2014年1月21日火曜日

チーズを作る:原乳編 乳成分

牛乳製のチーズは多い。
だから、牛乳の研究は進んでいて、成分の分析も明確である。山羊乳については、牛乳ほどではないが、近年、研究が進んでいるようだ。
しかし、羊乳に関しては、あまり研究が進んでいない。
ブリ・ド・モー。2008年のサロン・ド・フロマージュにて。

山羊や羊は、種類だけでなく、住んでいる場所でかなり乳組成が変わる。
筆者もレポートを書くとき、山羊乳の組成をインターネットから引用したところ、その資料が北アフリカのものだと先生に指摘された事がある。一般的ではないので、不適切というわけだ。
BIO(自然食品)の山羊チーズ。マコンの市場にて。

今回、羊乳の成分をインターネットで探したところ、カナダの資料を見つけた。
割と信用できる数値だったので、URLを貼っておく。フランス語だが、参考にしていただきたい。
http://www.fouillez-tout.com/bergerie/Tableau_lait.jpg

一口に乳と言っても、2種類ある。
アルブミノー(Albumineux)とカゼイノー(Caséineux)である。
アルブミノーは、乳中の蛋白として、アルブミン(水溶性蛋白質)が多く、脂肪分が少なく、乳糖が多い。人、馬、犬、猫等の乳に多い型である。
カゼイノーは、乳中蛋白で、カゼインが多い(牛だと、約80%がカゼイン)。牛、山羊、羊、トナカイ、面白い事にウサギもこのタイプである。

この二つの違いは、凝乳酵素で固まるか固まらないか、である。
カゼインがないと、凝乳酵素で固まらないのだ。
水溶性蛋白なら、熱で凝固するのだが、酵素で凝固しない。
乳があれば、チーズになるというものではないのだ。

さて、乳成分だが、一番解明されている、牛乳の成分を説明する。
まず、乳組成のうち、一番多いものが水分である。以下、順番に%で示そう。
(Initiation à la technologie fromagère:2003年 第2版より)
  1. 水分:  87-88%(多いと90%ほどになる)
  2. 乳糖:  4,7-5,2%
  3. 脂肪分: 3,3-4,5%(牛の種類、餌、季節によって、変動する)
  4. 蛋白質: 3,2-3,6%(牛の種類で多少変わるが、餌等によって変動しない)
  5. ミネラル:0,85-0,95%(カルシウム、リン等)
水分が約90%なので、チーズ一個作るのには、約10倍の牛乳が必要というわけである。
乳糖は、水に溶けているため、乳清と一緒にカイエの外に出る。残っていると、熟成中に悪さをするので、フレッシュタイプ以外は必要ない。
脂肪、蛋白質は、ほとんどすべてカイエ内に残る。主なチーズの構成成分である。
ミネラルはカルシウムとリンがチーズ組織に影響を与える、重要な要素である。

これは牛乳の場合だが、山羊と羊の場合は、成分組成が少し違う。
山羊乳の成分組成は、牛乳と似ているが、カゼインの組成(乳中のカゼインは、4種類ある)、脂肪球の大きさ等が変わる。
羊乳の場合は、もっと違うのだ。

添付したURLの表を見ていただきたい。
羊の場合は、水分以外の固形分が多い。(牛:vache、山羊:chèvre、羊:brebis)
特に目立つのが、脂肪分の多さだ。牛の約2倍ある。
(Total des solides:固形分、Matières grasses:脂肪分)
蛋白質も多いが、乳糖はさほど差がない。
という事は、歩留まりがいい、すなわち、少ない量の原乳で、チーズがたくさん出来るというわけである。しかしよくしたもので、羊の乳量は少なく、おまけに泌乳期間が短いのだ。
コルシカの羊のチーズ、Venaco。

羊のチーズは、脂肪分が高いので、味がいくぶん甘い。
ロックフォールを食べた後に、口の中に甘みを感じた事はないだろうか?
牛乳製のブルーチーズではない事だ。
また、チーズの脂肪分が多くなるので、こってりしたチーズになる。
ロックフォールと同じ地方にペライユという、羊乳のカマンベールに似たチーズがあるが、こってりしていて、口当たりもいい。
ロックフォール用の乳生産が多くなりすぎたので、このチーズを作るようになったと聞く。

筆者は羊に興味を持っていた。
何故なら、毛、肉、乳、すべてを利用できるので、利用価値が高いと思っていた。
しかし、チーズを作る事がメインになるなら、難しそうである。
牛は飼うのが大変だから、筆者が飼うとなると、やっぱり山羊になりそうだ。


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