2014年4月1日火曜日

チーズを作る:チーズ種(le levain:ルヴァン)

パン種というのは、割と一般的だが、チーズ種というのは、あまり聞かない。
英語では、「スターター」と言っているようである。
始めに入れるから、スターターってのは、直接的で、意味が分からないのが難点である。

フランス語だと、ルヴァン(le levain)、パン種でも同じ言葉を使うが、要するに発酵させる酵母や乳酸菌が入ったヨーグルト状の物をさす事が多い。
ちなみに、工場でよく使うフリーズドライした乳酸菌の事は、ルヴァンとは言わない。

工場では、培養したフリーズドライの乳酸菌を使うのが一般的である。
理由は、いつも同じ味が出来るから。
工場製チーズの一番の目標は、いつも同じ味で、一定の量を提供する事だからだ。
扱いやすさも魅力的である。
冷蔵庫に入れておけば、かなり保つのだ。

しかし、デメリットも多々ある。
こいつは、活性化が遅く(そりゃそうだ。寝てるみたいなもんだから)、pHを調整するのに時間がかかる。
もう一つの難点は、チーズにとって大問題である、バクテリオ・ファージの発生が起こる事である。

バクテリオ・ファージは、乳酸菌に取り付いて、コピーしてしまうウィルスの事で、こいつが取り付くと、乳酸菌が死んでしまい、チーズは出来ない。
同じ乳酸菌を使い続けると、バクテリオ・ファージが発生するので、工場では、一定のサイクルで乳酸菌を替える必要が出てくる。

興味のある方は、wikiのURLをどうぞ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/ファージ

一方、農家やアトリエなどでは、チーズ種として、ルヴァンを使ったり、前日の乳清を使ったりする。もちろん、そのまま使えるルヴァンも買えるし、ルヴァンの母体となる乳酸菌を買って、培養する事もできる。
しかし、自分の所で作ったルヴァンや、前日の乳清は、土着菌の宝庫だから、これらを使えば、その土地のチーズが出来るし、コストも安いので、使う人が多い。

ただし、ルヴァンはめんどくさい。手間がかかるのである。
なかなか酸度が上がらず、作るのに失敗する事もある。
また、乳清を使う場合、バクテリオ・ファージが出る事もある。
バクテリオ・ファージが出ると、大損害なので、農家は知恵を絞っているのだが、なかなか退治できない。
筆者も、前回の試作品失敗は、ファージを疑っている。

さて、筆者は、ルヴァン造りからやり直し。
昨日、また磯沼ミルクファームにおじゃましてきた。
ルヴァン作成のため、牛乳を分けてもらいに行ったのだ。
磯沼さんが自ら絞ってくれて、ブラウンスイスの絞りたてを分けてもらう事が出来た。

ブラウンスイス牛の牛乳を手絞りしてくれた。

全部見えないけど、「磯沼ミルクファーム」と書いてある、かわいいBidon。

現在、作成中だが、ドキドキだ。
フランス時代は、あんまり心配した事はない。
出来なかったのは、1回だけ。
フリーズドライの乳酸菌で代用したら、時間がかかってうんざりしたのを覚えている。
いつもなら、小一時間で適性酸度になるのが、4時間以上かかったのだから。
期限切れではなかったが、古かったのも時間がかかった理由だろう。
作業がすべて止まってしまい、仕事にならなかった。

出来上がるのは、おそらく木曜日か金曜日だ。
うまくできればいいのだが・・・
心配である。

4 件のコメント:

  1. チーズ作りに興味があり書きました。
    ルヴァンを作るときに、
    ホエーを使わずにやるには、無殺菌乳を室温に置き、自然に乳酸発酵でpHが下がってくるのを待つ、ということでしょうか。
    又、もしホエーを使う場合、
    無殺菌乳にホエーを入れて乳酸発酵させる、ということなのでしょうか。

    よろしくお願いします。

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  2. チーズ作りに興味があり書きました。
    ルヴァンを作るときに、無殺菌乳を室温に置き、自然に乳酸発酵が始まるのを待ち、pHが下がるのを待つ、というやり方なのでしょうか。

    又、ホエーを使う場合、無殺菌乳にホエーを入れて乳酸発酵させるというやり方なのでしょうか。
    よろしくお願いします。

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  3. ルヴァン、すなわち乳酸菌のチーズ種を作るには、いろいろなやり方があります。

    一番一般的なのが、前日のセロム(ホエー:乳清)を使うというものです。私もお正月明けに、セロムをルヴァンとして使いましたが、pHは、4,28、酸度にするとおそらく80以上。酸度が80以下だとルヴァンとして使えません。
    ただ、この方法だと、バクテリオ・ファージが出ることがあり、その場合、カイエは全滅、翌日のルヴァンもないという悲惨なことになります。だから、フランスの農家は、状態の良い時のセロムを冷凍保存しておくことが多いですね。
    私のしている方法は、無殺菌乳を37℃に保温して、36〜48時間置くという方法です。これをロングライフ牛乳に種継ぎして、37℃で24時間おいて使います。
    これは、ファージが出ないので、いいのですが、時間がかかることと、手間がかかると言う短所があります。
    ピエ・ド・キューヴという、前日のカイエを使うやり方もあります。

    ルヴァンを作る方法はたくさんありますが、農家では、この3つがよく使われているようです。
    フリーズドライの培養乳酸菌のほうが、扱いは楽ですが、ルヴァンを作り醍醐味は、チーズに個性が出ることです。手間もかかるし、日々違うので大変ですが、とても面白いですよ!

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  4. なるほど。
    本当に面白いですね。

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