2014年3月28日金曜日

渋谷のCHEESE STANDにて+α

昨日の夜、知人のイヴェントが渋谷のCHEESE STANDであった。
お醤油の会だったのだが、CHEESE STANDに興味があったので、ノコノコと行ってきた。お醤油に興味がないわけではないが、チーズのほうに気を取られていたのは、否めない。
URLを貼っておくので、どうぞ。
http://www.cheese-stand.com

チーズの製造はもう終わっていて、ガラス張りの工房を外から覗いただけだったが、渋谷のNHKの真ん前でも工房を作れるんだと感心した。
まだ場所を探している最中だが、いい場所を見つけるぞ、という気になって、ガラス張り工房なんぞもいいな、などとひとりで悦に入っている。
予算があるというのに!
家族に、極楽とんぼとか、夢見る夢子と言われる所以ですな。

カチョカヴァロがいっぱい!

昨日の会で提供されたのは、牛乳のモッツァレラとリコッタ。
モッツァレラのしょうゆ漬け、カナッペ、リコッタのカナッペ、サラダ、ピッツァがでた。

ルッコラのサラダ。美味!

始めにモッツァレラに6種類のお醤油をかけて味を見たが、これも結構面白かった。
お醤油にもいろいろあって、味がはっきりしない物から美味しいと思う物まで、様々だ。
モッツァレラが淡白なので、試食として、よかったと思う。

ついてきた、ワインとお醤油用のモッツァレラ。

筆者が気に入ったのは、リコッタにわさびを乗せてお醤油をかけたもの。
これは美味しかった。
ワインより、日本酒でいっぱいやってみたい。
甘い物が嫌いではないのだが、どうも辛党の様で、すぐつまみの話になってしまう。
全く、飲んべえである。

手前がモッツァレラのしょうゆ漬け、真ん中がカナッペ(詳しい事は忘れた・・・)、
一番向こうがリコッタのわさび乗せ。こいつがお気に入り。

店主の藤川さんはお忙しく、最後に挨拶だけして、御暇した。
奥様とは、ワインの御代わりの時に少しお話しできた。
彼女が、イヴェントの最後に、「お醤油でも、お味噌でも、チーズでも、日本酒でも、発酵食品はすばらしい」、というようなコメントをしていたが、全くその通りだと思う。

発酵食品は、先人たちの知恵であり、我々はその恩恵を被っているというわけだ。

ここで、少し、ご報告。
2番目の試作品がうまくいき、寄り合いに持っていったら、好評だったのに気を良くしていたら、3番目の試作は見事に失敗した。
失敗は、成功の元だよな、なんて意気がっていたが、結構、意気消沈していたようだ。

理由は、チーズ種の劣化だろう。
もう一度、チーズ種を、今度は磯沼さんの牛乳で作る段取りをつけた。
磯沼さんが公表してしまったらしいので、筆者のチーズの名前を教えよう。

フロマージュ・ドーメ(Fromage d'Omé)
「青梅のチーズ」という意味である。

Fromage d'Omé。サン・マルスランより、ピエ・ダングロワですな。

サン・マルスランタイプになると思う。
他にも考えているのだが、これが出来ないのに、他のチーズを作るわけにいかないので、我慢我慢。
筆者は、あれもやりたい、これもやりたいタイプなので。
とにかく、チーズ種を作る事から、再出発である。

2014年3月25日火曜日

チーズを作る:番外編 プロセスチーズ(le fromage fondu)

ポリニーの隣に、ロンス・ル・ソニエ(Lons-le-Saunier)という駅がある。
その駅を通りかかると、誇らしげな、赤い牛の看板が見える。
そう、ベル社(Bel)の「笑う牛」(La Vache qui rit)の牛の顔である。
ベル社の発祥の地は、ここなのだ。

ポリニーの駅。こぢんまりと小さい。

フランスの3大チーズ会社は、ラクタリス、ボングラン、そして、ベル。
ラクタリスとボングランはどちらかというと、ナチュラルチーズがメインだが、ベル社は圧倒的にプロセスチーズに強い。
その一番古い商品が、「笑う牛」なのである。
ENIL時代に、モロッコからきていた生徒たちによると、北アフリカでは、チーズと云えば、「笑う牛」というくらい、ポピュラーだそうだ。
URLを貼っておくので、興味のある方はどうぞ。
http://www.lvq.jp

筆者は、ポリニーの図書館で、ベル社の本を見つけて読んだ事がある。
なかなか興味深かった。今度、同じ本を見つけたら、購入しようと思っている。
それによると、創始者は、普通のフロマジュリー、すなわち、コンテなどの製造業者だったらしい。
チーズはどれもそうなのだが、ロスが出る。
すなわち、商品として販売できない製品が出るのだ。

コンテは現在、CTFC(名前は変わっている可能性がある)が品質の研究をしているので、かなり安定した品質を保っているが、以前は、かなり品質にばらつきがあったと聞く。
その、製品にならないチーズをうまく利用してプロセスチーズを作って成功したのが、ベルである。

フランスは、PPNCやPPCとして味や形に難点のある物、例えばコンテなら、コンテとして販売できないチーズなどをプロセスチーズの原料にする事が多い。
筆者の同級生で、PPNCを作っている会社で研修をしていた女性も、製品として販売できない物はプロセスチーズの原料にまわすと言っていた。

筆者も学校でプロセスチーズを作った事がある。
日本で言う、スライスチーズだった。
原料のチーズ(学校で作っているチーズだった)の皮を取り除き、どういう状態のチーズを作りたいかによって、乳化剤を選び、加熱して溶かして、成形する。
筆者のチームは、スライスチーズだったが、他のチームは、「笑う牛」系のプロセスチーズ、モッツアレラ、アナログチーズ(以前話した、脱脂粉乳から作るチーズ)を作っていた。

プロセスチーズの技術は、戦争によって進んだと云って過言ではない。
発明は、スイスだが、アメリカに渡って軍事食料になったからである。
第二次世界大戦中、日本陸軍は食料現地調達だったが、アメリカさんは食料パックを持っていたそうだ。
中には、乾パン、ベーコン、プロセスチーズ、タバコなどが入っていたそうである。
タバコがアメリカさんらしいですな。

そのパックを日本軍が手に入れた時、チーズを石けんだと思ってお風呂で使って、泡立たない粗悪品だと思ったというエピソードを聞いた事がある。
また、昭和一桁の家族の話だが、アメリカ帰りの同級生が、お弁当にチーズを持ってきたとき、石けんを食ってると言ってからかったと言っていた。
日本の乳製品の歴史は、短いのだ。

日本も乳製品の売り場を見ると、プロセスチーズばかりである。
ナチュラルチーズは、シュレッドチーズとクリームチーズぐらいか。
フランスのように、たくさん、ナチュラルチーズが並ぶようになればいいなあ。

フランスのスーパー。チーズがいっぱい。楽しいな。

2014年3月21日金曜日

チーズを作る:プレジュール(Présure) 加熱圧搾タイプ(PPC)

さて、「とり」として登場するのが、加熱圧搾タイプである。
有名な物では、ボーフォール、コンテ、グリュイエール、パルミジャーノ・レッジャーノ、グラナ・パダーノ、エメンタルなどなど、沢山ある。
では、加熱圧搾タイプの特徴は、何だろう?

  • 切断カイエの大きさが、麦粒大(blé)で、かなり小さい。
  • カイエを加熱する温度が、50℃以上である。
  • 脱水の時期がソフトタイプと違う。
  • 銅製のキューヴを使う。
  • 熟成期間が長い。
  • 大きいチーズが多い。
だろうか。

フランスのチーズ屋さんのPPC。

麦粒大というのは、ホントに小さい。加熱(Chauffage)するので、縮むのだが。

カイエを加熱する温度は、50℃以上だというと、40℃以上じゃないのという意見が出そうだが、これは、50℃の方が、合理的である。
日本では40℃以上のチーズを加熱圧搾タイプとしているようだが、アボンドンスなど、48℃くらいに温度設定をするチーズは、半加熱圧搾(Pâtes Pressées demi-cuite)という分類であり、40〜50℃の加熱となる。

グリュイエール。穴が多いな〜

どう違うかというと、半加熱圧搾タイプは、加熱圧搾タイプに比べて、小さい。
アボンドンスでも、10Kgほど、アッペンゼルは、7Kgくらいか。
加熱圧搾タイプは、パルミジャーノ・レッジャーノで30Kgくらい、コンテやグリュイエールで40Kgくらい、エメンタルだと80〜100Kgもある。
だから、分けたほうが正確だ。

脱水の時期がソフトタイプと違うというのは、こうである。
ソフトタイプは、型入れをしてから、乳清が自然に排出される。
しかし、加熱圧搾、半加熱圧搾になると、キューヴ中で、加熱によって強制的に脱水される。だから、型に入れても、ソフトタイプのように、たくさん乳清は出ない。

2008年のサロン・ド・フロマージュで。カイエの切断。

切断したカイエを撹拌している所。

熟成期間は、脂肪の含有率にもよるが、コンテで最低4か月、ボーフォールで5か月だから、ソフトタイプやPPNCよりずっと長い。
ボーフォールは全乳なので、長い時間熟成させるのは難しいが、脂肪分の低いパルミジャーノ・レッジャーノは、長期熟成向き。

銅製のキューヴを使う理由は、熱の伝導率をよくするためである。
以前、スイスでPPCのチーズをステンレスのキューヴでつくる事にしたら、味が変わってしまい、元の銅製のキューヴに戻したという文献を読んだ事がある。
コンテの工房では、一回作業が終わると、その度にキューヴの中に入って、磨き粉でピカピカになるまで磨く。筆者もやったが、力仕事で大変である。
磨くのをさぼると銅イオンがチーズに混ざって、まずくなるそうだ。

2008年のサロン・ド・フロマージュにて。昔の銅製のキューヴ。

現在の銅製のキューヴ。ボーフォールのコーペラティヴで。

筆者はENILでグラナタイプをつくった事があるが、難しかった。
というのは、パルミジャーノ・レッジャーノのキューヴは特別な形をしているので、コンテのキューヴでは、補えなかったのである。
熱伝導率の妙ですな。

始め、固いチーズはあまり好きではなかったのだが、フランスで食べてから大好きになった。日本だと、状態のいい物が手に入りにくい事もあって、いつも美味しいとは限らない。特に、ボーフォールは、美味しい物とそうでない物の差が大きい。
PPCも作ってみたいが、型から出したてのコンテは、約60Kgもある。
ひとりじゃ、運べないので、無理だろうな。

2014年3月18日火曜日

チーズを作る:原乳を探す

筆者は、フランスで山羊のチーズを作っていたので、牛乳のチーズは学校でしか作った事がない。今回の試作では、市販のホモの低温殺菌牛乳しか利用できなかったが、牛乳と山羊乳の違いが面白かった。しかも、ホモとノンホモの差がこんなに違うとは思わなかったので、次回はノンホモ低温殺菌牛乳を使ってみようと考えている。

ブルゴーニュの山羊牧場。ここは、いろんな山羊がいた。

さて、アトリエをつくる決心をしたのはいいが、牛乳の調達とアトリエの場所が大きな課題である。アトリエの場所は、筆者の自宅近くを探すつもりなので、急がない。しかし、原乳はレベルの高いものが必要になる。
そこで、多摩地区の牛乳、東京牛乳に注目した。

現在、ヨーグルトをこれでつくって食べているが、なかなか品質が良いので、これでチーズが作れないものかと考えた。ホームページを覗くと、生産者一覧があったので、見てみると、八王子の磯沼ミルクファームにブラウンスイスの牛がいるそうではないか!
これは聞いてみるしかないと、連絡を取って、昨日、ノコノコと行ってきた。

京王線の山田駅から坂をテクテク下って、10分ほど。

経営者の磯沼さんによると、牛は100頭ほどいるそう。そのうち、搾乳可能な牛は、現在40頭ほどだそうである。種類は、ホルスタイン(白黒まだら牛ですな)、ジャージー(茶色のイギリス原産で、乳脂肪分が高い)、ブラウンスイス(白っぽい茶色で、名前の通りスイス原産。蛋白質、脂肪ともにチーズ製作向き)の3種類。

ブラウンスイス(だと思う)

牛は、繋がない。
フランスも牛は繋がないし、放牧も多い。
筆者が行った時、牛たちはのんびり休憩中?だった。

これは、ノルマンディーの牧場。繋いでない。

ノルマンディーの牧場の発酵飼料。チーズを作るには、ちょっと困る。

町なかで牧場を営むと、臭いに対する苦情が多い。
養豚場もそうだし、養鶏場もそうだ。
でも、磯沼ミルクファームは、コーヒーのカスで、臭いを抑えている。全く臭わないわけではないが、牧場特有の臭いはほとんどない。

この間の大雪で、牛が1頭、死んでしまったそうだ。
屋根もつぶれてしまった部分があるそうである。
自治体からの補助があるそうだが、動物を飼うという事は、責任重大な仕事だと思った。
一時間半ほどお話をして、色々な事をお聞きしたが、メモを取らなかったので、書き落とした事もありそうだ。東京牛乳のURLを貼っておくので、詳しい事は、こちらを見てほしい。
http://www.tokyo-gyunyu.jp/contents/pro4.html

ここでは、ヨーグルトやモッツァレラもつくっている。
ヨーグルトは、ジャージー乳だが、これは美味しい。
お勧めである。
筆者は、よそでジャージー牛のヨーグルトを食べた事が何度かあるが、あまり好きではなかった。しかし、このヨーグルトはいける。
ヨーグルトの表面にクリームが固まっているが、別々に食べてもいいし、混ぜて食べてもいい。

プレミアムヨーグルト。クリームが浮いている。クリームは甘くて美味しい。

牛の名前が書いてある。これは、「リリイ」という牛のヨーグルトだ。

ここの牛乳なら、いいチーズが出来そうである。

ここの牛乳を買うには、いくつかハードルがありそうだが、ぜひ使いたいものである。
出来れば、ブラウンスイスの牛乳を!

2014年3月14日金曜日

チーズの思ひ出(une mémoire des fromages)

筆者が子供の頃、チーズと云えば、雪印の1/2ポンドのブロックチーズだった。
6Pチーズもあったと思うが、あまり覚えていない。父親がつまみで食べていたのを貰ったのを記憶しているだけだ。

子供の頃から乳製品が好きで、おやつはチーズと牛乳だった。当時の牛乳は、低温殺菌で瓶入りの180ccのもの。蓋も厚紙で、ふたを開ける専用の器具もあった。
チーズは、チーズ用のナイフ、あの、切ると切り口が波形になるもので切っていた記憶がある。雪印のチーズもゴーダタイプ、チェダータイプがあった。筆者は赤いチェダータイプより、白っぽいゴーダタイプが好みだった。

このへんが、筆者のチーズ遍歴?の始まりかもしれない。

チーズショップに勤めていた頃のある日のチーズプラトー。いろいろ食べられて、天国でしたね。
次にインパクトがあったのは、20歳頃だろうか。
貰い物の乳製品詰め合わせに、シュプレムという、白カビチーズが入っていた事だ。
こんなに美味しいものがあるかと思った。しかし、そこらへんでは売っていないので、そのままになってしまった。

決定的になったのは、30歳ごろ。
友人が自作のケーキとなぜかドイツワインのカッツ(猫のラベルの甘口ワイン)を持ってきてくれた事だ。
このワインが気に入って、買いに行き、忘れもしない、自由が丘のピーコックでカンボゾラを見つけたのだ。
何の気なしに、同じドイツ産だから一緒に食べてみようと思った。シュプレムの事も忘れていなかったし。

これが、はまった。

今考えると、結構恐ろしい。
シュプレムも、カッツもカロリーが高くて、太りましたな、あの頃。
そのうち、食事と一緒に甘口ワインを飲むのに飽きて、白の辛口に移行。
シャブリに凝りましたな。
それにあわせて、チーズも色々と買うようになった。
幸か不幸か、当時は自由が丘近辺に住んでいて、紀伊国屋の等々力店、麻布マーケット系のスーパー田園が近所にあって、いろいろ買えた。

そのうち、デパートに行くと、チーズ売り場を覗くようになった。よく買っていたのは、新宿の伊勢丹と横浜のそごう。後に働く事になるなんぞ、つゆとも思わないで。
この頃気に入っていたのは、フルム・ダンベール。なかなか売ってなくて、見つけたら即買い、だった。

買ったチーズの包み紙をノートに貼付けて、買った所と値段、感想を書くようになったのもこの頃。残念な事にこのノートは包み紙についていたチーズのかけらに虫がわいてしまい、泣く泣く捨てた。
でも、いろんなチーズを覚えられてこのノートに感謝している。

そのあと、今はなき、チーズ&ワインアカデミーで勉強を始め、チーズの会社の求人に採用されてチーズと縁が切れなくなった。
チーズのラベルが読みたくてフランス語の勉強を始め、いつかはフランスへ行こうと思っていたけれど、踏ん切りがつかなくて、実行までに時間がかかってしまった。

1年ほどフランスに滞在してチーズ屋さん巡りでもしようと考えていた所、チーズの学校を発見。始めは、日本みたいにチーズの食べ方とかウンチクの学校かと思ったら、さにあらず。製造の学校だった。

研修をしていた、ブルゴーニュのリセの丘から、向かい側の丘を望む。

9月のシャルドネ。

フランスには、ENILという、乳製品の学校が6校ある。
そのうち、講座の都合で、4校に通うことができ、1校は泊まりがけの見学ができたことは、ラッキーだったと思っている。
地方によって、中心になるチーズが全然違うので、いろいろ勉強できたからだ。

二作目のチーズ。ただいま熟成中。

日本に帰ってきて、ようやく自分のチーズを作る活動に身を投じる事が出来そうだ。
まだまだ計画の段階だけれど、うまくいく事を信じている。
最終目標は、ENILのような、乳製品の学校。
生きているうちに、出来るかしらん???

2014年3月11日火曜日

チーズを作る:プレジュール(Présure) 非加熱圧搾タイプ(PPNC)

 日本でよく見かける、ゴーダ、チェダーは、非加熱圧搾タイプに分類される。
非加熱、というのは、原乳のままの温度という意味にとった方がいい。というのは、非加熱圧搾タイプのキューヴ中の温度は、37〜40℃くらい。
これは、動物の体温、すなわち、絞りたての牛乳の温度とほぼ同じだからである。
熟成士さんのところで見た、トム・フェルミエ

この種類のチーズは、世界中にある。
特に、チェダーはイギリス圏で盛んに製造されている。
アメリカでは、チェダーもたくさん生産されているし、オリジナルのコルビー、モントレー・ジャックなども、このPPNCタイプである。

やや柔らかく、口当たりもいい。溶けると糸を引いて、ピッツァなどにも向いている。(シュレッドチーズは、このタイプが多い)
また、ゴーダやチェダーはプロセスチーズの原料にもなっているので、味が似ている。
そんな理由で、日本人好みなのだろう。
筆者がチーズショップにいたときも、ゴーダは人気のチーズの一つだった。
羊のPPNC

オッソ・イラティの模様。

その非加熱圧搾タイプの特徴は何だろう?

まず、

  • 切断したカイエの大きさが、加熱圧搾より大きく、ミックスより小さい。
  • キューヴ内の温度が37〜40℃である。
  • デラクトザージュ(Délactosage:英語ではウォッシングと云っている)を行う。
  • プレプレッサージュ(Prépressage:予備圧搾)を行う。
と云ったところか。

切断カイエの大きさは、加熱圧搾が麦粒大(blé)、ミックスがカマンベールで2,5〜3cm角くらい。ゴーダ辺りだと、トウモロコシ大(maïs)、5〜8mmくらいになる。

デラクトザージュというのは、lactose、すなわちラクトースをカイエから排出させる方法である。乳清を30%ほど抜いて、37℃くらいのお湯を足すと、浸透圧によって、カイエ中のラクトースが乳清中に排出されるのだ。

ラクトースは熟成中に悪さをするので、長期熟成のチーズでは、このような方法で排除する。ちなみに、加熱圧搾タイプは、高温で処理するのでラクトースはほとんどカイエ中に残らない。だから、この工程は必要ない。また、PPNCのトム・ド・サヴォアはこの工程を行わないのが特徴である。

プレプレッサージュは、予備圧搾という意味で、切断してデラクトザージュしたカイエを大きなバット状の入れ物に移し、軽い重しをすることである。
その後に切り分けて、型に入れ、本格的に圧搾するのだ。

日本では、このタイプのチーズを作っているところが多い。
無難な選択なのだろう・・・

種類は、ゴーダ、チェダー、ラクレット、トム・ド・サヴォア、フォンティナ、マンチェゴなど。AOPとしては、オッソ・イラティ、サン・ネクテール、ルブロション、モルビエなどがある。
ラクレット・レティエ。スパイス入り。

ラクレットの表面をモルジュで拭いているところ。

自分のアトリエを持つための行動を少しずつ始めたところ。
ちょっと調べものなどが増えてきているので、先週は1回しかブログを綴れなかった。
なんとか週2を続けようと考えている。

先週末に食べようと思っていた自作のチーズは、たった1日であっという間に熟成が進み、過熟でトロトロになってしまった。食べてみたら、残念ながら、味が悪い。で、廃棄・・・失敗は成功の元、と家族に慰められた。悔しい・・・
第二弾をただいま熟成中。
小さいチーズなので、3週間の熟成でいいようである。

2014年3月4日火曜日

チーズを作る:ミックス(Mixte)

ミックスのチーズの種類は多い。
ソフトタイプで、牛乳なら、ほとんどこのタイプと云っていい。
例えば、日本でよく作っているカマンベールタイプ。これはミックスである。
ソフトタイプで白カビ熟成のもの(Pâtes molles à croûte fleurie)、ウォッシュタイプ(Pâtes molles à croûte lavée)、ブルーチーズ(Pâtes persillées)はミックスがほとんどである。
フランスのチーズ屋さんにて。

例を挙げると、白カビのチーズなら、

  • カマンベール(le camembert)
  • ブリ(le brie)
  • クロミエ(le coulommiers)
が主なものである。ただし、AOPのカマンベール・ド・ノルマンディー(Camembert de Normandie)とブリ・ド・モー(Brie de Meaux)はラクティックに近い。

ウォッシュタイプなら、

  • マンステール(le munster)
  • マロワル(le maroilles)
  • リヴァロ(le livarot)
  • シュヴロタン(le chevrotin)
マンステール ジェロメ・オ・レ・クリュ。マンステール ジェロメというのは、ロレーヌ地方産、単にマンステールという場合は、アルザス産をさす。

マンステール ジェロメを開けたところ。まだ食べていないが、美味しそう。

ブルーなら、

  • ブルードーヴェルニュ(le bleu d'Auvergne)
  • ロックフォール(le roquefort)
  • ブルー・ド・ジェックス(le bleu de Gex)
などがある。
ブルードーヴェルニュ。これは美味しかった。

ラクティックとミックスの違いは、

  • プレジュールを投入するときの原乳のpH(あるいは酸度)、
  • プレジュールの量、
  • カイエの形成時間が長いか短いか、
  • カイエを切断するかしないか。
である。

一般的に、ラクティックはpHを低く設定し、プレジュールの量が少なく、カイエの形成時間が長く(16時間以上が多い)、カイエを切断せずに、ルーシュ(la louche)で型に入れる。

また、ミックスの大きな特徴は、工場製が多いという事である。

ミックスの農家製は少ない。
なぜかと云うと、時間的に無理が出るからである。
ラクティックに農家製が多い理由は、朝絞った原乳にプレジュールを入れて、24時間放っておけばカイエが出来るところにある。
段取りとして、朝原乳を絞る(だいたい6〜7時頃)、前日の乳と合わせる、プレジュールを入れて静置する、その後、前日から作っておいたカイエを型入れする。
これは午前中に終わる仕事量なのだ。
主婦ならその後に家事、男性なら牛や山羊などの世話が出来るというわけである。

ミックスを作るとなると、大変だ。
朝原乳を絞る、マチュラシオン(la maturation)という、乳酸菌発酵の過程が1〜2時間、その後にプレジュールを投入し、カイエになるまで1時間ほど待ち、それから型に入れる。また、反転の頻度がラクティックと違って多い。搾乳時間を早くしなければ、とても終わらないし、待ち時間も多い。
加熱圧搾タイプだともっとかかり、朝の5時から製造を始めて、お昼に終わるかな、と云った時間配分である。

結局、ミックス、非加熱圧搾、圧搾タイプは、チーズを専門に作るほうがよいと云えるのだ。だから、このタイプは工場製が多く、ラクティックは農家製が多いのである。
日本でチーズを作ると、みんなカマンベールとゴーダになってしまう。アトリエで作っているなら、いいのだが、農家でしようとすると大変だ。
いまは、モッツァレラとカチョカヴァロがはやっているかな?
カチョカヴァロはもう下火のようだが。

有名なところで、共働学舎の「さくら」はラクティックである。桜の花が乗っていない「プレジール」と云うのもあるが、これはサン・マルスランのようで、筆者は好きである。農家なら農家の特性を生かしたチーズを作った方がいいような気がする。

ところで筆者の作ったチーズだが、サン・マルスランのように、トロトロになってきた。
一昨日少し食べて、残りをグラタンにかけて焼いてみた。
なかなかいい味だった。(やったね!)
小さいチーズなので、熟成期間がどのくらいだろうと思っていたが、21日でいい加減である。今週末だと、28日になるので、少し柔らかくなりすぎるかもしれない。まだ2個あるので、白ワインと一緒に食べるつもりである。楽しみ、楽しみ。