるのだ。

今までは、微生物の作り出す二酸化炭素が、チーズの穴を作る、と思われてきた。
しかし、それは、推測に過ぎないのである。
確かに、プロピオン酸菌や、ある種の乳酸菌は、CO2を作り出すのだが、それではなぜ、その二酸化炭素によって、チーズに穴が形成されるのか?

一般的に、チーズの中で形成される気体は、生地から発散される。
コンテやグリュイエールの熟成庫は、アンモニアの臭いが充満しているのだ。
それなのに、なぜ、二酸化炭素や硫化水素(酪酸菌が作る気体)は、穴を作るのだろうか?

研究者たちは、あることに注目をしたのである。

「現在のエメンタールは、以前に比べて穴の数が減っている」

ということに。
10〜15年前は、冬のエメンタルにはたくさんの穴があったが、現在はかなり少なくなっている。
何が違うのか?

そこで彼らは、現在の搾乳環境はかなり改善されて、原乳は以前よりずっと清潔になっていることに注目し、こういう仮説を立てたのである。

「干草の細かい粒子がチーズの穴を形成するのではないか」

そして彼らは、130日間の熟成期間の間、穴の発達する様子(穴の数、大きさ、集まり具合)を、コンピューターで、穴の断層撮影をして調べた。

その結果、干草の微粒子がチーズの穴を形成することが判ったのである。

こう書くと、干草の微粒子がガスを放出して穴を形成するように思われるが、この記事ではそこまでは書いていない。
その解明には、まだ時間がかかると思われる。

しかし、干草の微粒子があると穴ができることが判ったのは、今までの「微生物が発する気体によって穴が形成される」という説を覆すことになる。
例えば、この微粒子がなければ穴ができないのであれば、原乳を清潔にさえすれば、酪酸発酵が起きてもチーズが爆発しないということにならないか?味はともかくとして。

コンテに穴が多すぎるのは、欠陥(le défaut)とされているので、ENILBIOでは、穴があかないようにする研究もしていた。
昔のコンテには、かなり穴ぼこが空いていたが、現在は、ずっと少ない。
脂肪分や、加熱温度によって、穴が開くことはわかっていたが(コンテのエメンタル化と言う)、やはり、搾乳時の衛生状態が良くなったことと無関係ではないだろう。

この記事のまとめは、こう結んでいる。

「チーズの中の "穴の原因" は少なくなっている。原乳、プレジュール、そして微生物の種の他にも、伝統的なチーズを製造するために、干草の微粒子の取り込みを必要とするという事実は、無殺菌乳の生産と加工がまだ現在も密接に結びつき、無殺菌乳の伝統的なスイスのチーズの本質を際立たせていることを示す良い例なのである。」

このブログを書き始めたのは、6月の初めだった。
6月がものすごく忙しくて、初めて一ヶ月間ブログをお休みしてしまった。
だいたい、筆者の常として、3、6、9月は狂想曲になってしまうのだが、今年はそれが3月からずっと続いているような状態である。

まだすることが山積みなのだが、しなければならないことを放り出して、他のことをしたくなる困った性格なのである。
分身の術が使えたらいいなと思っている今日この頃である。

2015年5月13日水曜日

ラクダのチーズ

ちょっと前だが、筆者のFacebook仲間で話題になっていたのが、ラクダのチーズ。
知り合いがラクダ乳とチーズを試食して、コメントをしていた。
筆者は食したことがないのでなんとも言えないが、なんでも、油分が多いそうである。
今回は、このチーズのカワリダネについて書いてみることにしよう。

前回の乳脂肪の原稿を書くときに、ラクダ乳の資料を、いくつか発見した。
つい、そっちの方が面白くなって、追っかけてしまったのだが、なかなか興味深い。
フランスの学校時代にも、ラクダのチーズのことは、先生がちらりと言っていたことを思い出す。タンパク質を加えないとできない、と言っていたな。

ということで、資料を読んでいたら、その通り。
ラクダ乳だけでは、チーズはできないのである。
では、ラクダ乳とはなにか?
また、どうやってチーズを作るのかを見ていこう。

ラクダと搾乳する人
http://www.fao.org/Newsroom/fr/news/2006/1000275/index.html

筆者の持っている資料では、ヒトコブラクダ(le dromadaire)の乳のことが載っている。
その乳でチーズを作っているのは、モーリタニア回教徒共和国(Mauritanie)のTiviskiというメーカーだそうだ。
モーリタニアは、フランス領だったので、チーズを作ることを考えたのかもしれない。

ラクダ乳とはどんなものなのだろうか?
他の動物との成分比較を見ていただきたい。

表1:ラクダ乳と他の動物の乳の成分比較(%)
http://www.inter-reseaux.org/IMG/pdf_Fromage_Lait_chamelle_MLDia_Mode_de_compatibilite_.pdfより
こうしてみると、そんなに成分が違うというわけでもなさそうだが、どっこい、タンパク質が違うのである。

どうしてラクダ乳がチーズの製造に向いていないのかというと、
  • 乳凝固に牛の2,5〜3倍の時間がかかる。
  • 酵素凝固が難しい。
  • ほとんど酸凝固しない。
  • 凝固の兆候を見るのが難しい。
  • カゼインのバランスが特徴的:カゼインκが約5%しかない。牛では、13,6%。
  • ミセル ド カゼインの大きさが牛の約2 倍で、脂肪球と結びついている。
  • 脱水が上手くいかない。
  • 熟成が難しい。
などの理由によるそうだ。

酵素凝固が難しく、牛乳の場合の50〜100倍の凝乳酵素が必要で、固まりはするものの、俗に言う、Caillé mou(カイエ ムー:柔らかすぎるカイエ)になり、水切れが極めて悪いそうだ。水切れが悪いということは、とりもなおさず、熟成はうまくいかない。

カイエ ムーというのは、水分を多く含むので柔らかい。そして、その水分がカイエと結びついていて、なかなか外に出ていかないのである。
だから、カイエ ムーであるということは、脱水に時間がかかる。

また、抗菌物質に富んでいるために、酸凝固は、うまく作用しないそうである。

この中で、注目すべきは、

  • カゼインのバランス
  • ミセル ド カゼインの大きさが牛の2倍で、脂肪球と結びついている
というくだりである。

ヤギ乳のミセル ド カゼインは大きく、脂肪球もラクダほどではないが、小さい。
しかし、カゼインκは、牛乳より多いくらいである。
ヤギ乳はちゃんと固まるのに、ラクダ乳が固まらないのは、カゼインのバランスとミセル ド カゼインが脂肪球と結びついているからだろう。

筆者も試作品を作る時、ホモ牛乳を使っていたが、常にカイエは柔らかく、水切れが良くなかった。脂肪が多いとカイエは柔らかくなり、水切れが悪いのが一般的だが、脂肪分が少なめでも、脂肪球が小さく、しかもミセル ド カゼインに結びついているとなると、かなり固まりにくく、水切れも悪いだろう。

製造風景
http://www.fao.org/Newsroom/fr/news/2006/1000275/index.html

ラクダのチーズ
http://mcommemauritanie.blogspot.jp/2011/08/f-comme-fromage-de-chamelle.html


ここで、二人の救世主が現れる。
フランスのナンシーにあるENSIAAのRamet氏とスイスのチューリッヒ、Ecole polytechniqueのFarah氏である。

Ramet 氏は、幾つもの試作品を作り、原乳の処理、凝固の導き方、脱水と熟成の方法を改良した。
それでは、どのように改良したのだろうか?

1. 原乳の調整

基本的に低温殺菌処理か加熱処理(Thermisé:テルミゼ)をおこない、固形分を増やすために、粉乳や濃縮した他の乳(牛、羊など)を加える。また、リン酸カルシウムと塩化カルシウムに関する塩類のバランスを整える。

2. 凝固のさせ方

乳酸菌によって、pHをうまく調整し、凝乳酵素(牛のペプシン、プレジュール、微生物酵素)の濃度を上げ、凝固温度を上げる。

3. 脱水の方法

凝固時の温度を上げる。

4. 熟成方法

カゼインの親水性が少なく、脂肪分も少なめなので、乾燥工程でダメージがあると考え、それを予測する。

と、こうである。
なかなか大変であるな。
また、現在では、凝乳酵素もラクダ乳に最適なものが見つかった。
Camifloc N.D.というのだそうだ。

このような技術を駆使して、モーリタニアのメーカーが、白カビのカマンベールのような商品を作っている。
Tiviskiというメーカーの、"Caravane"というチーズである。

ラクダチーズ
http://omarinspore.wix.com/tiviski#!__francais/produits/vstc7=caravane
「Caravane:
世界で唯一の、ラクダ乳から作るチーズ。ソフトタイプの白カビチーズの製法で作っている。美味しく、軽く、他に類を見ない。脂肪含有量:季節によるが、平均して22%」
Caravaneの中身
http://le-secret-du-sahara.over-blog.com/article-comment-booster-notre-systeme-immunitaire-inne-par-le-fromage-de-chamelle-117432681.html

筆者は、この資料を読んで、いまの技術はすごいなあと思った。
本来なら、飲料乳にしかならないラクダ乳をチーズにしてしまうのだから。
ラクダの数は多いそうだから、原乳の確保は難しくなさそうだが、技術が大変だから、量産できるのだろうか?

また、このチーズは、値段が高いとも聞いている。

筆者は牛乳のチーズを作っていても、この初めての夏、うまくいかないこともある。
もともと作るのが大変なラクダチーズ、そんなに頑張らなくても・・・と思うのは、筆者だけなのだろうか?

2015年4月3日金曜日

チーズの製造方法:基本編 乳脂肪

確定申告を終えたら、このブログを書けると思いきや、3月は、畜産センターのチーズ作り講座、商工会議所の公演などで忙しく、全然書けなかった。
おかげさまで、チーズ工房も少しづつ安定してきているようである。
媒体に載ったら、お昼を食べるのが3時になった日もあるが、うれしい悲鳴だ。

忙しいのだが、4月になって、なんとか落ち着いてきたので、このブログも月2回くらいなら書けそうだ(と思っている)。
書きたいことはいろいろあるのだが、テーマが分散するので、どうまとめていくかが課題である。
いずれは、チーズの製造本として、まとめたいと思っている。

前置きはさておき、乳脂肪である。

乳中の脂肪は、球状で、水分中にプカプカ浮いていると思っていい。
これを「脂肪球:le globule gras 」といい、乳は、脂肪球の「乳濁液」なのである。

ややこしい言い方になったが、ドレッシングをイメージしていただくとわかりやすい。
油分と水分が分離しているドレッシングを振って、中身が混ざると混濁する。
あれですな。
脂肪球は、乳中の水分の中で安定しているので分離せずに混ざったままになるが。

脂肪球の構造は、というと、常温で、中央に液状のトリグリセリドがあり、それを固形のトリグリセリドが包んでいる。
トリグリセリドについては、Wikiだがこちらを参照していただきたい。
http://ja.wikipedia.org/wiki/トリアシルグリセロール
表面に膜があり、膜の外側の部分は、タンパク質、ミネラル、水でできていて、内側の部分に、リン脂質がある。(図1参照)

図1:牛乳の脂肪球の構造
牛乳の脂肪球は、1〜5nm(最高で22nmくらい)で、ばらつきがある。
そして、大きいのが特徴だ。
表1を見ていただきたい。

表1:脂肪球の大きさ 
脂肪球の大きさは、動物によって、かなり変わる。
先ほど、脂肪球は乳中で安定していると書いたが、牛乳は大きい脂肪球が浮いてくる。
ホモジナイズすると、浮いてこないのは、脂肪球が小さくなるからだ。
山羊乳の脂肪球は、小さいので一晩静置しても浮いてこない。
これは、チーズを作るときに楽ですな。

筆者は、現在牛乳を使っているが、一晩おくと、かなりの脂肪が浮いてくる。
そのまま使うとかなりMGが高くなるので、エクレメ(écrémé:脱脂)しているが、
ちょっとめんどくさい。

羊の脂肪球の大きさを調べてみたのだが、見つからなかったので載せていない。
しかし、文献によると、羊も脂肪球が小さいので、浮かないということである

面白いのは、ラクダ。
かなり脂肪球が小さいので、消化にいいらしい。

余談になるが、ヤギ乳は、脂肪球が小さくて(3nm以下)、ミセル・ド・カゼインが大きいのである。

タンパク質の変化の幅は小さいが、脂肪分はいろいろな原因でかなり変化する。
牛の場合、脂肪分はだいたい3,5〜4,5%だが、以下の状況で変わってくる。

  1. 牛の種類
  2. 泌乳時期
  3. 搾乳の途中
  4. 季節

1. の牛の種類だが、図2を見ていただきたい。

図2:牛の種類による乳生産量と平均的乳成分
http://www.dairyinfo.gc.ca/index_f.php?s1=dff-fcil&s2=mrr-pcle&s3=mpb-plr より
カナダの資料だが、2013年のものである。
平均して、ホルスタインは3,84%、ジャージーは4,95%、ブラウンスイスは4,17%の乳脂肪分である。
これを見ても、牛の種類によってかなり違うことがわかる。

2. の泌乳時期による変化だが、簡単に言うと、出産直後と涸乳前は固形分が多い。
図3 を見ていただきたい。

図3:泌乳期の乳量とタンパク質、脂肪量の変化
(注 上段のグラフは、乳量、下段の実線は脂肪含有量、点線はタンパク質含有量、下の数字は、週を表している。グラフ真ん中の0の線は、平均値を示している。https://hal.inria.fr/hal-00895941/document )
要するに、子を産んだ直後と乳分泌が終了する直前は、乳量は減るが、濃い牛乳であり、20〜32週目は、乳量は増えるが、水分を多く含んだ、水っぽい牛乳になるということなのだ。

3. の搾乳の途中というのは、搾乳している間も変化しているという意味である。

4. の季節では、ヤギ乳の資料が手に入った。
図4を見ていただきたい。

図4:季節によるヤギ乳組成の変化
(注 黄色の線は、脂肪量、赤い線は、蛋白質量、黒い線は、総乳量。最下段は、1月から11月までを表す)
http://public.terredeschevres.fr/1_PRINCIPAL/1_3_1_lait/2_evo_compo_lait.html
ヤギの資料なので、乳量は、1〜3月が多くなっているが、蛋白質量、脂肪量ともに、乳量が増えると減少しているのが見て取れる。
また、夏は、乳量も減り、蛋白質量、脂肪量ともに少ない。

5. の餌であるが、これはまた色々な情報があり、一概には言えないが、トウモロコシやコルザ(菜種)などを与えると、脂肪量が増えると聞いている。
餌による乳固形分の研究は、盛んだ。

お次は、乳脂肪の成分。

大雑把に言うと、乳中の脂肪は、98,5%がトリグリセリド、1%がリン脂質、1%がコレステロール、トコフェル(ヴィタミンEの本体をなす物質)、脂溶性ヴィタミンである。
トリグリセリドは、脂肪酸(酸)とグリセリン(アルコール)がエステル結合したものだが、乳中に含まれる脂肪酸の種類はいろいろある。表2と表3をご覧いただきたい。

表2:牛乳中の主な脂肪酸
(Initiation à la technologie fromagèreより)

表3:動物別脂肪酸含有量(g/ 総脂肪量100g)
(Initiation à la technologie fromagèreより)
ヤギ乳、羊乳には、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸が牛乳に比べて多い。
この脂肪酸が、ヤギや羊の乳や肉の特有の匂いの元だと言われている。
特にヤギ乳の特有のにおいは、4-エチルオクタン酸(総脂肪中 13mg/g)と4-メチルオクタン酸(総脂肪中 80mg/g)が原因と言われている。
(カプリル酸はオクタン酸の慣用名)
雄ヤギの特異臭の主要構成成分と言われているのだから、臭いわけだ(雄ヤギは、猛烈に臭いのだ)。

また、乳脂肪は、チーズにも関係の深い物質である。
チーズの口当たりや、においは、脂肪やその分解物によるところが多い。
近頃、脂肪分の少ない、あるいは脂肪分ゼロのチーズがあるが、美味しさの点でなかなか難しいところだ。

フランスのギオトー社は、パヴェ・ダフィノアのレジェ、すなわち低脂肪のチーズを出している。他にもたくさんの低脂肪チーズがあると思うが、フランスではよく見かけたチーズだ。
普通のパヴェの脂肪分が100g 中 20g なのに対して、100g 中 9g なので、半分以下である。
ただ、味となると筆者は???だった。

パヴェ・ダフィノア レジェ
http://www.pavedaffinois.com/pave-daffinois-leger-libre-service/
パヴェ・ダフィノア オリジナル
http://www.pavedaffinois.com/lait-de-vache/

脂肪というのは、食品を美味しくさせる作用があるようだ。
チーズに関して言えば、ヨーロッパでは、健康志向で、低脂肪のものも好まれるようだが、日本では高脂肪のものが人気である。

例えば、クリームチーズ。
フレッシュチーズといえば、クリームチーズを思い浮かべる方が多いだろうが、よく見かける、クラフト社のフィラデルフィアクリームチーズは、100g中の脂肪分が、31,1gである。(http://www.morinagamilk.co.jp/products/cheese/philly/280.html
カマンベールのようなソフトタイプが、100g中約20gであることを考えると、結構高い。

ちなみに、MGというと、チーズ100g中の脂肪分(脂質といったほうがいい)、固形分中脂肪(G/S)というと、固形分中の脂質の%だから、間違えないように。

タンパク質もチーズにとって重要な要素であるが、脂肪も重要な要素の一つだ。
チーズのウマミは、タンパク質に軍配があがると思うが、風味という点では、脂肪に軍配があがるだろう。

今回は、かなり能書きになったので、わかりにくいかもしれない。
簡単に説明しようと思ったが、いろいろ書いているうちに、難しくなってしまった。
お許し願いたい。

次回は、何を書こうかな?
今月末までに、何かひとつ書こうと思っている。