原題は、「Ces fromages qu'on assassine」。
直訳すると、タイトルのようになる。
バスクで偶然見た、牛の放牧。牛は勝手に散策?していた。 |
一回目は、伝統的な製法でチーズを作る講座で。
二回目は、工場製のチーズを作る講座で。
講座によって、同級生の反応が、全然違うのが、興味深かった。
どんなフィルムかといえば、副題にもあるのだが、「味の戦い」「伝統製法と工場製の美食の戦い」である。
ナビゲーターは二人。
一人はおそらく、食に関するジャーナリスト。
もう一人は、デンマーク(?)からの留学生。
彼らが、色々なチーズの産地を回る。
例えば、出だしがカマンベールの産地、ノルマンディーで大手の会社、「Lepetit」。
この会社の創業から現在に至るまでを説明する。
始めは、地域で「Lepetit」の一家が経営していたのに、ラクタリスに権利を売ってしまう。ラクタリスは、「Lepetit」の名前を残しながら、現代的な作り方にして行くのである。
ここで、ラクタリスの責任者が出てきて、話をする。
カマンベールの殺菌乳製も、AOCで認めるべきだと。
世の中が変わり、人々の要求も、経済性も変わっているのに、これが変わらないのは、おかしいのではないか、と。
ここで、伝統的なチーズの講座の同級生たちは、ブーイング。
工場製のチーズ講座の同級生は、納得していた。
バスクの農場チーズの熟成庫。シロンもいたぞ。 |
試食させてくれた。ここは、ブラウンスイスとタリーヌ牛を飼っている。なぜかモンベリアルドが一頭。 |
これを書く前に一度見て、いろいろ確認したかったのだが、出来なくて申し訳ない。
いい加減な事を書きたくないのだが、記憶を辿って書いている。
発売はどうも2007年のようだが、放映(テレビ局、フランス3が作っている)されたのは、もっと前のようである。
というのは、フィルム内のイヴェントのポスターが、2004年(2003年だったかも・・・)になっているからである。しかも、先ほどのカマンベールの話は、フィルム中では、まだ未定のような感じだが、INAOは、2007年に、カマンベール・ド・ノルマンディー(le camembert de Normandie)は、無殺菌乳にするべし、と回答し、大手企業の要求を拒否している。
フランスも揺れているのだ。
あれだけ、チーズを作り、消費し、輸出している国なのに、いや、そういう国だからこそ、揺れるのだろうか。
HACCPのおかげで、衛生面は、格段に進歩した。
しかし、HACCPの先生に聞いたのだが、これも善し悪しかな、という話がある。
ある工房の話なのだが、父親は、伝統的な製法をずっと守り、衛生面にはあまり気を使わなかったという。
息子は、学校で勉強し、衛生が大事だと、工房を大掃除して、清潔にしたそうだ。
すると、チーズの味が変わってしまい、ついていたお客さんが離れてしまって、困ったという。
これは、かなり極端な話だと思う。
衛生面に注意するのは、大事だ。
特に、今のように流通が広範囲に及んでいると、昔のやり方では、事故が起きかねない。
しかし、一方で、こんな風に、味の変化が起こる。
要するに、土着の菌を一掃してしまったのだろう。
筆者も今、自分でチーズを作ろうとしているが、この多摩地区のチーズが作りたい。
もちろん、衛生面には、十分注意するが、工場製の衛生面の良さと、伝統的な製法による味の良さを旨く摺り合わせられないかと考えている。
今回は、違うテーマにしようと思っていたのだが、友人の一人がFacebookでピレネーの小さなチーズ工房の写真を載せていたのがきっかけで、このフィルムを思い出し、急遽変更した。
バスクの羊の放牧。 |
オッソ・イラティーの農家にて。 |
大きいオッソ。 |
オッソの刻印。 |
彼女の写真は、すごくよくて気に入った。
なぜその写真でこのフィルムを思い出したかというと、フィルムのラストに近い辺りで、(ひょっとしたら、最後の場面)バスクの羊飼いを取材していたからである。
その若い羊飼いは、羊を飼い、羊のチーズを作っている。
おそらくたった一人で。
会話の細かい事は忘れたが、こんな感じだった。
ナビゲーターが、こう問う。
「君、彼女いるの?」
彼はこう答える。
「いないよ。でも、ここは楽園なんだ。(C'est le paradis !)」
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