2014年1月28日火曜日

チーズを作る:原乳編 乳酸菌

乳酸菌というと、皆さんは、何を思い出すだろうか?
乳酸菌飲料だろうか、それともヨーグルト?
実は、日本の糠漬も乳酸菌が働いているのだ。
では、乳酸菌て、何だろう?

フランスのチーズ屋さん。右側のバケツはフロマージュ・ブラン、真ん中にはトム、左側にはブルーチーズがある。使用している乳酸菌は、それぞれ違い、チーズの特徴を出している。

乳酸菌の定義を表す最適な文章を見つけたので、引用する。

「乳酸菌は、乳酸を多量に作る細菌群の総称である。乳酸菌はグラム陽性(細菌をグラム染色で染色すると青色に染まる)で桿菌(筆者注:形が棒状や円筒状の細菌)または球菌の形態をとり、カタラーゼを生産せず、運動性がなく、胞子を形成せず、(中略)ブドウ糖に対して第一発酵式(ホモ発酵)あるいは第二発酵式(ヘテロ発酵)に従って乳酸を生成することが定義づけられている。」
「畜産食品微生物学 細野明義編(株式会社朝倉書店)」
 P34 2.1 微生物の種類(北澤春樹)c.発酵乳製品と微生物 より抜粋

カタラーゼは、簡単に言うと細胞内の毒素を過酸化水素を使って解毒する酵素のこと。WikipediaのURLを貼っておく。http://ja.wikipedia.org/wiki/カタラーゼ
また、第一発酵式とは、乳酸のみを生産する発酵、第二発酵式とは、乳酸の他に二酸化炭素とエタノールを生産する発酵である。

この定義は、チーズの学校にいたとき、試験に出た。
そのくらい大事なのである。

固めるだけなら、プレジュールだけでいいのである。
筆者も学校で、いろいろな固まり方を実験した時に、乳酸菌だけではヨーグルト状になるだけ、プレジュールだけだと、固い杏仁豆腐のようになるのを見ている。
だからなんで乳酸菌を使うの?と聞かれると、チーズの特徴を作るためと云えばいいだろうか。

乳酸菌は、乳中の乳糖を乳酸に変える。だから、pHが下がり、乳は酸性になる。
どのくらいのpHの時に、プレジュールを加えるかというのが、チーズを作るときの最重要事項である。これで作るチーズの性格が決まってしまうからである。
ちなみに、ハードタイプのpHは高め、ソフトタイプのpHは低めである。
バスク地方の牛乳製トム。高温菌がやや多く使われる。

山羊のチーズ。製法もラクティックなので、中温菌がメイン。

それだけではない。
乳酸菌は、種々の酵素を持っていて、これがチーズの熟成に深く関係するのである。
例えば、加熱圧搾タイプ(Pâte pressée cuite)は、50℃以上に加熱する工程があるので、中温菌(mésophile)は死んでしまうが、どっこい、酵素はなくならない。高温菌(thermophile)は、死滅しない。
ソフトタイプは、中温菌が熟成に関与する。
このように、乳酸菌由来の酵素は、熟成にとって重要な要素の一つなのである。

使用する乳酸菌は、チーズの種類によって変わる。
ソフトタイプは、中温菌、加熱圧搾タイプは高温菌を多く使う。
ラクトコックという、中温菌の写真のURLを貼っておこう。
http://genome.jgi-psf.org/laccr/laccr.jpg
もう一つ、ヨーグルトに使われるので有名な高温菌、ラクトバシリュス・ブルガリクス(lactobasillus bulgaricus)の写真のURLもつけておこう。
http://ytpo.net/viruses/adpanela/images/lactobacillus_bulgaricus_4.jpg

日本だと、乳酸菌は飲料とヨーグルトくらいしか、知名度がないが、近年、プロバイオティクス(les probiotiques)が注目されている。プロバイオティクスは、

「腸内微生物叢のバランスを改善する事によって、宿主の健康に好影響を与える生菌体」
「畜産食品微生物学 細野明義編 (株式会社朝倉書店)」
P113 4.3 発酵乳(金子勉)e. 発酵乳の栄養生理作用とプロバイオティクス より

とされ、2001年に、FAOとOMSで規定もされている。
筆者の大好きな山羊チーズが沢山。これを食べて健康になれるなら、一石二鳥!

筆者は、からだにいいから食べるというより、美味しいから食べるという主義なので、チーズに健康を保つ要素があると言われてもピンとこない。
でも、好きだから食べているものが、健康によければ、こんなにいい事はない。
このごろ、食べていないので、そろそろ禁断症状が・・・

0 件のコメント:

コメントを投稿