2014年4月10日木曜日

チーズを作る:プレジュール(la présure=レンネット)

プレジュール(=レンネット、以下プレジュール)は、動物性凝乳酵素である。
近年、評判が悪いようだが、古くから使われている、自然なものだ。
日本で、インターネットなどで買えるのは、ほとんどがカビ系凝乳酵素、ヴェジェタル・レンネットという奴である。
プレジュールは高価なのと、消費期限が短いという短所があるから、あまり売っていないのだろう。

筆者の使っている、農家用プレジュール。

では、プレジュールとは何ぞや?

「乳離れしていない反芻動物の幼獣の第4胃から抽出した、凝固剤。キモシンという、酵素の働きからなる。チーズ製造時に、乳凝固の為に使用される。」
(Wikipedia:http://fr.wikipedia.org/wiki/Présure

Wikipediaでは、このような説明である。
しかし、実際には、プレジュールの中には、キモシン以外にも、色々な物質が入っていて、乳凝固と熟成に関与している。
何が入っているかというと、ペプシン(成人の胃の中にもある、蛋白質分解酵素)、Naclである。

乳凝固に関する酵素は、いろいろ研究されている。
プレジュールの需要が増え、供給が足りなくなった時には、他の物質も利用されてきた。現在のように、カビ由来の酵素や、遺伝子組み換えの大腸菌に作らせる純粋キモシンが普及する前は、豚や鶏のペプシンなども利用されていた。
フランスでは許可されていないが、イスラエルでは使っているようである。

フランスで許可されていないので、筆者は豚のペプシンを使った事がない。
だから、どういうふうになるのかは知らないが、フランスの学校の先生は、こう強調していた。
κカゼインを分解する事だけが、プレジュールの役名ではないと。
そして、プレジュールの中には、キモシンだけではなく、ペプシンやNaclもあるので、チーズの風味がよくなるのだ、と。

プレジュールは、凝乳酵素としての働きだけでなく、熟成酵素としての役割も果たすわけだ。

筆者はチーズ造りに関して、プレジュールが一番だと思っているが、現在の需要を考えると、そんな事も言っていられない。
ただ、何の酵素を使っているのか、明記してほしいと思う。
酵素は、番号があるから、チーズのパッケージに酵素番号でも書いてくれればいいのだが。
フランスのチーズは、乳酸菌、凝乳酵素も表示してあるものが多いので、確認できる。
日本は、生乳と塩しか表示していない。そのほかの材料は、表示義務がないのだろう。

さて、そのプレジュールだが、キモシンの含有量によって、いろいろ種類がある。
また、山羊のプレジュールも羊のプレジュールもある。
牛の場合、普通の万能タイプは、520mg/lのキモシンが入っているもの。
コンテなど、PPCを作るには、810mg/lのものを使う。

パリに住んでいたときに買ったチーズ。PPC(ボーフォール?コンテ?)、サン・マル、クロタン。
PPCでボーフォールなら、伝統的なプレジュール。市販していない。コンテなら、810mg/lのもの。
サン・マルは、PM用で、キモシン含有量が少ないもの。クロタンは、山羊のプレジュールだろう。

筆者が山羊チーズを作っていた時には、山羊のプレジュールを使っていたが、牧場によっては、牛のプレジュールを使っている所もあった。
また、サロン・ド・フロマージュで、プレジュールのブースにいた方は、山羊のプレジュールを牛乳に使うといいのだ、と力説していた。
あまり使ってないと思うが・・・

筆者が現在使っているのは、農家用のプレジュール。
中身は、50mg/l以上のキモシンが入っていると、パッケージに書いてあった。
少ないので、PM向けだろうな。

ちなみに、筆者はプレジュールをなめた事があるが、すごーくしょっぱくて、まずい。
作っている工場の見学に行った事もあるが、独特の匂いがしていた記憶がある。
案内をしてくれた人に、マコネを作っていると言ったら、マコネには、ウチのプレジュールが最高なんだと言っていた。

プレジュールは、値段が高いので、近頃は敬遠され気味である。
しかし、廃物利用になるのだから、合理的だと思う。
筆者は、プレジュールを使うぞ〜。

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