2013年12月2日月曜日

チーズの製造方法 2 "凝固"

前回は、原乳の話をしゃべりすぎた。
チーズをすでに製造している方達は、こんな事は百も承知という事柄だろうが、これから自分でチーズを作りたいという方達には、大前提になる大事な話だったので、つい力が入ってしまった。
やっと、本題であるチーズ製造の話へ移る事ができて、ほっとしている。

さて、第1段階にあたる、"凝固"。
チーズプロフェショナル協会の教科書にもあるが、乳凝固には、3つの方法がある。

  1. 酵素による凝固
  2. 酸による凝固
  3. 熱による凝固
である。

酸による凝固は、ヨーグルトと考えてよい。
筆者が子供の頃、牛乳にオレンジジュースを混ぜて、かなり柔らかいゼリー状のものを作ってよく食べていた。飲むヨーグルトのオレンジ味みたいで、美味しかった記憶があるが、これが典型的な酸凝固。
ヤギチーズのカイエ・ラクティック製造中!


熱による凝固というのは、少し特別になる。
蛋白質は、熱によって凝固するという性質がある。
皆さんも、やけどをする事があるだろう。
これは、人間の皮膚蛋白の熱凝固である。

液体である乳中の蛋白質は、2種類あり、カゼインと水溶性蛋白質である。
カゼインは熱の影響をあまり受けないが、水溶性蛋白質は、比較的低温でも影響を受ける。
牛乳を加熱すると、上に膜ができるが、これは水溶性蛋白質が固まったもので、この現象を"ラムズデン現象"と言っているようだが、よくわからない(外国の文献があまりない)。
チーズでは、インドのパニールや、セロム(乳清=ホエー)から作るチーズ、リコッタやブロッチュなどが熱凝固チーズに相当する。ただ、これらのチーズは、酸凝固の力も使っている。

チーズを作るには、二つの力を借りて凝固させているように思える。
熱凝固も酸の力を借りているし、酵素凝固も乳酸菌の力を借りて凝固させるからである。
ただ、遊牧民たちのチーズは、酸凝固だけのようで、脱水したあとに天日干しし、乾燥させて保存している。一般的に、東洋型チーズは酸凝固、西洋型チーズは酵素凝固と言われるが、厳密に言うと、酵素凝固だけのチーズは、ほとんどない。

"チーズと文明"のポール・キンステッド氏によると、酵素凝固は、かなり古くから存在していたらしい。そして、植物性酵素、動物性酵素ともに使用されていたそうである。
先日お話しした、チーズの分類中の"ラクティック"も、ちゃんと酸凝固と酵素凝固を組み合わせて作っている。原乳のpHとプレジュールの量で、カイエが決まるのである。

一口に酵素凝固と言っても、色々な酵素がある。
大きく分けて、伝統的な、植物性酵素と動物性酵素、最新技術によるカビの酵素と遺伝子組み換え微生物によって合成した酵素がある。
筆者が"レンネット"と云わずに"プレジュール"を使っているのも理由があってこそ。最新技術による酵素の名前が、まぎわらしいからなのである。
凝固メカニズムは難しいので、次回は、凝乳酵素のお話をしようと思っている。
ブルゴーニュのヤギチーズ工房案内。後ろの建物にヤギがいる。

チーズ工房内。窓際のバケツの中にカイエが入ってる!

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