昔、税金を牛乳で納めていた頃、検査官がいる時には牛乳を全部搾らず、彼らが帰ってから残りを絞ったという話だ。
このチーズの名前は、サヴォア方言の reblochi (再び行う、再び牛の乳を搾る、という意味で、解体すると re + blossi あるいは blochi 。blossi あるいは blochi はつまむという意味)に由来するという。(小学館 ロベール 仏和大辞典より)
二回目に搾った牛乳は、濃いので、おいしいチーズができたという話である。
ルブロション フェルミエ。 |
10年ほど前のチーズの本だと、ウォッシュに分類されている事もあるが、実際は非加熱圧搾タイプである。
筆者もウォッシュ、すなわちソフトタイプ(Pâte Molle:パット・モル)と思っていたし、実際に作っているところで聞いてみたら、パット・モルだよ、という返事が返ってきた。しかし、ルブロションのCDC(AOCの規則)を読むと、非加熱圧搾タイプだと明記してある。ちゃんとCDCを読んでおかないと、間違えるものですな。
筆者はルブロションを作っている農家には行った事がないが、ポリニーの学校の見学で、サヴォアのチーズの学校に行った。
そこでは、アボンダンス、ルブロション、トム・ド・サヴォアなどを作っていた。
写真はそのときのものである。
学校で作っているので、農家製ではない。だから、カゼインマークは赤である。
(農家製は、緑)
サヴォアの学校で見たルブロション。カゼインマークは赤。 |
ルブロションの型。上にのっているのが重し。これで圧搾するのだ。 |
このチーズは、非加熱圧搾なのに、柔らかく、皮も食べられる。
サン・ネクテールも柔らかく熟成する事もあるが、皮は硬い。
また、ルブロションは、牛乳のやさしい匂いがするのも特徴だ。
食感も、熟成の若いものはもちもちして弾力があるが、熟成が進むと、生地が流れるようになって、匂いも強くなる。これもまた、美味しいのだが、臭いの苦手な人には、向かないか・・・
そのまま食べるのなら、サヴォアの白ワインなどが合うのだが、手に入りにくかったら、シャルドネがいい。しかも、ブルゴーニュの繊細なシャルドネではなくて、ワイルドなタイプがいい。
チリとか、アルゼンチンなどがいいかもしれない。
モルビエのところで書いた、タルティ・フレットというジャガイモのグラタンは、これを使うのが本式。
日本だと、料理に使うには、値段が高いので、筆者は作った事がないが、サヴォアで食べたものは絶品だった。
山のチーズは、もともと冬の間の食料として作っているものが多い。
だから大きかったり、熟成期間が長かったりする。
そして、料理にも使えるものが多いのだ。
ルブロションは柔らかくて、小さいチーズだが、そのまま食べても、料理に使ってもおいしいチーズである。