2014年2月1日土曜日

AOPのチーズ:牛編 ボーフォール

フランスの加熱圧搾タイプのチーズの中で、AOPを取得しているのは2つ。
この間お話しした、コンテ(le Comté)とボーフォール(le Beaufort)である。
ちなみに、IGPは3つ。
エメンタル・ド・サヴォア(l'Emmental de Savoie)、エメンタル・フランセーズ・エスト−ソントラル(l'Emmental française Est-Central)、グリュイエール(le Gruyère)である。

筆者がボーフォールのコーペラティヴを訪ねたのは、2008年の夏と冬。夏は、一人でバスに揺られて行った。バスの時間に余裕がなく、小一時間で見るはめになったが、冬は学校の見学だったので工房も見学できたし、説明もたっぷり聞いた。
ボーフォールのコーペラティヴ。

中にある、小さな博物館。真ん中の大きな銅鍋は、昔、キューヴとして利用していた。

筆者は学校でコンテの講座にいたのだが、同じ加熱圧搾タイプを比較する勉強もしたので、ボーフォールとエメンタルの事も少し学んだ。
この3つは、製法は同じ加熱圧搾タイプだが、かなり違うチーズである。

ボーフォールの規則によると、大きさが35〜75cm、重さが20〜70Kgと、かなり個体差がある。コンテが55〜75cm、32〜45Kgだから、その個体差は大きい。コーペラティヴで作るコンテと、コーペラティヴ以外でも作るボーフォールの違いだろう。エメンタルになると、もっと大きいし、内部に穴がある。ボーフォールは穴がないし、コンテはなるべく穴をあけないように作る。

2012年の統計では、5025トンを生産している。個数にすると、126000個である。
牛乳は、アボンダンス牛とタリンヌ牛に限定されている。
現在、7つのコーペラティヴと7つのアルパージュの団体があるそうだ。うち、コーペラティヴで、75%を生産している。
コーペラティヴのボーフォール。青いカゼインマークがついている。

ボーフォール作成中。53℃以上の加熱工程があるので、工房の中は蒸し暑い。

ボーフォールのカーヴ。

ここで、アルパージュについて。
チーズのエチケット(ラベル)に関して、正しくは、シャレ・ダルパージュ(Chalet d'Alpage)という。単にアルパージュと言う事も多いが。

ボーフォールの場合、規則で3つのタイプに分けられる。
単なる「ボーフォール」、「ボーフォール・エテ」(le Beaufort Eté)、「ボーフォール・シャレ・ダルパージュ」(le Beaufort Chalet d'Alpage)の3つである。
エテ(夏という意味)は、6〜10月の牛乳を使ったチーズで、シャレ・ダルパージュを含む。シャレ・ダルパージュ(高地のチーズ製造小屋というような意味)は、6〜10月の乳を使い、さらに1500m以上の高地で、伝統的製法を使って生産したものをいう。

中世に、アルプス地方では、修道僧と農民が高地を開拓してチーズを作っていたらしい。17世紀になって、グリュイエールタイプのチーズの製法が、フランス東部の山間地に広がった伝えられている。ボーフォールも1929年に、「グリュイエール・ド・ボーフォール」から単に「ボーフォール」と名前が単純化され、値段も他の加熱圧搾タイプより高かったという。

なぜ高かったのかというのは、筆者の想像だが、脂肪分の高さによるものだろう。
コンテは、全乳ではなく、いくらか脱脂した牛乳を使う。とったクリームで、バターを作った。コンテを作っているジュラ地方は、昔、バターを近隣の国に輸出していた事もあるくらいなのだ。
しかし、ボーフォールは全乳である。その分、長期熟成も難しく、バターの代金も入らない。その分、値段が高かったのだろう。

地元では、若いボーフォールをスープに入れて食べたりしていたが、日本ではもったいない。また、パリのチーズショップでも値段は高めだった。エテが多かったようである。
サヴォアのチーズショップの看板。キロ16,20€は結構高い。

日本で美味しいボーフォールを見つけるのは、結構難しい。
脂肪分が高いだけあって、デリケートなのである。
前に勤めていたチーズショップのボーフォールは、シャレ・ダルパージュで美味しかったが、値段が高かった。
高級品になってしまった感がある。
しかし、このような地域に根ざした産物が普及し、日本などの外国でも食べられるというのは、すばらしいと思っている。


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