2017年8月8日火曜日

チーズの分類はどのようにしたら良いのか?

先日、知り合いに、チーズの分類について、質問を受けた。

ミモレットに関してであったが、このチーズをPPC(加熱圧搾)に分類していることがあるという。ミモレット・ヴィエイユ(熟成の長いチーズ)は*LR(ラベル・ルージュ)という認証を取っている。CDC(Cahier des charges:カイエ・デ・シャージュ=仕様書)は、まだ完成していないようだが、下書きを読むとDélactosage(デラクトザージュ:カイエをお湯で洗うこと)を行なっているので、PPNC(非加熱圧搾)に分類される。
INAOの分類も、PPNCになっている。
*LR:ラベル・ルージュ;一般に販売されている商品よりも、その品質や製造が優れているものに与えられる国際的認証)

ということは、ミモレットは、製造上の分類では、PPNCであり、PPCではないことになる。また、筆者は、このチーズの6週間熟成というのを販売していたことがあるが、まるでゴム鞠。表皮もツルツルで、包丁ですぐに切れるほどの柔らかさ。これが、熟成するとciron(コナダニ)がつき、表面がボロボロになる。水分も飛んで、生地が硬くなるのである。

また、ゴーダも熟成状態によって、硬さが変わる。
しかし、ゴーダの場合、日本では製造方法がよく知られているため、PPCに分類する人はいない。

このように、チーズの分類は、まちまちである。
筆者は、以前にもチーズの分類として、製造方法による分類を提唱したが、今回は、どうしてこの分類が合理的なのかをもう少し詳しく説明しよう。

まず、チーズの分類方法はいろいろあることを見ていこう。

FAOという国際的組織がある。
英語で "Food and Agriculture Organization of the United Nations" という。
フランス語では、"Organisation des Nation Unies pour l'alimentation et l'agriculture" という。
日本では、「国際連合食糧農業機関」と言っている。

そのFAOでも、チーズの分類をしているが、以下のようになる。


TEFDは、Pourcentage de la teneur en eau dans le fromage dégraissé(フランス語)、英語では、MFFB:Percentage moisture on a fat-ferr basisという。
二つとも、脂肪分を取り除いたチーズ中の水分を表す。

MGES は、Pourcentage de la matière grasse dans l'extrait sec(フランス語)、英語では、FDB:Percentage fat on a dry basisという。
これは、完全に脱水したチーズ中の脂肪分を表す。

あるチーズを例にとって見てみよう。
ここに、チーズ中の水分TEFDが57、脂肪分MGESが53で、ロックフォールと同じ方法で熟成させたチーズがあるとすると、以下のように分類される。

TEFD:57、MGES:53の青カビチーズの場合
すなわち、半硬質で、全脂肪の青カビチーズとなる。

いい分類方法なのだが、難点は、TEFDとMGESがわからないと分類できないところである。

それでは、次に、製造方法による分類方法を見てみよう。

ヨーロッパ型のチーズの特徴は、乳酸菌と凝乳酵素を併用するところにある。
東洋型のチーズは、乳酸菌だけを使うものも多いが、ヨーロッパ型は、ほとんどのチーズが乳酸菌と凝乳酵素を併用している。
ま、例外として、カッテージ(イギリス)、マスカルポーネ(イタリア)などが、乳酸菌か酸のみを利用しているのだが。

そして、凝乳酵素の量によって、

  1. ラクティック・ドミノン(乳酸菌優位法)
  2. ミックス
  3. プレジュール・ドミノン(凝乳酵素優位法)
の3種類に分けられる。
乳酸菌の量はあまり関係なく、種類が違うのみである。

そして、これが製造方法による分類方法になるのである。
まず、1.のラクティック・ドミノン。
これは、山羊チーズを作る時によく用いられる方法である。

凝乳酵素の量は少なく、凝固に時間をかける。
そして、このチーズの特徴は、フレッシュでも熟成させても食べられるということである。山羊のチーズは、ほとんどがここに入る。
フロマージュ・ブランも、ここに入るが、他に熟成させるタイプもある。
例えば、エポワス。このチーズは、ラクティック・ドミノン製法で作り、ウォッシュしたものである。また、自然の表皮である、サン・マルスランなどもここに入る。


2.のミックスには、柔らかいタイプのチーズがほとんど入る。
例えば、Pâte filéeであるモッツァレラ、カマンベールなどの白カビ、ロックフォールのような青カビ、マンステールのようなウォッシュタイプは、すべてここに入る。
これに分類されるチーズの出来たては、ボソボソしていて美味しくない。
熟成させて、初めて美味しくなるのが特徴である。

例外は、モッツァレラ。
これは、出来立てが美味しい。
製法がミックスでも、Pâte Filéeは熟成させなくても美味しいのである。

3.のプレジュール・ドミノンは、3つのタイプに分けることができる。

  • Pâte pressée non cuite(非加熱圧搾)
  • Pâte pressée demi-cuite(半加熱圧搾)
  • Pâte pressée cuite(加熱圧搾)
PPNC(非加熱圧搾)は、カイエ切断の後、40℃以下に加熱する。
PP demi-cuite(半加熱圧搾)は、40〜50℃に加熱する。
PPC(加熱圧搾)は、50℃以上で加熱する。

cuiteとは、「火を通す、煮る」という意味である。
また、これらのチーズは、加熱することと、圧搾することが特徴である。

PPNCは、ゴーダなどに代表される、やや柔らかいチーズである。
チーズによっては、Délactosage(デラクトザージュ:ラクトースを取り除くという意味。英語では、ウォッシングという。カイエをお湯で洗う工程)を行うのも特徴だが、AOPのチーズでは、禁止しているものもある。

PP demi-cuiteには、アボンドンス、アッペンゼルなどが入る。
両方とも、加熱温度は、45〜48℃くらいである。

PPCは、コンテやエメンタール、グリュイエール、パルミジャーノ・レッジャーノが代表的である。

表にしてみると、こうなる。



この分類方法だと、例えば、カマンベールなら、ミックス製法の白カビ熟成タイプ、コンテなら、凝乳酵素優位法のPPC、エポワスなら、乳酸菌優位法のウォッシュタイプ、となる。

白カビだの、青カビだのが乳酸菌優位法とミックスにまたがっているので、ややこしいかもしれないが、製造方法が違うのがわかるので、良いと思う。
例外のカッテージ、マスカルポーネは、凝乳酵素を使っていないので、ラクティック・ドミノンと分けて、ラクティック(酸凝固)という項目を作ればいい。

よく使われている分類方法は、フレッシュ、白カビ、青カビ、ウォッシュ、非加熱圧搾、加熱圧搾、シェーヴルとなっていて、熟成状態と製造状態が混ざっている。
同じウォッシュといっても、マンステールとエポワスでは、作り方が違う。
山羊チーズだけを分けたのは、ラクティック・ドミノンだからだろうか。

この分類方法は、合理的だと思うが、製造方法を知らないとできないというネックがある。しかし、製造方法は、重要だと筆者は思うので、この分類方法を提案するのである。

1 件のコメント:

  1. 初めまして。いつも興味深く拝読いたしております。
    ひとつ質問させて頂きたく、勇気を出して書いております。

    今回のブログのテーマでいうと、Mont d'Orはミックスにあたりますか?
    あまり熟成していない状態のものも、トロトロになったものも両方食べたことがありますが、若いものでもCamembert de Normandieのような芯はなかったように記憶しています(たまたま?)。
    むっちりの状態からMont d'Or特有のトロトロになる経緯(秘密?)もぜひ教えて頂ければ幸いです。
    Brie de MeauxやCamembertの変化の仕組み(アルカリ性に傾くことでカゼインが電荷を持つ)と同じなのでしょうか?

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