コンテより小型で、5〜8Kg、非加熱圧搾タイプだ。
日本だと、チーズの専門店にあるかな、という感じで、あまり一般的ではない。
しかし、このチーズには、一風変わった特徴があるのだ。
モルビエの断面。黒い腺が見える。 |
チーズを切ったとき、真ん中に黒い腺が一本入っているのである。
なぜ、こんな風になるのか?というと、昔、こんな風に作っていたからだ。
モルビエの側面。黒い腺が透けて見える。 |
「昔々、フランスのジュラ地方では、コンテという大きなチーズを作っていました。
牛乳は、農家から町のフリュイティエールという工房に集められ、専門の職人の手によって、チーズを作っていたのです。
でも、この地方の気候は厳しくて、特に冬は農家から町の工房に牛乳を運ぶのが困難になる事も多く、せっかくの牛乳が無駄になる事もありました。そこで、農家の人々は、自分たちでチーズを作ろうと決心したのです。
ところが、彼らはチーズ作りの専門家ではありません。見よう見まねでカイエを作り、型に入れたものの、型が大きすぎ、一回では満たす事が出来ません。
そこで、朝の搾乳で作ったカイエを型に入れ、虫除けのためのススを表面に塗り、夕方の搾乳で作ったカイエを追加して一つのチーズにしていましたとさ。
どっとはらい。」
昔話風にすると、こんな感じである。
農家の人たちがチーズ作りを知らなかった事から出来た、面白いチーズである。
現在は、コーペラティヴでコンテと一緒に作っている事が多い。コンテの型を利用して、脱水まで行い、その後切り分けてモルビエの型に入れている。
真ん中の黒い腺は、カイエの塊を半分に切って、半分型に入れ、植物性の木炭の粉を塗り、残りの半分を乗せて作っている。
コンテとモルビエを作るキューヴ。銅製で8の字になっている。 |
コンテの型で作ったモルビエを切り分けているところ。 |
型入れしたモルビエにエチケットをつけている。 |
まっすぐ半分に切るのは難しく、モルビエの真ん中の腺は、端っこが斜めになっている事も多い。筆者も学校で作ったが、なかなかまっすぐに切れない。曲がってしまう。農家製のモルビエはまっすぐになっていたから、丁寧に作っているのだろう。
チーズの表面は、ウォッシュタイプと同じように塩水で拭うので、赤く輝いて、少しべとついている。中身は柔らかくて、弾力があり、もちもちした食感である。
塩気も臭いもあまり強くない、食べやすいチーズだ。
熟成庫のモルビエ。 |
また、日本で売っているモルビエは、嬉しい事に値段があまり高くない。
料理にもどんどん使える。
タルティ・フレットというグラタンがサヴォアにあるのだが、これはルブロションを使うのが本式だ。しかし、ルブロションは日本では値段が高くてもったいない。
タルティ・フレットのフランシュ・コンテ版は、このモルビエを使う。
トロトロチーズのジャガイモグラタンである。
簡単なレシピを載せておこう。分量は、適宜。
- ジャガイモをゆでる。
- ベーコンの細切りとタマネギの細切りを炒める。
- モルビエを小さく切る。
- 耐熱皿に、ジャガイモ、ベーコン・タマネギ、モルビエの順に乗せ、これを2〜3回繰り返す。
- 上から生クリームを適量かける。
- 240℃のオーヴンで10〜15分、焦げ目がつくまで焼く。
筆者も今晩はグラタンにしようと思っている。
モルビエがないから、グリュイエールあたりで作ろうか。
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