2013年12月6日金曜日

クリスマスのチーズ、モンドール

チーズの製造なんぞという堅苦しい事ばかり書いたので、ここらでちょっと一休み。
凝乳酵素の話は、ちょっとあとで。
と云う事で、今回のテーマは"モンドール"。

フランス西北部、スイスとの国境に近いジュラ地方に、AOP(Appellation d'Origine Protégée:ヨーロッパで保護している食品が名乗れる呼称)を取得した、モンドールというチーズがある。近年、クリスマスのチーズとして、とみに有名になってきた。クリスマスシーズンになると、パリでもよく見かける。
日本でも人気で、クリスマス近くになると、よく売れているようである。
先日購入したモンドール。現在熟成中。

さてこのチーズ、分類から言うと、ソフトタイプ中の、ウォッシュという事になる。
特徴は、"エピセア"(写真のチーズのすぐ外側に見える、焦げ茶色の木)と云う、もみの木の一種の皮で周りをぐるっと巻いてある事だろう。木の匂いのする、ちょっと変わったチーズである。

歴史をひもとくと、起源は中世にまでさかのぼる事ができるそうだ。
中世の修道院の"l'hospice"(=オスピス:旅人、巡礼等を無料で泊める、修道院付属宿泊所)で作っていたらしい。初出の文献は、1764年のジョン・ジャック ルソーの手紙だそうである。また、ルイ15世の食卓にも上がっていたとも言われている。

ジュラ地方のチーズは、山のチーズであり、コンテ、モルビエ、ブルー・ド・ジェックス等がAOPとして有名であるが、このモンドールは、山のチーズだが、修道院チーズでもある。大きさが3種類あり、大きいものでも3Kgほどである。
コンテが40-45Kgほど、モルビエが7-10Kgほど、ブルー・ド・ジェックスが7Kgくらいだから、小さいチーズなのである。
AOP規則によると、重さが480g-3,2Kgとなっているが、だいたい小さいサイズが480g、中くらいのものが700g、大きいものが2,8Kgくらいと記憶している。

山のチーズには大きいものが多い。冬の食料にするためである。ジュラ地方は冬の寒さが厳しく、積雪も多いので、夏のように牛の食料が十分ではない。
必然的に、干し草のみになり、乳量は減るのである。
乳量が減ると、コンテのように大きいチーズを作るのは難しい。コンテ一つを作るのに、450Lほどの牛乳が必要になるからだ。
ジュラ地方は、今でも行われている"コーペラティブ"と呼ばれる協同組合を作って、原乳を持ち寄ってチーズを作る習慣がある。だから大きいチーズが作れる。
しかし、モンドールは修道院チーズが発祥なので、山のチーズなのに小さいと考えられるのだ。

昔の名前が、また面白い。
"木のチーズ"、"クリームのチーズ"、"釣りの餌のチーズ"。
釣りの餌のチーズ、の意味がよくわからないのだが、直訳するとこうなる。
今度ジュラに行ったら、どういう意味か、確かめようと思っている。

また、ヴァシュランというのは、牛のチーズの総称のようで、起源はあまり古くないらしい。コンテもこの名がついていた事があるようだ。
ジュラ山脈を挟んで、フランス産は"モンドール"、スイス産は"ヴァシュラン・モンドール"と云っている。その差は原乳の違い。
フランス産は、無殺菌乳、スイス産は殺菌乳である。

製造が8月15日から翌年の3月15日まで、店頭に並べる事ができるのは、9月10日から5月10日までと云う、限られた時期にしか、食べられないチーズ。
輸入食品を扱っているスーパーや、チーズの専門店でみつける事ができるだろう。
次回は、その食べ方と、余ったときのお楽しみを伝授しよう。
パリのチーズ屋さん。ショーケースの上に乗っているのがモンドール。

同じくパリのチーズ屋さん。赤い箱ではなく、その上の木の箱がモンドール。700gくらいのものが主流。

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