2014年3月21日金曜日

チーズを作る:プレジュール(Présure) 加熱圧搾タイプ(PPC)

さて、「とり」として登場するのが、加熱圧搾タイプである。
有名な物では、ボーフォール、コンテ、グリュイエール、パルミジャーノ・レッジャーノ、グラナ・パダーノ、エメンタルなどなど、沢山ある。
では、加熱圧搾タイプの特徴は、何だろう?

  • 切断カイエの大きさが、麦粒大(blé)で、かなり小さい。
  • カイエを加熱する温度が、50℃以上である。
  • 脱水の時期がソフトタイプと違う。
  • 銅製のキューヴを使う。
  • 熟成期間が長い。
  • 大きいチーズが多い。
だろうか。

フランスのチーズ屋さんのPPC。

麦粒大というのは、ホントに小さい。加熱(Chauffage)するので、縮むのだが。

カイエを加熱する温度は、50℃以上だというと、40℃以上じゃないのという意見が出そうだが、これは、50℃の方が、合理的である。
日本では40℃以上のチーズを加熱圧搾タイプとしているようだが、アボンドンスなど、48℃くらいに温度設定をするチーズは、半加熱圧搾(Pâtes Pressées demi-cuite)という分類であり、40〜50℃の加熱となる。

グリュイエール。穴が多いな〜

どう違うかというと、半加熱圧搾タイプは、加熱圧搾タイプに比べて、小さい。
アボンドンスでも、10Kgほど、アッペンゼルは、7Kgくらいか。
加熱圧搾タイプは、パルミジャーノ・レッジャーノで30Kgくらい、コンテやグリュイエールで40Kgくらい、エメンタルだと80〜100Kgもある。
だから、分けたほうが正確だ。

脱水の時期がソフトタイプと違うというのは、こうである。
ソフトタイプは、型入れをしてから、乳清が自然に排出される。
しかし、加熱圧搾、半加熱圧搾になると、キューヴ中で、加熱によって強制的に脱水される。だから、型に入れても、ソフトタイプのように、たくさん乳清は出ない。

2008年のサロン・ド・フロマージュで。カイエの切断。

切断したカイエを撹拌している所。

熟成期間は、脂肪の含有率にもよるが、コンテで最低4か月、ボーフォールで5か月だから、ソフトタイプやPPNCよりずっと長い。
ボーフォールは全乳なので、長い時間熟成させるのは難しいが、脂肪分の低いパルミジャーノ・レッジャーノは、長期熟成向き。

銅製のキューヴを使う理由は、熱の伝導率をよくするためである。
以前、スイスでPPCのチーズをステンレスのキューヴでつくる事にしたら、味が変わってしまい、元の銅製のキューヴに戻したという文献を読んだ事がある。
コンテの工房では、一回作業が終わると、その度にキューヴの中に入って、磨き粉でピカピカになるまで磨く。筆者もやったが、力仕事で大変である。
磨くのをさぼると銅イオンがチーズに混ざって、まずくなるそうだ。

2008年のサロン・ド・フロマージュにて。昔の銅製のキューヴ。

現在の銅製のキューヴ。ボーフォールのコーペラティヴで。

筆者はENILでグラナタイプをつくった事があるが、難しかった。
というのは、パルミジャーノ・レッジャーノのキューヴは特別な形をしているので、コンテのキューヴでは、補えなかったのである。
熱伝導率の妙ですな。

始め、固いチーズはあまり好きではなかったのだが、フランスで食べてから大好きになった。日本だと、状態のいい物が手に入りにくい事もあって、いつも美味しいとは限らない。特に、ボーフォールは、美味しい物とそうでない物の差が大きい。
PPCも作ってみたいが、型から出したてのコンテは、約60Kgもある。
ひとりじゃ、運べないので、無理だろうな。

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