2014年7月4日金曜日

チーズを作る:チーズの中の微生物(穴をあける微生物)

チーズの中に入っている微生物は、ホントに沢山あって、数えきれない。
例えば、一番重要な、乳酸菌。
これについては、以前にも書いているので、アーカイブを見てほしい。
前の記事は、かなり学術的?に書いているので、解りにくかったのではないかと思っている。今回は、もう少し解りやすくしよう。

乳酸菌には、種類がいろいろあって、形から分類するとコック(coque)と呼ぶ球形のものと、バシル(bacille)という棒状のものに分けられる。
また、発酵する時に、CO2を出すものと、出さないものがある。
出すものは、ヘテロ発酵、出さないものは、ホモ発酵と言う。

CO2を出すと余りよくないとお思いだろうが、一概に言えない。
ヘテロ発酵をする乳酸菌の中で、ルコノストック(leuconostoc)というのがあるが、こいつはすごく有用である。
というのは、この乳酸菌は、芳香物質を作りだすからである。

山羊チーズ工房にて。カイエがいっぱい!

ラクティック・ドミノンのフレッシュの場合、匂いも重要な要素である。
工場製のフロマージュ・ブランなどを作る時は、この乳酸菌を入れることが多い。
市販の混合の乳酸菌にも入っているものがある。

山羊チーズの農家で作っていた時に、カイエの状態が毎日変わるのが面白かったが、ルコノストックが出ると(餌や自然環境で、自然に入るのである)、出来たカイエに丸くて小さい穴がぽこぽこあいていて、かわいいやら、気持ち悪いやら(妖怪千の目みたいで)。
大腸菌もCO2を出すのだが、その穴との差は、
  • 形が整った、丸くて小さい穴。大腸菌の場合、形が整わず、不規則になる。
  • カイエが美味しい。大腸菌の場合は、味に苦みやエグミが出る。
である。
型入れをしてしまえば、穴はなくなるし、匂いがよくなるので、万歳である。

もう一つ、乳酸菌ではないが、チーズに穴をあける微生物がいる。
そう、プロピオン酸菌(le bactérie propionique)である。
酪酸菌もあるが、こちらは有害菌なので、また今度。

プロピオン酸菌というと、すぐにエメンタル!という返事が来そうだ。
エメンタルの大きな穴は、プロピオン酸菌によるところが大きい。

ランジスで見た、エメンタル。

プロピオン酸菌の、無殺菌乳に入っている割合は、あまり多くない。
Standa という会社の資料だと、100〜300 ufc/ml(ufc:Colony Forming Unit 菌量の単位)ほどである。
しかし、コンテやエメンタル、グリュイエールなどの、あの独特の風味を作るには、欠かせない微生物である。

しかし、コンテやグリュイエールに取っては、時々困り者になる。
チーズ生地に穴をあけることがあるからだ。
少しならいいが、この間書いたように、「ミル・トロ:mille trous」の原因にもなる。

グリュイエール。たくさん穴があいている。

ランジスで見た、コンテ。

穴があく原因は、脂肪の含有量と、製造時とカーヴ内の温度。
例えば、ボーフォール(le beaufort)にはほとんど穴がない。
CDCでは、レニュール(lainure)と小さい穴(œil de perdrix:ウズラの目)を許可しているが、レニュールはともかく、穴はあまり見かけない。
ボーフォールは、全乳だからだ。

コンテとグリュイエールは、エクレメ(écrémé)といって、少し脱脂する。
そして、製造時の温度が、55℃以下になると、穴があく確率が高くなる。
コンテのエメンタル化という。

ちなみに、エメンタルの製造時の温度は、52〜54℃である。
だから、カーヴ・ショッド(la cave chaude:エメンタルだと、22〜24℃、コンテだと13〜18℃。コンテの今の主流は、13℃、温度が高いと穴があくから)で、きれいな穴ができる。また、Standaの資料によると、エメンタルの穴の40%がプロピオン酸菌によるものだそうだ。

また、プロピオン酸菌は、ゴーダなど、オランダさんのチーズによく使われる。
独特の風味が好まれ、工場製では、製造時に添加する。
筆者も、ポリニーのPPNCの講義で、モルビエでないものには、添加していた。

少し、金臭いような、金属っぽい独特の味。
日本人好みなのだろうか。
日本のあちこちで、ゴーダタイプが生産されているようである。

私事だが、このところ、忙しい。
工房を作る計画が進んできて、何だかする事が増えている。
そっちに気を取られて、このブログに書こうとする事が決められず、この間の火曜日には公開できなかった。
いつも読んで下さっている方には、申し訳ない。
頑張ります!
次回は、熟成段階について。

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