2014年3月25日火曜日

チーズを作る:番外編 プロセスチーズ(le fromage fondu)

ポリニーの隣に、ロンス・ル・ソニエ(Lons-le-Saunier)という駅がある。
その駅を通りかかると、誇らしげな、赤い牛の看板が見える。
そう、ベル社(Bel)の「笑う牛」(La Vache qui rit)の牛の顔である。
ベル社の発祥の地は、ここなのだ。

ポリニーの駅。こぢんまりと小さい。

フランスの3大チーズ会社は、ラクタリス、ボングラン、そして、ベル。
ラクタリスとボングランはどちらかというと、ナチュラルチーズがメインだが、ベル社は圧倒的にプロセスチーズに強い。
その一番古い商品が、「笑う牛」なのである。
ENIL時代に、モロッコからきていた生徒たちによると、北アフリカでは、チーズと云えば、「笑う牛」というくらい、ポピュラーだそうだ。
URLを貼っておくので、興味のある方はどうぞ。
http://www.lvq.jp

筆者は、ポリニーの図書館で、ベル社の本を見つけて読んだ事がある。
なかなか興味深かった。今度、同じ本を見つけたら、購入しようと思っている。
それによると、創始者は、普通のフロマジュリー、すなわち、コンテなどの製造業者だったらしい。
チーズはどれもそうなのだが、ロスが出る。
すなわち、商品として販売できない製品が出るのだ。

コンテは現在、CTFC(名前は変わっている可能性がある)が品質の研究をしているので、かなり安定した品質を保っているが、以前は、かなり品質にばらつきがあったと聞く。
その、製品にならないチーズをうまく利用してプロセスチーズを作って成功したのが、ベルである。

フランスは、PPNCやPPCとして味や形に難点のある物、例えばコンテなら、コンテとして販売できないチーズなどをプロセスチーズの原料にする事が多い。
筆者の同級生で、PPNCを作っている会社で研修をしていた女性も、製品として販売できない物はプロセスチーズの原料にまわすと言っていた。

筆者も学校でプロセスチーズを作った事がある。
日本で言う、スライスチーズだった。
原料のチーズ(学校で作っているチーズだった)の皮を取り除き、どういう状態のチーズを作りたいかによって、乳化剤を選び、加熱して溶かして、成形する。
筆者のチームは、スライスチーズだったが、他のチームは、「笑う牛」系のプロセスチーズ、モッツアレラ、アナログチーズ(以前話した、脱脂粉乳から作るチーズ)を作っていた。

プロセスチーズの技術は、戦争によって進んだと云って過言ではない。
発明は、スイスだが、アメリカに渡って軍事食料になったからである。
第二次世界大戦中、日本陸軍は食料現地調達だったが、アメリカさんは食料パックを持っていたそうだ。
中には、乾パン、ベーコン、プロセスチーズ、タバコなどが入っていたそうである。
タバコがアメリカさんらしいですな。

そのパックを日本軍が手に入れた時、チーズを石けんだと思ってお風呂で使って、泡立たない粗悪品だと思ったというエピソードを聞いた事がある。
また、昭和一桁の家族の話だが、アメリカ帰りの同級生が、お弁当にチーズを持ってきたとき、石けんを食ってると言ってからかったと言っていた。
日本の乳製品の歴史は、短いのだ。

日本も乳製品の売り場を見ると、プロセスチーズばかりである。
ナチュラルチーズは、シュレッドチーズとクリームチーズぐらいか。
フランスのように、たくさん、ナチュラルチーズが並ぶようになればいいなあ。

フランスのスーパー。チーズがいっぱい。楽しいな。

2 件のコメント:

  1. スイスではエメンタールやグリュエールの熟成者が自分の良心的な検査(トライヤーの取っ手でチーズをたたき、内部の割れや異常なアイを判断して等級をつける事)をやっていました。3等級がプロセスチーズになります。イタリアでも昔は同じ方法でパルミジアーノやパダーノの規格外品を検査していましたが、今ではX線を使っているところが増えています。
    フランスではいかがでしたか?どのように等級分けしているのでしょう?

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    1. フランスで、コンテはソンド(le sonde:トライヤー)でたたいて音を聞き、中身をくりぬいて中身の色、形状、味を確認します。点数は、20点満点で14点以上がコンテ・エクストラ(緑の帯がチーズに巻いてあります)、12点以上がコンテ(茶色の帯です)と区別されます。12点未満は、コンテとして販売できないので、プロセスチーズの材料になっているようです。この作業は、いまだに専門の職人が熟成庫を回って、検査しています。AOPのPPCは、製造における制約が多く、ほとんどが無殺菌乳を使用する事になるので、デフォー(le défaut:欠陥)として、ミル・トロ(le mil trous)という、エメンタル様の穴がたくさんあいてしまう状態などが起こります。その他に、形がいびつになってしまったり、変色したりした物もコンテにはならないので、プロセスチーズの原料行きです。その他のPPCは現場を見た事がないので、何とも言えませんが、ボーフォールは、やはり中身をくりぬいた後があるので、同じように検査していると思います。

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