2014年1月17日金曜日

AOPのチーズ:牛編 コンテ

フランスのAOPのチーズ中、生産量は、堂々第一位。
2012年の生産量は57886トン、チーズにすると、実に1450000個に相当する。
パリのスーパーマーケットでも、パック入りをよく見かけた。
比較的若いコンテがパック入りで売っているようで、そのまま食べても、料理に使っても、安くておいしい。
2012年のサロン・デュ・フロマージュにて。右上から時計と反対回りに、
コンテ、モルビエ、ブルー・ド・ジェックス、モンドール。

1958年にAOCを取得しているが、このときは、「グリュイエール・ド・コンテ あるいは コンテ」(Gryère de COMTE ou COMTE)となっている。その後、1996年にAOPを取得し、2008年に規則を改めている。その中では、名前は「コンテ」(COMTE)のみ。グリュイエールの名を捨てている。

グリュイエールというのは、諸説あるのだが、スイスやフランスなどのアルプス周辺で作っていた大型のチーズを意味しているようである。コンテの「グリュイエール・ド・コンテ」という名は、「コンテ地方の大型チーズ」のような意味だろう。AOPのチーズは、名前を「通り名」から変更する事がある。コンテは、グリュイエールとの混同を嫌ったのだろう。他にも、モンドールやシャヴィニョルの例がある。
コンテの熟成庫。真ん中は、コンテの手入れをする機械。

このチーズは、製造施設に特徴がある。
フリュイティエール(la fruitière)という名の、コーペラティヴ(協同組合)で作るのだ。この協同組合に、乳生産者が原乳を集め、コンテを作る。だからこの協同組合の役員は、乳生産者である。このシステムは、8世紀頃から始まり、今も続いている。

こうなった背景には、アルプスの気候の厳しさが無関係ではない。
アルプスの冬は寒さが厳しく、食料の貯蔵が必要になる。
そのために、夏の間に牛乳を持ち寄って、大型のチーズを作り、皆で分けていたのだ。チーズは親方が作り、持ってきた牛乳の量によってチーズを配分し、親方は給料をもらっていたようである。
筆者は、冬の間にコンテを保存しておくという石の容器を見た事がある。コンテがすっぽり入る入れ物で、石の蓋付き。そのままチーズを切り分けられるようになっていた。

コンテの熟成のメッカは、ポリニーというちいさな町である。ここに、メゾン・デュ・コンテという博物館(実際は、CIGCという、コンテの生産者団体の施設だが)がある。筆者も何度か行ったが、4€はらって、20分くらいのヴィデオを見て、職員と一緒に館内を回って、最後に試食するというコースである。ヴィデオは英語もあるらしい。筆者は英語よりフランス語の方がいいので、英語ヴァージョンはしらない。説明はフランス語だったが、英語もあるかも・・・
メゾン・デュ・コンテ。

コンテは、商業的に成功したチーズである。
資料が少し古くて申し訳ないが、2011年では、総輸出量が2630トン。輸出先は、

  1. ドイツ:1021トン
  2. ベルギー:810トン
  3. アメリカ:538トン
  4. イギリス:194トン
  5. 日本:62トン
である。筆者が学校に行っていた、2009年に、CIGCで講義を受けたときは、一位がアメリカ、二位がロシア、三位が日本と説明を受けた(統計は、2008年以前と思われる)。現在は、中国市場も視野に入れているそうである。

一つのコンテを作るためには、約400Lの牛乳が必要である。牛は、モンベリアルドかシメンタール・フランセーズと決まっている。
また、工房内には、キューヴという名の、銅製の釜が2個以上必要。
一個5000L以下の大きさと決まっている。
ときどき、コンテの農家製と言って売っているのを日本で見かけるのだが、怪しい。
というのは、もし400Lのキューヴ(学校でしか、見た事ない)が2個あったとしても、1日に800L以上の牛乳を集めるのは、農家では難しい。その上、一日一つしか製造しないとなると、商売にならない。だから、コンテの農家製というのは、存在しないはずである。
コンテのキューヴ。

カナダやロシアでコンテの偽物が出たり、地元でも「赤いカゼインマーク」の偽物コンテ騒ぎがあったそうだ。人気のあるチーズだから、まねされるとはいえ、CIGCは、その対応に忙しい。
筆者も日本の某アトリエで撮影したコンテ風のチーズを、偶然学校で先生と同級生に見られた事があるが、反応が大変だった。「日本人が、コンテをコピーしている」と言われた。
出来て間もない、コンテ。緑色の楕円がカゼインマーク。

コンテは、その味を保つために、色々な研究を重ねている。
その一つに、「土壌」がある。
土壌の違いが、同じコンテでも、コーペラティヴの場所によって、味の違いを生む。
だから、いくらよその国でまねをしても、コンテの味にはならない。
作り方をまねしても、違うチーズなのである。

筆者は、コンテに憧れてポリニーの学校に行った。
残念ながら、企業研修は、コンテのコーペラティヴでは出来なかったが(男の世界で、女はなかなか雇ってもらえない)、コンテの製造方法、その他を学ぶ事が出来て、とてもよかったと思っている。
日本にもコンテのサイトがあるので、URLを添付しておこう。

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