2014年6月27日金曜日

チーズを作る:羊のチーズ

ENILIAで、二回ほど羊のチーズを作った事がある。
ペライユ(le pérail)のラクティック・ドミノン(lactique dominant)とミックス(mix)、トム・ド・ブルビ(la tomme de brebis)である。

オッソ・イラティを作っている農家で。

作ってみて、驚いた。
乳質が、まるで違う。
それまでは、牛乳か山羊乳しか使った事がなかったから、その差にびっくりしたのである。

羊乳は、蛋白質、脂肪分が牛乳、山羊乳の倍近くある。
だから、カイエになった時の状態が、こってりしていると言うか、生クリームの塊と言うか、とにかく、脂っぽいのである。

羊乳は、冷凍してあった物を使ったので、解凍から始めた。
小さな塊に分けて、大きなタンクで溶かし、それから使用。
ラクティック・ドミノンの場合、乳酸菌とプレジュールを同時に入れて、24時間ほど静置する。トムとペライユ・ミックスは、すぐ作った記憶がある。
残念ながら、筆者はトムの担当だったので、ミックスの作成はしていない。

ラクティック・ドミノンのペライユ(厳密に言うと、"ペライユ風"羊乳チーズ)を作る時に、カイエを細断したのだが、切る時に、抵抗があって、トロンシュ・カイエ(la tranche caillé:カイエを切る道具。日本だと、カッターと呼ぶかな?)が重かった。
乳清の量も牛乳や山羊乳に比べてずっと少なく、le rendementと呼ぶ、「歩留まり」がすごくよかった。

トム・ド・ブルビの時は、鍋とガスの直火(!)で原乳を温めた。
鍋の直火だから、鍋肌の部分と真ん中の部分の温度差がでる。
左手に温度計を持ち、右手でずっとかき混ぜていなくてはならず、途中でめんどくさくなった。
ダメですな。こんな事言っちゃ。

うまく固まった時も、その固さに驚いた。
細かく切って、乳清中で型に入れる。
トワル(la toile:ボーフォールなどに使う、目の粗い布)を使って、カイエを集めた。
プレスもコンテのようにしっかりしなかった記憶がある。

このような、PPNCの場合、オート・プレス(auto-presse)といって、型にカイエをつめて、それを重ねてプレスする場合がある。
プレス機がいらないので、農家だとこの方法が多い。

フランスのチーズ屋さんで。真ん中へんと後ろの方が、羊乳チーズ。

ヨーロッパの南には、羊乳のチーズが多い。
東京近郊で羊を飼うのは難しいと聞いたが、湿気の問題のようである。
フランスなら、ピレネーやコルシカに特に多い。
ピレネーだと、トムのようなPPNCが有名だが、コルシカの場合は、色々な種類があって、面白い。

バスクの羊チーズ。熟成庫にて。

熟成の違う羊チーズ。左が一番若く、真ん中が中間。右が一番熟成が進んでいる。

日本で買った、オッソ。

日本でもたまに見かける、フルール・デュ・マキ(le fleur du maquis)、あるいは、ブラン・ダムール(le brin d'amour)、ニオロ(le niolo)、ヴェナコ(le venaco:これは、羊と山羊)など、いろいろ。
有名な、ブロッチュ(le brocciu)もある。

ランジスで見た、フルール・ド・マキ。

ブロッチュは、AOCになったあと、少し悶着のあったチーズである。
1983年にAOC取得の運びとなったのだが、フランスのチーズの定義の中で、ホエーをチーズの原材料にしていない事から、長い間どっち付かずの状態だったようだ。
筆者が昔、文献を見たら、AOCと書いてある物と、書いてない物があったのを覚えている。1998年にAOCを正式に取得、2003年にAOPを取って、一件落着と言ったところか。

ブロッチュと同じようなチーズは、フランス本土だと、ブルース(la brousse)といって、スーパーでも売っている。牛乳製が多いが、やや値段が高い。
筆者は、このチーズとミルティーユのジャムをクロワッサンに塗って食べるのが好きだ。
友人には、贅沢と言われたが・・・

羊乳のブルースは、日持ちがしないので、なかなかお目にかかれない。
パリのチーズ屋さんでも扱っているところは少なかった。
ほんのり甘くて、やさしい口当たりが、大好きである。

筆者は、チーズの勉強を始めた頃、羊牧場でチーズを作るのが夢だった。
世界最古の家畜と言われる羊は、すごく利用価値が高い。
肉も毛も乳も利用できる。
山羊は、肉の利用が難しいし、牛は飼うのが難しい。
女一匹で、なんとかしようと思ったら、羊かなと本気で思っていたのだ。

今は、寄る年波で(?)、動物を飼ってチーズを作るのは難しいと考えるようになった。
そこで、作る方だけに専念する事にした。
アトリエ計画も、なんとか進んでいる。
その前に、チーズ会でも開催しようかと考えている。

0 件のコメント:

コメントを投稿