2014年2月28日金曜日

AOPのチーズ:牛編 ルブロション

サヴォアのチーズ、ルブロションには、有名な逸話がある。
昔、税金を牛乳で納めていた頃、検査官がいる時には牛乳を全部搾らず、彼らが帰ってから残りを絞ったという話だ。

このチーズの名前は、サヴォア方言の reblochi (再び行う、再び牛の乳を搾る、という意味で、解体すると re + blossi あるいは blochi 。blossi あるいは blochi はつまむという意味)に由来するという。(小学館 ロベール 仏和大辞典より)
二回目に搾った牛乳は、濃いので、おいしいチーズができたという話である。
ルブロション フェルミエ。

10年ほど前のチーズの本だと、ウォッシュに分類されている事もあるが、実際は非加熱圧搾タイプである。
筆者もウォッシュ、すなわちソフトタイプ(Pâte Molle:パット・モル)と思っていたし、実際に作っているところで聞いてみたら、パット・モルだよ、という返事が返ってきた。しかし、ルブロションのCDC(AOCの規則)を読むと、非加熱圧搾タイプだと明記してある。ちゃんとCDCを読んでおかないと、間違えるものですな。

筆者はルブロションを作っている農家には行った事がないが、ポリニーの学校の見学で、サヴォアのチーズの学校に行った。
そこでは、アボンダンス、ルブロション、トム・ド・サヴォアなどを作っていた。
写真はそのときのものである。
学校で作っているので、農家製ではない。だから、カゼインマークは赤である。
(農家製は、緑)
サヴォアの学校で見たルブロション。カゼインマークは赤。

ルブロションの型。上にのっているのが重し。これで圧搾するのだ。

このチーズは、非加熱圧搾なのに、柔らかく、皮も食べられる。
サン・ネクテールも柔らかく熟成する事もあるが、皮は硬い。
また、ルブロションは、牛乳のやさしい匂いがするのも特徴だ。
食感も、熟成の若いものはもちもちして弾力があるが、熟成が進むと、生地が流れるようになって、匂いも強くなる。これもまた、美味しいのだが、臭いの苦手な人には、向かないか・・・

そのまま食べるのなら、サヴォアの白ワインなどが合うのだが、手に入りにくかったら、シャルドネがいい。しかも、ブルゴーニュの繊細なシャルドネではなくて、ワイルドなタイプがいい。
チリとか、アルゼンチンなどがいいかもしれない。

モルビエのところで書いた、タルティ・フレットというジャガイモのグラタンは、これを使うのが本式。
日本だと、料理に使うには、値段が高いので、筆者は作った事がないが、サヴォアで食べたものは絶品だった。

山のチーズは、もともと冬の間の食料として作っているものが多い。
だから大きかったり、熟成期間が長かったりする。
そして、料理にも使えるものが多いのだ。
ルブロションは柔らかくて、小さいチーズだが、そのまま食べても、料理に使ってもおいしいチーズである。

2014年2月25日火曜日

チーズを作る:本物のチーズ?

昨日、週刊現代を買った。
「スクープレポート あなたは何も知らずに食べますか」に引かれて購入したのである。
この記事には、「見た目は『本物』、中身は『別もの』がスーパーにはいっぱい並んでいた」というサブタイトルがついている。その記事の中の「牛乳」を読むと、さもありなんと感じた。

この記事の中の表で、牛乳の項目を見ると、「加工乳」の説明がしてある。
いろいろ添加してるのなら、「牛乳」と呼べないのだから記述に問題はないが、中身が牛乳とはだいぶ違うものになっている可能性が高い。

脱脂粉乳を水で溶かして加える。
油分を補うために油脂を加える。この記事中ではバターを油脂として加えるとなっているが、安い植物性油脂の可能性も大きい(根拠は後で述べる)。
加工乳と表示すれば、何でもありのようで、恐ろしい。

「本物のチーズ?」という見出しを付けたのは、チーズの業界でも同じようなことが起こっているからである。
筆者はフランスで、工場製のチーズの作り方も学んだ。
農家製のチーズだけでは、知識不足だと考えたからである。
その時に、こういう事も学んだのである。

フランスでは、牛乳が余ると、脱脂粉乳とバターに加工して保存する。
いい考えだと思うが、問題は、脱脂粉乳である。
余り気味だそうで、それをどうするかという問題が出た時に、
そう、勘のいい方は、解っただろう。
もう一度これを使ってチーズを作ろう、という事になったのである。

脱脂粉乳に水を加えて液体にする。
それに、安い植物性油脂、パーム油などを加えてもう一度牛乳のようなものを作り、固めてチーズ?にするのである。バターは値段が高いので使わない。パーム油脂は、安価な植物性油脂の中で、組成が一番、乳中の脂肪に近いのだそうである。
工場製のチーズで、セミハード(PPNC)などは、この手がある。

筆者が工場製チーズの講座をとっていたとき、同級生や先生など、工場製のチーズに携わっている人たちは、あまり疑問を感じていないように見えた。
それどころか、最新の技術を駆使して製品を作る事に喜びを感じているように思えた。
反対に、コンテを作る講座の同級生や先生などは、工場製のチーズに批判的だったのが印象的である。
食に関してこだわるフランスも揺れているのかなと感じたものだ。

日本に輸入する場合、どう記述しているのか解らない。
ただ、このような「チーズ?」は、おそらく業務用のチーズになっているだろうと考えられる。原乳を「生乳」とは記載できないだろうから、そのまま、「ナチュラルチーズ」と記述できないと思う。

こういう事を書くと、チーズの団体から怒られるかもしれないが、記述をきちんとすればいいのではないか?例えば、原材料を脱脂粉乳と植物性油脂、とか。
「生乳」は、使えないものな。
しかし、プロセスチーズに記載してある、原材料名の「ナチュラルチーズ」はくせ者だ。

筆者は、知らせない、知らないというのが困りものだと思う。
知っていて選ぶのなら、納得して買っていると考えられるが、知らなかったら、だまされたようなものだ。
週刊現代の記事を読んだら、どういうものが本物か、見定める事ができる。

こう考えてくると、食べ物に関してうさんくさい事が沢山ある。
特に加工品は、何だか解らない原材料名が多い。
信用できるのは、自分で作ったものだけになりそうだ。

今回は、少し違う切り口になったが、食べ物に関して関心があるので、こういう形になった。
筆者は農家製のチーズが一番と思っているわけではない。
工場製も、この需要を考えれば、必要だ。
しかし、原材料を明記するのは、常識と考える。
日本でどの程度、チーズに対して、前述の製造方法が用いられているのか解らない。
乳製品に対する日本の法律は、外国ほど細かくないので、法整備をし、きちんとした情報を国民に知らせてほしいものである。

2014年2月21日金曜日

チーズ料理:チーズとほうれん草のタルト

先日作ったチーズ中で、崩れてしまった2個を使って、タルトを作った。
以前、山羊のフレッシュチーズで作ったものと同じ作り方である。
実家のオーヴンを使ったので火の回りがよすぎて、表面が焦げてしまったし、タルトの皮を久しぶりに作ったので、少し固めになってしまった。
味は良かったので、成功とまではいかないが、まずまずと言ったところか。(手前味噌である)
真ん中に見えるのがフレッシュチーズ。

作り方を書いておこう。
まず、材料。23cmのパイ皿1個分。

  • 市販のパイ皮(自分で作ってもいい)
  • タマネギ    :1個
  • ほうれん草   :400gを茹でておく。
  • バター     :20g
  • ナツメグ    :少々
  • フレッシュチーズ:120g
  • 卵       :3個
  • 生クリーム   :200cc
  • グリュイエール :50g(すりおろしておく)
  • 塩、胡椒    :少々
では、作り方。

  1. タマネギを薄切りにする。
  2. タマネギをバターで炒める。
  3. しんなりしたら、茹でて4〜5cmに切ったホウレンソウを加えて炒め、ナツメグを加えてさらに炒め、塩胡椒をしてさましておく。
  4. オーヴンを220℃に予熱しておく。
  5. パイ皮をタルト型に敷き、フォークでつついて、穴をあけておく。
  6. 卵をボールに割り入れてほぐし、生クリームとグリュイエールのすりおろしを加えて混ぜ、塩胡椒する。
  7. パイ皮を敷いた型にタマネギとホウレンソウ炒めを敷きつめ、その上にフレッシュチーズを適当にちぎって置く。
  8. その上から、卵液を注いで、温めておいたオーヴンで40分焼く。
パイ皮は、市販のものが便利だが、自分で作りたい方に、簡単な方法を伝授。

  1. 薄力粉180gをふるってからボールに入れ、塩少々を加えて混ぜる。
  2. バター90gを薄力粉の上に置き、粉をまぶしながらナイフで細かく切る。(専用のスケッパーがある。製菓材料を売っているところで手に入る)
  3. バターが小豆大になったら、手ですりあわせて、さらさらの状態にする。
  4. 冷水60〜75ccを少しずつ加えてまとめる。
  5. まとまったら、丸めてポリ袋に入れ、20分ほど休ませてから使う。
筆者は水の量が少なかったようだ。
冬は乾燥していて、薄力粉が乾いていたので、硬い生地になった。
多めに作っておいて、型に敷いて冷凍しておけば、いろいろ使える。

また、フレッシュチーズだが、クリームチーズは使わずに、山羊のフレッシュなどを使うと美味しいのが出来る。
このURLを参考にするといいだろう。
http://www.chesco.co.jp/html/user_data/list/detail.php?id=75

さて、つぶれなかったチーズだが、うまく熟成している。
ジェオトリクムが生えてきて、色がピエ・ダングロワみたいになっているが、期待できそうだ。ちなみに、筆者はウォッシュタイプを作ろうとしているのである。
筆者のチーズ。まだまだ完熟への道は長い・・・

アフィネ・オ・シャブリ。こんな風になったらいいな。

サン・フェリシアン。今のところ、こんな感じになっている。

目標は、サン・フェリシアンのような、アフィネ・オ・シャブリのようなチーズである。
楽しみだな。

2014年2月17日月曜日

チーズを作る:ラクティック(Lactique dominant)実践編

家の台所でチーズを作るのは、大変だ。
理由は、まず、設備がないから、代用器具をどうするか。
次に、何を原料とするか、である。
農家で作っていた時には、設備も原料もそろっていたから、難しくない。
しかし、農場でもないここで、チーズを作るのは骨が折れた。
結論から言うと、なんとかチーズを作る事が出来て、現在熟成中である。
型から出したところ。柔らかくて、崩れそう。

まず始めに、Le levain(ルヴァン:チーズ種のこと。英語だとスターター)を作るところから始めた。無殺菌乳が手に入らないので、低温殺菌乳で代用する。
いろいろ問題があったのだが、専門的になるので、ここでは省く。
とりあえず、ルヴァンが出来たので、低温殺菌牛乳にプレジュールと一緒に加えて24時間。
なんとか、固まった。
鍋で作ったカイエ。

しかし、思ったより、かなり柔らかいカイエになった。
原乳の組成の違い(山羊乳と牛乳)とおそらく室温の違い。
22℃くらいに保ちたかったが、夜間に18℃以下に下がっていた。
もう少し時間をかければよかったのかもしれない。
ルーシュの代わりにスプーンで型入れ。

柔らかいカイエ。型詰め完了。

その後、24時間かけて脱水。
間に一回、反転作業。
うまくチーズの形になった。
反転した後。

しかしこの後が大変だった。
全部で6個出来たのだが、型から出したチーズを反転するとき、チーズを乗せる金網が不足していたので、手でやったところ、2個崩れてしまった。
残りの4個中、一つは、半分崩れてしまい、後の二つは割れてしまったので、まともなのは、たった1個。やれやれ・・・

考えて、機材をそろえたつもりでも、不足があるものですな。
次に作るときは、完璧に機材をそろえる事が出来るので、失敗は成功のもと(言い訳か?)。
使いにくかった機材を変えて、また作るつもりである。
なにせ、家族が期待しているらしい・・・

崩れてしまったチーズは、もったいないのでタルトを作るつもりである。
次回、ご紹介しようと考えている。

もし、ご家庭でチーズを作ってみたいと考えている方がいらっしゃったら、筆者に問い合わせてもらってもいいが、市販の本も2冊ほどある。
一つは「チーズ工房」株式会社平凡社 
もう一つは、「キッチンで始める本格チーズ造り」アールアイシー出版株式会社(この本は、英語の本の翻訳である)
参考になると思う。

家庭でのチーズ造りで難しいのは、温度管理だろう。
パンだって、発酵温度を調節するのは、家庭では難しい。
特に、天然酵母のパンは、夏はパン種がだれてしまって、作りにくい。

熟成は、1か月ほどかかるから、その頃お披露目できたら、と考えている。
乞うご期待?

2014年2月14日金曜日

チーズプラトー:ヴァレンタイン編

本日は、Saint Valentin、ヴァレンタインデーである。
ウチの唯一の男性は、あまりチーズが好きではないので、女性陣でチーズを楽しもうという事になった。
ワインはほぼ毎日飲んでいるので、つまみである。

この時期のチーズショップでは、ヌーシャテルというフランスのハート形のチーズを扱ったりするのだが、このチーズは見かけと違って、味が強い。
白カビでハート形、かわいらしいのだが、塩気が強く熟成が進むと辛みが出てくる。
筆者がチーズショップにいた頃、このチーズとボジョレのサン・タムール(Saint Amour)を抱き合わせで売った事がある。
若いヌーシャテルならいいと思うが、熟成が進んでいると、サン・タムールには難しい。ちなみにヌーシャテルはノルマンディー産である。
余談だが、ブルゴーニュにいた時に、ワイン農家の同僚が、自家製サン・タムールを持ってきてくれたが、美味しかった。軽いワインで、さわやかな印象だったのを覚えている。
ハート形のチーズ。残念ながら、ヌーシャテルではない。2010年サロン・ド・フロマージュにて。

チーズショップで思い出した事が一つ。
男性と女性ではチーズの好みがかなり違うのである。
男性は、臭いの強くない、固めで塩気がやや強いものが好きなようだ。
例えば、絶大な人気を誇るのがミモレット。ブルーチーズもごひいきが多い。

一方女性は、柔らかくて、塩気があまり強くないチーズを好むが、臭いは強くても平気という傾向がある。
白カビ系のカマンベールやウォッシュ系のエポワス、クリームチーズ系などが好まれるようだ。また、甘いチーズが好きな方も女性に多い。

今回のチーズプラトーは、ヴァレンタインなので、男性向けに作ってみた。
現在、チーズを製作中で、そっちに気を取られ、ヴァレンタインのチーズを買いに出かけたのが昨日。
筆者は多摩地区在住なので、なかなか色々な種類のチーズが手に入らない。
そこで、今回は、立川ルミネ内のチーズ王国ですべて購入した。
一番上が、シュロップシャー・ブルー。右下がミモレット24か月、左下がコンテ・エクストラ18か月。

ミモレット24か月熟成:以前にもご紹介した、カラスミに似ているというチーズ。今回は、24か月が手に入った。100gあたり¥1200(税込み)
ミモレット24か月。真ん中の穴は、二酸化炭素によるもの。

コンテエクストラ18か月熟成:これも以前ご紹介した、フランス人の大好きチーズ。今回は、18か月熟成。アミノ酸の結晶が見える。100gあたり¥900(税込み)
コンテ・エクストラ18か月熟成。アミノ酸の結晶が見える。

シュロップシャー・ブルー:スティルトン(イギリスを代表するブルーチーズ)に似た、イギリスのブルーチーズ。塩気もカビの味も強くなく、食べやすい。このチーズは、近年に創作されたもので、スティルトンと同じような作り方をするが、アナトーという色素で染めているので黄色い。ちなみに、ミモレットもアナトー(ロクーとも言う)で染めている。このチーズは、マーブル模様がきれいに入っている。チーズプラトーに入れるときれい。100gあたり¥930(税込み)
シュロップシャー・ブルー。臭いも強くないし、味もまろやか。食べやすいブルーチーズだ。

赤ワインにあわせようと思ったのだが、白ワイン、日本酒向きのプラトーになってしまった。赤ワインにあわせるのなら、ミモレットではなく、エポワスなどのウォッシュやオッソ・イラティなどの羊系がよくあう。ビールに合わせるなら、コンテではなくて、ゴーダ、ブルサンなどの味付きクリーム系がいいだろう。

先ほどちらっと言ったが、現在進行中のチーズ製作は、次回に紹介できそうである。とりあえず、チーズになりそうだ・・・

2014年2月11日火曜日

チーズを作る:ラクティック(Lactique dominant)

チーズの製造方法の3つの工程の前段階として、原乳の説明をしてきたが、いよいよ作り方に突入する。
3つの工程は同じだが、チーズの種類によって、細かいところが変わってくる。
そこで、今回はラクティック。
山羊チーズいろいろ。2008年サロン・ド・フロマージュにて。

以前、チーズはプレジュールと乳酸菌を使うと書いたが、乳酸菌だけ使う例外がある事を書かなかったので、ここで補足しておく。

日本で売っているクリームチーズ。
フランスではほとんど見かけないが、このチーズの作り方を確認したところ、プレジュールを使うものと使わないものがあるそうである。
プレジュールを使うと、ややしっかりした生地になるらしい。
また、カッテージチーズは、酸凝固だと思っていたら、酵素も使っているようだ。
(現代チーズ学 株式会社食品資材研究会 第2版より)

唯一酸凝固である事を確認できたのが、マスカルポーネ。
これは、フランスの学校でも酸凝固であり、酵素を使ってないと教わった。
ラベルを見ても、酵素の記述はない。
完璧に、酸凝固のチーズのようである。

さて、ラクティックのチーズには、どんなものがあるのかというと、AOPの山羊チーズは、ほとんどがそうである。
シュヴロタンがパット・プレッセ・ノン・キュイット(Pâte Pressée Non Cuite:PPNC)、バノンがパット・モル(Pâte Molle:ソフトタイプ)だが作り方がミックスで、例外となる。その他の山羊チーズもだいたいラクティックだと思っていいが、トム・ド・シェーヴルはPPNCになる。
サント・モール・ド・トゥーレーヌ。熟成中。 

バノン。栗の葉っぱに包んである。残念ながら、ラクティックではない。

牛乳のチーズだと、AOPなら、エポワス、ラングルなどがそうである。
牛乳と山羊乳はカゼインの組成が違うので、牛乳のラクティックは食感が変わる。
また、2013年12月11日に、サン・マルスランがIGPを取得している。
これもラクティックのチーズで、柔らかく熟成させる方法と固く熟成させる方法がある。
ラングル。シャンパーニュ地方のチーズ。

ラクティックの作り方は簡単だが、うまく熟成するものを作るのが難しい。
フレッシュのラクティックチーズは、すごく簡単にできる。
作り方は、ざっとこんな感じである。

  1. 原乳のpHと温度調整。
  2. 希望pHになったら、酵素を投入。
  3. 約24時間後(これはチーズによって少し変わる)に凝乳が出来る。
  4. 型入れ。脱水。
  5. 反転。
  6. 型出し。
  7. 塩付け。
  8. 熟成、あるいは、フレッシュのまま食す。

ラクティックのカイエ。 

お玉ですくった後。

お玉で型入れ。

筆者は現在、チーズを作成中だが、まだ1の段階である。
市販の殺菌乳を使っているので、なかなか希望のpHまで下がらない。
少し、時間がかかりそうである。
チーズが出来上がったら、お披露目いたしましょう。

2014年2月7日金曜日

AOPのチーズ:牛編 モルビエ

コンテと同じ地方に、モルビエというチーズがある。
コンテより小型で、5〜8Kg、非加熱圧搾タイプだ。
日本だと、チーズの専門店にあるかな、という感じで、あまり一般的ではない。
しかし、このチーズには、一風変わった特徴があるのだ。

モルビエの断面。黒い腺が見える。

チーズを切ったとき、真ん中に黒い腺が一本入っているのである。
なぜ、こんな風になるのか?というと、昔、こんな風に作っていたからだ。

モルビエの側面。黒い腺が透けて見える。





「昔々、フランスのジュラ地方では、コンテという大きなチーズを作っていました。
牛乳は、農家から町のフリュイティエールという工房に集められ、専門の職人の手によって、チーズを作っていたのです。
でも、この地方の気候は厳しくて、特に冬は農家から町の工房に牛乳を運ぶのが困難になる事も多く、せっかくの牛乳が無駄になる事もありました。そこで、農家の人々は、自分たちでチーズを作ろうと決心したのです。

ところが、彼らはチーズ作りの専門家ではありません。見よう見まねでカイエを作り、型に入れたものの、型が大きすぎ、一回では満たす事が出来ません。
そこで、朝の搾乳で作ったカイエを型に入れ、虫除けのためのススを表面に塗り、夕方の搾乳で作ったカイエを追加して一つのチーズにしていましたとさ。
どっとはらい。」

昔話風にすると、こんな感じである。
農家の人たちがチーズ作りを知らなかった事から出来た、面白いチーズである。

現在は、コーペラティヴでコンテと一緒に作っている事が多い。コンテの型を利用して、脱水まで行い、その後切り分けてモルビエの型に入れている。
真ん中の黒い腺は、カイエの塊を半分に切って、半分型に入れ、植物性の木炭の粉を塗り、残りの半分を乗せて作っている。
コンテとモルビエを作るキューヴ。銅製で8の字になっている。

コンテの型で作ったモルビエを切り分けているところ。

型入れしたモルビエにエチケットをつけている。

まっすぐ半分に切るのは難しく、モルビエの真ん中の腺は、端っこが斜めになっている事も多い。筆者も学校で作ったが、なかなかまっすぐに切れない。曲がってしまう。農家製のモルビエはまっすぐになっていたから、丁寧に作っているのだろう。

チーズの表面は、ウォッシュタイプと同じように塩水で拭うので、赤く輝いて、少しべとついている。中身は柔らかくて、弾力があり、もちもちした食感である。
塩気も臭いもあまり強くない、食べやすいチーズだ。
熟成庫のモルビエ。

また、日本で売っているモルビエは、嬉しい事に値段があまり高くない。
料理にもどんどん使える。
タルティ・フレットというグラタンがサヴォアにあるのだが、これはルブロションを使うのが本式だ。しかし、ルブロションは日本では値段が高くてもったいない。
タルティ・フレットのフランシュ・コンテ版は、このモルビエを使う。
トロトロチーズのジャガイモグラタンである。
簡単なレシピを載せておこう。分量は、適宜。

  1. ジャガイモをゆでる。
  2. ベーコンの細切りとタマネギの細切りを炒める。
  3. モルビエを小さく切る。
  4. 耐熱皿に、ジャガイモ、ベーコン・タマネギ、モルビエの順に乗せ、これを2〜3回繰り返す。
  5. 上から生クリームを適量かける。
  6. 240℃のオーヴンで10〜15分、焦げ目がつくまで焼く。
今年は寒さが厳しいので、こんな熱々の料理はいかが。
筆者も今晩はグラタンにしようと思っている。
モルビエがないから、グリュイエールあたりで作ろうか。