2015年5月13日水曜日

ラクダのチーズ

ちょっと前だが、筆者のFacebook仲間で話題になっていたのが、ラクダのチーズ。
知り合いがラクダ乳とチーズを試食して、コメントをしていた。
筆者は食したことがないのでなんとも言えないが、なんでも、油分が多いそうである。
今回は、このチーズのカワリダネについて書いてみることにしよう。

前回の乳脂肪の原稿を書くときに、ラクダ乳の資料を、いくつか発見した。
つい、そっちの方が面白くなって、追っかけてしまったのだが、なかなか興味深い。
フランスの学校時代にも、ラクダのチーズのことは、先生がちらりと言っていたことを思い出す。タンパク質を加えないとできない、と言っていたな。

ということで、資料を読んでいたら、その通り。
ラクダ乳だけでは、チーズはできないのである。
では、ラクダ乳とはなにか?
また、どうやってチーズを作るのかを見ていこう。

ラクダと搾乳する人
http://www.fao.org/Newsroom/fr/news/2006/1000275/index.html

筆者の持っている資料では、ヒトコブラクダ(le dromadaire)の乳のことが載っている。
その乳でチーズを作っているのは、モーリタニア回教徒共和国(Mauritanie)のTiviskiというメーカーだそうだ。
モーリタニアは、フランス領だったので、チーズを作ることを考えたのかもしれない。

ラクダ乳とはどんなものなのだろうか?
他の動物との成分比較を見ていただきたい。

表1:ラクダ乳と他の動物の乳の成分比較(%)
http://www.inter-reseaux.org/IMG/pdf_Fromage_Lait_chamelle_MLDia_Mode_de_compatibilite_.pdfより
こうしてみると、そんなに成分が違うというわけでもなさそうだが、どっこい、タンパク質が違うのである。

どうしてラクダ乳がチーズの製造に向いていないのかというと、
  • 乳凝固に牛の2,5〜3倍の時間がかかる。
  • 酵素凝固が難しい。
  • ほとんど酸凝固しない。
  • 凝固の兆候を見るのが難しい。
  • カゼインのバランスが特徴的:カゼインκが約5%しかない。牛では、13,6%。
  • ミセル ド カゼインの大きさが牛の約2 倍で、脂肪球と結びついている。
  • 脱水が上手くいかない。
  • 熟成が難しい。
などの理由によるそうだ。

酵素凝固が難しく、牛乳の場合の50〜100倍の凝乳酵素が必要で、固まりはするものの、俗に言う、Caillé mou(カイエ ムー:柔らかすぎるカイエ)になり、水切れが極めて悪いそうだ。水切れが悪いということは、とりもなおさず、熟成はうまくいかない。

カイエ ムーというのは、水分を多く含むので柔らかい。そして、その水分がカイエと結びついていて、なかなか外に出ていかないのである。
だから、カイエ ムーであるということは、脱水に時間がかかる。

また、抗菌物質に富んでいるために、酸凝固は、うまく作用しないそうである。

この中で、注目すべきは、

  • カゼインのバランス
  • ミセル ド カゼインの大きさが牛の2倍で、脂肪球と結びついている
というくだりである。

ヤギ乳のミセル ド カゼインは大きく、脂肪球もラクダほどではないが、小さい。
しかし、カゼインκは、牛乳より多いくらいである。
ヤギ乳はちゃんと固まるのに、ラクダ乳が固まらないのは、カゼインのバランスとミセル ド カゼインが脂肪球と結びついているからだろう。

筆者も試作品を作る時、ホモ牛乳を使っていたが、常にカイエは柔らかく、水切れが良くなかった。脂肪が多いとカイエは柔らかくなり、水切れが悪いのが一般的だが、脂肪分が少なめでも、脂肪球が小さく、しかもミセル ド カゼインに結びついているとなると、かなり固まりにくく、水切れも悪いだろう。

製造風景
http://www.fao.org/Newsroom/fr/news/2006/1000275/index.html

ラクダのチーズ
http://mcommemauritanie.blogspot.jp/2011/08/f-comme-fromage-de-chamelle.html


ここで、二人の救世主が現れる。
フランスのナンシーにあるENSIAAのRamet氏とスイスのチューリッヒ、Ecole polytechniqueのFarah氏である。

Ramet 氏は、幾つもの試作品を作り、原乳の処理、凝固の導き方、脱水と熟成の方法を改良した。
それでは、どのように改良したのだろうか?

1. 原乳の調整

基本的に低温殺菌処理か加熱処理(Thermisé:テルミゼ)をおこない、固形分を増やすために、粉乳や濃縮した他の乳(牛、羊など)を加える。また、リン酸カルシウムと塩化カルシウムに関する塩類のバランスを整える。

2. 凝固のさせ方

乳酸菌によって、pHをうまく調整し、凝乳酵素(牛のペプシン、プレジュール、微生物酵素)の濃度を上げ、凝固温度を上げる。

3. 脱水の方法

凝固時の温度を上げる。

4. 熟成方法

カゼインの親水性が少なく、脂肪分も少なめなので、乾燥工程でダメージがあると考え、それを予測する。

と、こうである。
なかなか大変であるな。
また、現在では、凝乳酵素もラクダ乳に最適なものが見つかった。
Camifloc N.D.というのだそうだ。

このような技術を駆使して、モーリタニアのメーカーが、白カビのカマンベールのような商品を作っている。
Tiviskiというメーカーの、"Caravane"というチーズである。

ラクダチーズ
http://omarinspore.wix.com/tiviski#!__francais/produits/vstc7=caravane
「Caravane:
世界で唯一の、ラクダ乳から作るチーズ。ソフトタイプの白カビチーズの製法で作っている。美味しく、軽く、他に類を見ない。脂肪含有量:季節によるが、平均して22%」
Caravaneの中身
http://le-secret-du-sahara.over-blog.com/article-comment-booster-notre-systeme-immunitaire-inne-par-le-fromage-de-chamelle-117432681.html

筆者は、この資料を読んで、いまの技術はすごいなあと思った。
本来なら、飲料乳にしかならないラクダ乳をチーズにしてしまうのだから。
ラクダの数は多いそうだから、原乳の確保は難しくなさそうだが、技術が大変だから、量産できるのだろうか?

また、このチーズは、値段が高いとも聞いている。

筆者は牛乳のチーズを作っていても、この初めての夏、うまくいかないこともある。
もともと作るのが大変なラクダチーズ、そんなに頑張らなくても・・・と思うのは、筆者だけなのだろうか?

2015年4月3日金曜日

チーズの製造方法:基本編 乳脂肪

確定申告を終えたら、このブログを書けると思いきや、3月は、畜産センターのチーズ作り講座、商工会議所の公演などで忙しく、全然書けなかった。
おかげさまで、チーズ工房も少しづつ安定してきているようである。
媒体に載ったら、お昼を食べるのが3時になった日もあるが、うれしい悲鳴だ。

忙しいのだが、4月になって、なんとか落ち着いてきたので、このブログも月2回くらいなら書けそうだ(と思っている)。
書きたいことはいろいろあるのだが、テーマが分散するので、どうまとめていくかが課題である。
いずれは、チーズの製造本として、まとめたいと思っている。

前置きはさておき、乳脂肪である。

乳中の脂肪は、球状で、水分中にプカプカ浮いていると思っていい。
これを「脂肪球:le globule gras 」といい、乳は、脂肪球の「乳濁液」なのである。

ややこしい言い方になったが、ドレッシングをイメージしていただくとわかりやすい。
油分と水分が分離しているドレッシングを振って、中身が混ざると混濁する。
あれですな。
脂肪球は、乳中の水分の中で安定しているので分離せずに混ざったままになるが。

脂肪球の構造は、というと、常温で、中央に液状のトリグリセリドがあり、それを固形のトリグリセリドが包んでいる。
トリグリセリドについては、Wikiだがこちらを参照していただきたい。
http://ja.wikipedia.org/wiki/トリアシルグリセロール
表面に膜があり、膜の外側の部分は、タンパク質、ミネラル、水でできていて、内側の部分に、リン脂質がある。(図1参照)

図1:牛乳の脂肪球の構造
牛乳の脂肪球は、1〜5nm(最高で22nmくらい)で、ばらつきがある。
そして、大きいのが特徴だ。
表1を見ていただきたい。

表1:脂肪球の大きさ 
脂肪球の大きさは、動物によって、かなり変わる。
先ほど、脂肪球は乳中で安定していると書いたが、牛乳は大きい脂肪球が浮いてくる。
ホモジナイズすると、浮いてこないのは、脂肪球が小さくなるからだ。
山羊乳の脂肪球は、小さいので一晩静置しても浮いてこない。
これは、チーズを作るときに楽ですな。

筆者は、現在牛乳を使っているが、一晩おくと、かなりの脂肪が浮いてくる。
そのまま使うとかなりMGが高くなるので、エクレメ(écrémé:脱脂)しているが、
ちょっとめんどくさい。

羊の脂肪球の大きさを調べてみたのだが、見つからなかったので載せていない。
しかし、文献によると、羊も脂肪球が小さいので、浮かないということである

面白いのは、ラクダ。
かなり脂肪球が小さいので、消化にいいらしい。

余談になるが、ヤギ乳は、脂肪球が小さくて(3nm以下)、ミセル・ド・カゼインが大きいのである。

タンパク質の変化の幅は小さいが、脂肪分はいろいろな原因でかなり変化する。
牛の場合、脂肪分はだいたい3,5〜4,5%だが、以下の状況で変わってくる。

  1. 牛の種類
  2. 泌乳時期
  3. 搾乳の途中
  4. 季節

1. の牛の種類だが、図2を見ていただきたい。

図2:牛の種類による乳生産量と平均的乳成分
http://www.dairyinfo.gc.ca/index_f.php?s1=dff-fcil&s2=mrr-pcle&s3=mpb-plr より
カナダの資料だが、2013年のものである。
平均して、ホルスタインは3,84%、ジャージーは4,95%、ブラウンスイスは4,17%の乳脂肪分である。
これを見ても、牛の種類によってかなり違うことがわかる。

2. の泌乳時期による変化だが、簡単に言うと、出産直後と涸乳前は固形分が多い。
図3 を見ていただきたい。

図3:泌乳期の乳量とタンパク質、脂肪量の変化
(注 上段のグラフは、乳量、下段の実線は脂肪含有量、点線はタンパク質含有量、下の数字は、週を表している。グラフ真ん中の0の線は、平均値を示している。https://hal.inria.fr/hal-00895941/document )
要するに、子を産んだ直後と乳分泌が終了する直前は、乳量は減るが、濃い牛乳であり、20〜32週目は、乳量は増えるが、水分を多く含んだ、水っぽい牛乳になるということなのだ。

3. の搾乳の途中というのは、搾乳している間も変化しているという意味である。

4. の季節では、ヤギ乳の資料が手に入った。
図4を見ていただきたい。

図4:季節によるヤギ乳組成の変化
(注 黄色の線は、脂肪量、赤い線は、蛋白質量、黒い線は、総乳量。最下段は、1月から11月までを表す)
http://public.terredeschevres.fr/1_PRINCIPAL/1_3_1_lait/2_evo_compo_lait.html
ヤギの資料なので、乳量は、1〜3月が多くなっているが、蛋白質量、脂肪量ともに、乳量が増えると減少しているのが見て取れる。
また、夏は、乳量も減り、蛋白質量、脂肪量ともに少ない。

5. の餌であるが、これはまた色々な情報があり、一概には言えないが、トウモロコシやコルザ(菜種)などを与えると、脂肪量が増えると聞いている。
餌による乳固形分の研究は、盛んだ。

お次は、乳脂肪の成分。

大雑把に言うと、乳中の脂肪は、98,5%がトリグリセリド、1%がリン脂質、1%がコレステロール、トコフェル(ヴィタミンEの本体をなす物質)、脂溶性ヴィタミンである。
トリグリセリドは、脂肪酸(酸)とグリセリン(アルコール)がエステル結合したものだが、乳中に含まれる脂肪酸の種類はいろいろある。表2と表3をご覧いただきたい。

表2:牛乳中の主な脂肪酸
(Initiation à la technologie fromagèreより)

表3:動物別脂肪酸含有量(g/ 総脂肪量100g)
(Initiation à la technologie fromagèreより)
ヤギ乳、羊乳には、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸が牛乳に比べて多い。
この脂肪酸が、ヤギや羊の乳や肉の特有の匂いの元だと言われている。
特にヤギ乳の特有のにおいは、4-エチルオクタン酸(総脂肪中 13mg/g)と4-メチルオクタン酸(総脂肪中 80mg/g)が原因と言われている。
(カプリル酸はオクタン酸の慣用名)
雄ヤギの特異臭の主要構成成分と言われているのだから、臭いわけだ(雄ヤギは、猛烈に臭いのだ)。

また、乳脂肪は、チーズにも関係の深い物質である。
チーズの口当たりや、においは、脂肪やその分解物によるところが多い。
近頃、脂肪分の少ない、あるいは脂肪分ゼロのチーズがあるが、美味しさの点でなかなか難しいところだ。

フランスのギオトー社は、パヴェ・ダフィノアのレジェ、すなわち低脂肪のチーズを出している。他にもたくさんの低脂肪チーズがあると思うが、フランスではよく見かけたチーズだ。
普通のパヴェの脂肪分が100g 中 20g なのに対して、100g 中 9g なので、半分以下である。
ただ、味となると筆者は???だった。

パヴェ・ダフィノア レジェ
http://www.pavedaffinois.com/pave-daffinois-leger-libre-service/
パヴェ・ダフィノア オリジナル
http://www.pavedaffinois.com/lait-de-vache/

脂肪というのは、食品を美味しくさせる作用があるようだ。
チーズに関して言えば、ヨーロッパでは、健康志向で、低脂肪のものも好まれるようだが、日本では高脂肪のものが人気である。

例えば、クリームチーズ。
フレッシュチーズといえば、クリームチーズを思い浮かべる方が多いだろうが、よく見かける、クラフト社のフィラデルフィアクリームチーズは、100g中の脂肪分が、31,1gである。(http://www.morinagamilk.co.jp/products/cheese/philly/280.html
カマンベールのようなソフトタイプが、100g中約20gであることを考えると、結構高い。

ちなみに、MGというと、チーズ100g中の脂肪分(脂質といったほうがいい)、固形分中脂肪(G/S)というと、固形分中の脂質の%だから、間違えないように。

タンパク質もチーズにとって重要な要素であるが、脂肪も重要な要素の一つだ。
チーズのウマミは、タンパク質に軍配があがると思うが、風味という点では、脂肪に軍配があがるだろう。

今回は、かなり能書きになったので、わかりにくいかもしれない。
簡単に説明しようと思ったが、いろいろ書いているうちに、難しくなってしまった。
お許し願いたい。

次回は、何を書こうかな?
今月末までに、何かひとつ書こうと思っている。

2015年1月4日日曜日

2015年の始まり:工房、フロマージュ・ドーメ(Fromage d'Omé)とチーズ塾

あけましておめでとうございます。
本年も、チーズ A to Z をよろしくお願いいたします。

ドーメからもおめでとう!

さて、2015年が始まった。
工房を稼働させてから、3ヶ月目に入り、なんとかうまく回っているようだ。
そこで、2014年を少し振り返ってみると、こんな感じである。

11月中は、カイエとの格闘。
試作品を作っていた時使用したのは、市販のホモタイプの低温殺菌牛乳だった。
タンクローリーで運んでもらう無殺菌の搾りたて牛乳を原料にすると、試作品でうまくいったことが通用しない。
差が大きすぎるのだ。

まず、pHが違う。
市販の牛乳は、絞ってから時間が経っているし、流通時の管理もわからない。
ローリーで運んでくる牛乳は、pHが高いが、市販の牛乳はやや低い。
だから、逆に少し戸惑った感がある。

次に、ノンホモなので、écrémé(脱脂)しないと、MGが高くなりすぎる。
市販の牛乳は、ホモ化してあるので、そのまま使うしかないが、工房で使っている牛乳は、脱脂することができる。
一番初めに脱脂しないで作ってみたが、やはりFromage blancの口当たりが良くない。
現在は、少し脱脂することで落ち着いている。

型の中で反転。

培養したLevain(チーズ種)も全然違う。
試作品の時は、低温殺菌牛乳になるべくフレッシュに近いチーズを混ぜて作っていたのだが、無殺菌の原乳を培養して作るものは、においも違うし、状態も違う。
活動状態もやや違っていたが、やっと落ち着いてきた。

違うことだらけの中で、なんとかうまくカイエを作れるようになったのが、11月末くらい。現在は、なんとか、いつも同じようなカイエができるようになった。

カイエのpHがいいと、こんな風に、ひび割れができる。

カイエにかかりきりになったせいで、11月末から苦労したのが、熟成。
Geoが生えると、あっという間にドロドロになってしまうことが多かった。
これは、試作品の時もあったのだが、なんとも悲しい。
せっかくうまくいきそうで、期待していると、翌日にはドロドロ・・・
なんてことがあり、試作品を作っていた時の方法を考え直してみた。

筆者の工房には、乳酸菌が住みつき始めたらしいが、筆者に似て、過激。
おそらく morge の中にいる熟成菌も強いのだろう。
試作品の時は、においもあまり強くなかったのだが、今の morge は、かなりにおう。
味噌のような風味も、工房のドーメの方が強い。

熟成庫。左はmorgeしていないもの。

morgeしたドーメ。

アップ!

試作品の時は、かなり頻繁に拭いていたが、これを少し変更。
また、morgeで拭くときに、試作品の時は刷毛を使っていたが、工房では手袋をした手で、文字通り、洗っていた。
それを刷毛に戻した。

湿度や温度も、考え直してみた。
チーズの量、熟成庫の広さも考え直した。
ドーメというチーズを、どんなチーズにしたいのかも、考え直した。

やっと、今、うまく回り出したところで、ホッとしている。

しかし、ドーメというチーズは、筆者そっくりである。
  • 個性的。変わり者。
チーズのくせに、味噌みたいな風味を持っていて、この間、柿の種と一緒に食べたら美味しかった・・・
  • 納得がいかないと、いうことを聞かない。
熟成方法がまずいと、すぐドロドロになったりする。
悔しい・・・

しかし、日本のチーズ、という感じになってきて、嬉しい。
日本酒には、ぴったり。
ワインだと、白のほうがいいかもしれない。
クラッカーより、お煎餅のほうが合うことも発見したから、今度はこれで日本酒かな。

Fromage d'Omé。真ん中が少しハゲている・・・

切ったところ。この子は、バランスが良く、美味しかった。

チーズ塾は、このドーメの作り方をベースにした講座である。
1月28日(木)の13:30から、2月1日(日)の11:30までとなっている。
5日間にしたのは、ラクティック・ドミノン( lactique dominant)の製法は、時間がかかるからだ。

概要を載せておこうか。

1月28日(水)     13:30~16:00 講義
·          乳成分について
·          凝固の違い
·          チーズの種(Levain)について
              
                                16:00~17:00 
·          ラクティック・ドミノンチーズの試食会

1月29日(木)     9:00~11:00  実習
·          凝乳酵素の投入(解説)

                                13:00~17:00 講義
·          ラクティック・ドミノン製法のダイヤグラムの説明
·          いろいろなラクティック・ドミノンチーズ

1月30日(金)     9:00~11:30 実習
·          ルーシュを使った型入れ
(フロマージュ・ブランとサン・マルスランタイプを作ります)

                                13:00~17:00 講義
·          ラクティック・ドミノン製法とその他の製法
·          反転(実習)

1月31日(土)     9:00~11:30 実習
·          型だし、塩つけ

                                13:00〜17:00 講義
·          塩の役割
·          熟成
·          反転(実習)
2月1日(日)         9:00〜11:30

·          試食会


費用は、テキスト代、材料費込みで、5日間で¥48600である。
申し込みは、Facebookのチーズ A to Z、フロマージュ・デュ・テロワールの問い合わせメール(http://www.fromagesduterroir.jp)、あるいは、電話でどうぞ。
気軽に問い合わせてくださって、結構である。

なんだか、宣伝になってしまったが、筆者は、多くの人にチーズを知ってもらいたいと思っている。また、チーズを作りたいという人の力になりたいと思っている。
今回は、第一回目。
二回目は、チーズ講座にする予定だ。
三回目は、またチーズ作り講座かな〜

2014年12月10日水曜日

チーズの製造方法:基本編 乳清たんぱく(Protéines solubles)

乳成分を分類するとき、乳たんぱくは、窒素化合物の範疇に入る。
窒素化合物のことを、MAT(Matières Azotées Totales)といい、その中には、蛋白質以外の窒素化合物も入っている。
蛋白質は、以前話したように、MAP(Matières Azotées Protéiques)という。

タンパク質以外の窒素化合物の主なものは、尿素。
約50%を占めている。
しかし、このタンパク質以外の窒素化合物(NPN:Non Protein Nitrogene 英語、MAnP:Matières Azotées non Protéiques フランス語)は、あまりチーズの製造には関係ないので、省く。

さて、乳たんぱくは、カゼインと乳清たんぱくに分けることができる。
カゼインの話はすでにしたので、今回の主題は、乳清たんぱく。

まず、乳清たんぱくとカゼインの違いは、というと、表1をご覧いただきたい。

表1:カゼインと乳清たんぱくの違い

大雑把に言うと、動物の血液に由来する(全てではないが)純粋蛋白質であり、熱に弱く、タンパク質分解酵素で分解できない蛋白質ということになる。
そして、水溶性なので、チーズを作るときには、乳清と一緒にカイエから出て行ってしまう。

では、その実態は?

表2を見ていただこう。

表2

前々回(だったかな?)に載せた表だが、乳清たんぱくのこともよくわかるので、再度掲載。ただ、訂正が2つ。
乳清たんぱくの部分で、牛のβ-ラクトグロブリンとα-ラクトアルブミンの比率が間違っていたので、訂正しておく。また、水溶性アルブミンを血清アルブミンと直すことにする。

まず、β-ラクトグロブリン。

乳清たんぱくの中の大部分を占める。
だいたい50%ほど。
一番の特徴は、人乳には含まれないということである。
ということは、アレルギー源になりやすいということだ。

また、熱変化に弱く、75℃で、熱変性をする。
筆者の持っている資料では、78℃でほぼ100%変質してしまう。

変質するとどうなるか?
まず、粘度を増す。
だから、超高温殺菌(UHT)の牛乳は、舌にねばり付く感覚がある。
そして、チーズ製造にとって困るのは、熱変性すると、β-Lg-CN-κ(β-ラクトグロブリンとカゼインκの複合物)を作り、凝固を妨げるのである。
その結果、凝固が遅れたり、水切れが悪くなったりするのだ。

殺菌乳製のチーズを作るとき、筆者は63℃30分殺菌(低温殺菌:LTLT:Low Temperature Long Time pasteurization)にしているが、チーズによっては、72℃15秒(高温殺菌:HTST:High Temperature Short Time methode sterilization)のこともある。
β-ラクトグロブリンのことを考えたら、63℃30分のほうがいいと思う。
いま、これを書いていて気がついたが、pasteurisationは、「殺菌」だが、stérilisationは、殺菌というより、むしろ「滅菌」とか「消毒」という意味になる。
日本語は、曖昧なものだ。

次に、α-ラクトアルブミン。

人乳では、この乳清たんぱくがほとんどを占めるが、反芻動物では、約20%である。
カルシウムイオンを含んでいるため、熱には割に強く、95℃くらいまで平気である。

血清アルブミン。

反芻動物では、乳清たんぱくの約5%を占める。
血液中で、脂肪酸を運ぶ役目をするとも言われている。

免疫グロブリン。

これは、免疫に関与するタンパク質で、約11%を占める。
初乳では、量が増える。

表にはないが、ラクトフェリンも入っている。
ラクトフェリンは、抗菌活性を持つことで知られているが、免疫グロブリンと同様、初乳の中に多くなる。

最後に、プロテオーズ-ペプトン。

蛋白質といっても良いのだが、プロテアーズで分解されたペプチドでもある。
特徴は、pH4,6で沈殿しないことと、熱変性しにくいこと。
カゼインは、pH4,6で沈殿し、他の乳清たんぱくは、熱変性しやすいのだから、少し変わり種である。

以上のように、いろいろな蛋白質が乳清とともにチーズから出て行ってしまうのだが、これを利用する研究もいろいろあるようだ。


面白い図を見つけたので、日本語にしてみた(図1)。

図1:乳製品製造図
全乳からチーズへの道と、クリームへの道である。

脱脂乳、乳清ともに、水溶性タンパク質と乳糖が入っているのがわかる。
脱脂乳は、そのまま粉乳などにして利用され、乳清はリコッタやブロッチュ、ブルースなどのホエーチーズを作るのに使われてきた。
現在は、技術が発達して、乳清たんぱくをウルトラフィルトラシオンで分離して使うことができるようになり、いろいろな用途で使われているようだ。

スイスの文献で読んだのだが、チーズ製造時に、水溶性蛋白質を添加することもあるそうだ。
ラクレットに乳清蛋白質を加えることによって、食感を柔らかくし、弾力性を持たせる、という文献だったが、溶け具合も向上するらしい。
また、フロマージュ・ブランは、殺菌温度を90℃まで上げて、水溶性タンパク質を変性させ、歩留まりを多くすることは、よく行われている。
また何か、文献を見つけたら、紹介しよう。

乳清というのは、利用価値があるのに、なかなか使い方が厄介だ。

乳清には、sérum doux(セロム・ドゥー)とsérum acide(セロム・アシッド)という、2種類がある。sérum douxはPMのミックスやPPから出るもので、sérum acideは、PMのラクティック・ドミノンから出てくるものである。

ドゥーは、ブルースなど、ホエーチーズにできるし、乳清飲料にもできるのだが、アシッドの方は、難しい。
筆者もブルースができないものかと乳清を煮てみたが、蛋白質のふわふわは浮いてこなかった。
今、何に利用できるのか、文献を探しているところだが、まだ見つかっていない。

一方、工房では、11月の半ば頃まで、カイエと格闘していたが、現在は、チーズの熟成に取り組んでいる。
MOFの ル ムニエ氏が言っていた言葉を思い出す。

「私がチーズを熟成させているのではなく、チーズが熟成するのだ。」

うちのは、なかなかやんちゃな息子どもである。
ま、いいか。

次回は、乳脂肪と乳糖について書こう。
なかなか時間が取れなくて、11月は、一回しか書いてない!
週一、せめて二週に一回書きたい・・・

2014年11月16日日曜日

チーズ工房の只中で

工房を開設してから、3週間たった。
なんと、前回のブログから、ゆうに1ヶ月経ってしまっている。
読んでくださっている方々も、いったいどうなっているの?と思ってらっしゃる(?)と考えて、再度工房がテーマである。

乳清タンパクは、次回、必ず書くことにする。
(大丈夫かな???)

初めの1週間は、機械と乳酸菌との格闘。
フランスで作っていたのとほぼ同じ製造方法だが、原乳が違い、1日の配乳回数が違い、殺菌工程が入るという差。
一応試作品製造の段階で、原乳の差(牛とヤギ)はわかっていたので、あとは、東京の牛乳がどんなものかで対応すれば良いと考えたのだが・・・

殺菌で手こずった。

やったことがなく、機械も初めて使うとなると、試行錯誤もいいとこである。
1回目は、かなり時間がかかったが、なんとかいい状態のカイエができた。
しかし、その後が問題だったのである。

記念すべき第1作目。カイエの状態もよし、だったのに・・・
左側の袋が、水切り用の袋。

フロマージュ・ブロンを作るのに、専用の袋があるのだが、これに何かの臭いが付いていて、せっかく作ったF.Bについてしまったのである。
化学物質的な臭いで、F.B全滅。結局廃棄・・・
幸い、フロマージュ・ドーメは無事。

無事でした。

2回目の商品は、カイエの状態に納得がいかない。
乳酸菌の状態が良くなかったのか?
できた商品は、満足しないが、まずまず。
(現在熟成中だが、思ったより状態が良い。うまくいきそうだ)

3回目が悲劇。
乳酸菌投入後、pHが下がりすぎ、一応凝乳酵素を入れてみたが、全滅。
これには、泣きましたね。
原因は、殺菌の後に牛乳をよく冷やさなかったから。
乳酸菌が増えすぎて、pHが下がりすぎたせいだ。

幸い、大生機設のおかげで改良ができて、うまく冷えるようになった。
そのあとは、うまくいっている。
現在は、なんとか時間割ができ、自由になる時間も取れそうだ。

筆者のチーズは、lactique dominant(ラクティック・ドミノン:乳酸菌優位法)なので、pHを下げるのに時間がかかる。
Brie de Melunは乳酸発酵に18時間かけるが、筆者のチーズも同じように18〜20時間必要だ。このところ、朝工房に行くと、室温が14℃なので、どうすればいいのか、考え中。(青梅は寒い!)
エアコンで室温を18℃まで上げることは可能だが、pHが下がりすぎると怖いので、できない。3回目の失敗は、そのせいだからだ。
下がらない場合は、時間がかかるが、少し温めて下げるようにしている。

乳酸菌は、こちらの思うように働かないのである。
しかし、乳酸菌の言葉が少しずつ聞こえるようになってきた(ような気がする)。

自然に、Geoが生えてきた。
まだpHが上がりきっていない。リネンスがくるまで時間がかかりそう。

原乳である、東京の牛乳は、素晴らしい。
脂肪分が高すぎるきらいはあるが、チーズを作るのに、まったく遜色がない。
筆者は、少しécrémé(エクレメ:脱脂)している。
というのは、そのままだと、熟成に影響が出るし、味がくどくなる。
1回目に作ったF.Bは、脂肪のざらつき感があったが、écréméしてから口当たりが良くなった。

フロマージュ・ブラン 500gと150g。
両方ともナチュール(プレーン)。カンパーニュタイプなので、つぶつぶがある。

熟成庫の容量があまり無いので、ちょっと頭がいたい。
11月7日、8日と、来日していたMOFのロドルフ・ル ムニエ氏の通訳の仕事が入り、その週は製造を1回にして調整したのだが、うまくいかない。
少し違うタイプも作ってみようとして、熟成庫がいっぱいになりつつあるのも事実。
なんとかするしかない。

ここで、一つお知らせ。

見学希望の方へ。
Porte Ouverteという、一般公開を考えていたのだが、毎日何かしら作業があるので、無理そうである。そこで、工房のチーズ販売時間である、水、金、日の午後1時〜5時なら、予約していただければ、見学できるようにしたい。
(申し訳ないが、食品製造なので、お子様は不可)
予約は、このブログでも、Facebookページのメッセージでも、HPのメッセージでも構わない。工房に電話でもいい。

表札。

何人かの方から問い合わせがあったが、こちらが忙しくてご希望に添えなかった。
なんとか、作業の時間割ができたので、見学解禁である。
また、製造の講習は、来年になってから行う予定である。
乞うご期待!

2014年10月13日月曜日

フロマージュ・デュ・テロワール(Fromages du Terroir)始動!

10月10日に、保健所の営業許可がおりた。
正式の許可証は、16日におりるので、20日から営業する事にした。
筆者の屋号は、「フロマージュ・デュ・テロワール(Fromages du Terroir)」。
いま、ホームページも製作中である(手間取っている・・・)。

場所は、青梅市になる。
詳しい連絡先は、ホームページとFromages du TerroirのFacebook(これから作る予定)で見ていただきたい。

筆者が目指しているのは、「青梅」というTerroir(テロワール)に根ざした商品である。
そこで、今度作るチーズは、青梅の小澤酒造株式会社のお酒を使った、ウォッシュタイプとフロマージュ・ブランのプレーン。
しかし、筆者のうちの近所に「ベリーコテージ」という、ブルーベリー、ラズベリー等を作っている農園がある事に気がついた。

ベリーコテージ。ジャムやケーキ、ジュースも扱っている。
これからキウイフルーツの摘み取りがあるそうだ。
季節外れだけれど、フランボアーズ発見!

そこでお話を伺ったら、ドライブルーベリーを作っていると言うので、それを使ったチーズデザートも作る事にした。
ただ、ドライブルーベリーは量が少なく、今は季節ではないので、受注生産になる。
来年からは、そこの製品を使ったチーズデザートをオーナーと企画しているところだ。

写真があまり良くないが、ドライブルーベリー入りのチーズデザート。

ドライブルーベリー入りのチーズデザートは、こんな風に販売する。

前回と今回は、筆者の私事を書いてしまったので、このブログの本質から外れてしまって、申し訳ない。
工房見学を希望している方もいらっしゃるようなので、Port Ouverte、一般公開も考えているのだが、今のところ日時は未定である。
11月のどこかの土曜日かな、とは思っているが・・・

また、チーズ講習は、来年からと考えている。
今年は、ちと無理である・・・
テキスト作りや、パワーポイントも必要だしね。
もちろん、実習もあり。
どんな風にしようか、何のチーズにしようか、楽しんで悩んでいる。

また、次回から、チーズのことについて、追っていく。
カゼインとミネラルまで、なんとか書いてきたので、次回は la protéine sérique(ホエー蛋白)にしようか。

2014年10月4日土曜日

もう少ししたら、チーズを作り始めます!

先週は、もうホントに、バッタバタだった。
29日に、キューヴの搬入、酪農組合との打ち合わせ。
その後は、工房に搬入される機材の受け取りで、工房と自宅を行ったり来たり。
頭の中がそっちでいっぱいで、とてもブログを書ける状態ではなかった。

特に、今綴っているのが小難しい事なので、確認作業をしないと、とても公開できないシロモノ。
いま、フランス語を読むと、頭が爆発しそうで、ちょっと避けてましたな。

ということで。

工房の中を少し紹介。

まず、キューヴ。
やっと来ました、というところ。
静岡にある、大生機設という会社にお願いして、作ってもらった。
100Lまで処理でき、二重構造で、 温水による殺菌も出来る。

100L入ります。無理すれば、110L。

最初は、ラクティック・ドミノンのチーズ生産なので、トロンシュ・カイエ(le tanche caillé:カードナイフ)はつけていない。
いずれ、PPNCも作りたいので、手に入れるつもりだが、まだ早い。

シャリィヨー。熟成庫に置いてある。

次に、シャリィヨー(le chariot)。
この棚みたいな部分に、グリーユ(la grille)という、金網をおさめる。
日本だと、足付きの金網を使う人が多いようで、それだと割とすぐ手に入るようだ。
筆者は、フランスでこのタイプを使っていたので、輸入してもらった。
輸入してくれたのは、小野化工。

下に、キャスターがついているので、移動がらくだし、グリーユを追加すれば、結構な量のチーズを処理できる。
ちなみに、シャリィヨーがあるのは、熟成庫。
これは、内装屋さんが知恵を絞ってくれて、中の壁は、キッチンパネルを貼った。

水滴がついても、すぐに拭けるし、カビも生えにくい。
チーズ工房の内装なんぞ初めてなのに、いろいろアイデアを出してくれた。
施行は、宮坂総合設備。
本当に、お世話になりました(もう少し、追加でお世話になります・・・)。

次は、作業台。
日本だと、カードパレットと言うみたいだが、ここで型詰め等をする。
乳清の排出が出来る作業台が見つからなかったので、これも特注品。
製作は、キューヴと同じ、大生機設。

上にごちゃごちゃ物が乗っているが(キューヴ用の部品)、ここで型入れする。

そのほかは、割愛する。
大きな物は、このくらい。
あ、それから、工房の中は、外から見えるようにした。
明かり取りのためと、ちょっと覗けた方が面白かろうと、はめ殺しの窓がついている。

工房の中から、外が見える。逆もまた真なり・・・

まだまだ細かい物の取り付けがすんでいない。
看板も、まだ無い・・・